2012年12月4日火曜日

連載コラム201 from 台湾


日本は相変わらずのダイエットブームである。

健康のためのダイエットではなく、痩せるためのダイエットが
若い女性だけでなく40代の女性の間でも流行。
今年は酵素を取り入れたダイエットや
デトックスなど断食ダイエットなどが流行った。

欧米の女性たちから見ると日本人のダイエットは
やり過ぎで酷いと感じるという。

なぜ日本人女性は痩せ願望が強いのだろうか。

マスコミが煽るダイエット
日本人女性が痩せたがる大きな理由は、
マスコミがそう煽るから、だろう。

女性誌にはダイエットの文字が躍り、
痩せよう、痩せようと特集を組む。

女性のエステ広告にはガリ痩せの女性たちを登場させ
「痩せたら人生が変わった」などと書く。

健康のためといいながら、160センチの50キロ以上は重いとし、
46キロを「ちょうどいい」目標数値とする。

似たようなエクササイズでページ数を稼ぎ、
エクササイズする時間のない人へとサプリを紹介。
恐らくそのサプリ会社から広告費を得ているのだろうが、
そのステマたるもの酷いものである。

読者の健康のことなど考える者などいない。
売れればいい、金儲けできればいい、それだけなのだ。

あまりにも酷い読者モデルブログ
そして酷いのが読者モデルのブログ。
日本には読者モデルと呼ばれる職業がもてはやされているが
彼女たちは一般人との違いを、
「痩せている」ことで線引きしているのか、ダイエットのことばかり
ブログに書きたがる。

160センチなら40キロくらいで「ちょうどいい」らしく、
45キロだと「デブ」だと反省。
ブログで商品を紹介するとお金をもらえるというシステムなので
サプリや酵素水や、ありとあらゆるダイエット商品を
いかにも「愛用してます」といわんばかりに手当たり次第紹介。

それをまだ十代の若い子たちまでもが購入するというのだから
世も末である。

日本人は若い世代を大切にしない傾向にあるが
若い世代の健康を蝕むようなことをしてまで
金儲けをしたいのかと嫌気が差してくれる。

読者モデルも自分の賞味期限が短いと知っているからか
稼げるときに稼いでやろうと、やりたい放題。
他人に迷惑をかけても知ったことではないと、
無責任な平気なことをしている。

妊婦までもダイエットする日本人
日本人の痩せ願望たるものや相当たるもので、
妊婦までもダイエットする始末。

出産後もまず考えるのはダイエット。
体型と体重を戻すことに必死で、何よりも自分、自分である。

子育てしてもダイエット。40代になってもダイエット。
自分の見たくればかりを気にする。

そんなことばかりしているのだから子供に対する忍耐がなく
子供が騒げば「こんなところに連れ来るな」と批難する。

キリキリと余裕がないのである。

男性にも責任が
日本女性がいくつになってもダイエットばかりこだわっているのは
男性にも責任がある。

日本人男性は女性は痩せてなければ綺麗じゃないと
思い込んでいる人が多いからである。

結婚し、出産して少しでも太ると「女性を感じない」と浮気。
浮気された女性は「だらしなく太ったんだから当然」と批難される。

家庭を築くという責任の重さを良く考えずに
結婚、妊娠させる男が多すぎるのが問題なのではないだろうか。

欧米の女性たちは痩せることばかりに必死な日本人女性を
「心が成長していない」可哀そうな女性だと見ている。

日本人の心が成長する日は果たしてくるのだろうか。
政治もいい加減であるし、本当に心配で仕方ない。



写真は、タイ、バンコクで一番高いバイヨークタワーから見下ろした夜景です。
10年前と比べると発展し綺麗になったバンコクですが、
渋滞は相変わらずだったりと、まだまだ問題を抱えています。


















コラムニスト●プロフィール
…………………………………
岩城 えり(いわき えり)
1971年12月東京生
オーストラリアで学生時代を過ごし
アラブ首長国連邦・シンガポールで就職
結婚し帰国したものの夫の転勤のためすぐに渡米
2005年12月より台湾在住

連載コラム319 from 北海道●選挙


12月16日に行われる衆議院議員総選挙に向けて、ニコニコ生放
送で「ネット党首討論会」が配信された。
来場者数は120万人弱。
有権者の数・一億人以上を思い浮かべると少ないのだろうが、それ
でもこの数は今の政治に対する国民の興味と期待のあらわれでもある。
それにしても、せっかくネットを活用したのだから、テレビ以上の
物にしてほしかった。
たった1時間半の番組では、討論というよりそれぞれの党の主張だ
けであまりにもお粗末。
それでなくとも、今度の総選挙では党が乱立している。
くっついたり離れたり、政党名が発表になったと思ったら、次の日
には連立などとコロコロと入れ替わり、まったく名前もろくに覚え
られない。
入れ替わり右往左往する政治家たちからうかがえるものは、この国
をどうのこうのというより、選挙に向けての自己保身欲の強さ。
有権者の私たちは、そこをよくよく吟味して票を投じるべきだろう。
それにしても、やっぱり面白いのは、ニコニコ生放送の画面に流れ
るコメントである。
思わず笑ってしまうコメントも多く、これを低俗ととらえるのはた
やすいけれど、そんなコメントからもダイレクトに本音が伝わり、
なるほどという気持ちだった。

そう言えば、NHKの「NEWS  WEB24」では、ニュース解
説と視聴者のツイートが画面上に流れるが、これがなかなかおもしろい。
ツイートの疑問をそくざに取り上げるのも斬新そのもの。
与えられるだけの情報番組の時代は、そろそろ終わりなのだろう。
もちろん、これまでと同じような形態のマスメディアがあってもい
いと思うが、誰もが手軽に参加できる媒体を多くの人たちが望んで
いるように感じてならない。

さて、今度の衆議院議員総選挙に思うことはいろいろである。
被災地の復興や経済の向上、原発問題や外交やTPP、はたまた
消費税のことや社会保障問題。
マニフェストそのものより、これまでのことを振り返り、選挙に立
つ政治家そのものを見極めたい。
お国の政治が変化を迎えているのは、他国も一緒。
そして、政治に反映されるものは、その時々の国民のレベルである。

政治を決してあきらめないこと。
私たち国民が選挙で問われるのは、そんなひとりひとりの姿勢なのだ。



コラムニスト●プロフィール
……………………………………
赤松亜美(あかまつあみ)
北海道在住

2012年11月2日金曜日

連載コラム200 from 台湾


個人的な話であるが、先日、親戚が亡くなった。

1年前に大腸がんが見つかり、
すぐに手術を受けたものの、ステージ4の末期だった。

抗癌治療をいくつか受けたが、体力が奪われるばかりで
最後は食事がまったく摂れなくなり
モルヒネを多めに、点滴を少な目に入れてもらい
餓死に近いような形で息を引き取った。

定期健診の大切さ
亡くなった親戚はまだ56歳。
高校生の子供が一人いる、妻子持ちの働き盛りであった。

自営業であったため、長いこと腹部に痛みがあったが
「仕事を休むわけにいかない」
と病院へ行くことをためらい続けたという。

定期健診も「半日コースでも、そんな休みをとれない」とし
休日は「休日らしく過ごしたい」と言い病院には行かなかった。

定期健診は決して安いものではない。
時間もかかるし、時には痛みも伴う。
胃カメラや大腸カメラも、嫌なものである。

だが、毎年、定期的に行っていれば、
病気の早期発見につながる。

ガンは怖い病気であるが早期に発見すれば治療できる。
克服して何事もなかったように何十年も生きる人も少なくない。

面倒であっても、無理やりであっても時間をつくり
定期健診を受けるべきでる。

親戚だが、酷い血便が出るまで病院には行かなかった。
病院に行ったとき、ガンはステージ4まで進行しており、
人工肛門をつけ、辛すぎる抗癌治療を開始。
余命もそれほどないと告げられた。

後悔しまくる彼を見て、何とも言えない思いがした。

死に方の選択
56歳だった親戚は、これっぽっちも死ぬ気がなった。
抗癌治療も積極的に受けてきた。
食欲がなくても体力がなくなるからと
無理にでも食べていた。

しかし抗癌剤のかいなくガンは再発。
肝臓、肺、脳にまで転移してしまった。
若いから進行が速いらしく日に日に病状は悪化。

抗癌剤の副作用で口のなかいっぱいに
デキモノができてしまい、何も食べられなくなり
倒れて入院。

病院も痛み止めを出し、腹水をためないように点滴は少な目に
という方針で、ホスピスのような治療を施すように。
でも本人が生きる気が強く、仕事関係の人を病院に呼び出した。

モルヒネで朦朧としていることが多いものの、
正気に戻ると仕事の話をした。

彼は最後まで死ぬ気ではなかったと思う。
沢山の人たちに囲まれ、本当に眠るように死んだ。

これはこれで故人が望む死に方だったのかもしれない。
しかし看取った我々からすると「こんなに沢山の人たちに
見られて死ぬのは嫌」だと思ってしまうような死に方だった。

迷惑をかけない生き方
最近、孤独死が話題に上がることが多く
テレビや雑誌などで特集が組まれることが多い。

高齢でなくても50歳を過ぎるとどんな病に襲われるか
分からないものである。

一人で住んでいると、倒れてしまっても助けてくれる人がおらず
手遅れになってしまうことがあるだろう。

しかし、それも「寿命なのだ」と受け入れることが大事だと
主張する人たちがいる。

結婚に魅力を感じず、一人で生きている友人たちも
「迷惑をかけずに生きて、迷惑をかけずに死にたい。
孤独死になっても、可哀そうだとは思わずに、
あぁ、寿命を迎えたのだなと思って欲しい」
そう言っている。

「迷惑をかけずに生きて、迷惑をかけずに死ぬ」

これは一人暮らしでなくても言えることではないだろうか。

当然のように身内に介護を求めず、
国に生活保護を求めるのではなく、
自分でぎりぎりのところまで頑張り、
だめならば、死を覚悟する。

尊厳とはそういうものではないのだろうか。

今回亡くなった親戚は、死ぬつもりはなく死んでいった。
故人の妻は「あれだけ生に執着するということは
ある意味不幸だったのかもしれない」と言っている。

でもまだ50代。生に執着するのは仕方のないこと。
生きることも難しいが、思うような死を迎えることも
難しいことなのだとう。



写真は、タイ、バンコクの大通りです。


















コラムニスト●プロフィール
…………………………………
岩城 えり(いわき えり)
1971年12月東京生
オーストラリアで学生時代を過ごし
アラブ首長国連邦・シンガポールで就職
結婚し帰国したものの夫の転勤のためすぐに渡米
2005年12月より台湾在住

連載コラム318 from 北海道●日本と中国


戦争の過去を乗り越えて、日本と中国が国交正常化を結んだのは今
から40年前、1972年のことである。
当時の日本は高度経済成長の波に乗り、私達国民も暮らしが上向き
になりはじめて、日本は希望と活力に満ちあふれていた。
一方、中国はというと、まだ貧しさの中にいた。
12億の人口を抱え、中国は苦境の時代を長きに渡って生き続けて
きたのだ。
日中国交正常化によって、日本と中国は経済的な友好国となり、互
いに実りを分かちあうこととなる。
中国に進出する日系企業は、大型の工場を建てて中国に雇用をもた
らせた。
だが、その多くは、地方から仕事を求めて働きにきた出稼ぎ労働者
の農民工である。
彼ら彼女らは、安い賃金で中国の労働を支え続けた。
もしも、農民工の存在がなければ、中国はここまで発展しなかった
だろう。
特にこの10年の中国の目覚ましい成長は、そうした労働の支えが
あったからこそである。
出稼ぎ労働で身を粉にして、故郷に自分達の家を建てることだけを
夢見た人々の血と汗の結晶が、中国をここまで成長させてきた。
経済成長の過程で、単純労働に勤しんできた人々が人権や労働条件
に目覚めるのは、特別なことではない。
むしろ、そういう流れがあるからこそ世の中は良くなってゆくはず
なのだ。

尖閣諸島の日本国有化から、中国は感情的な激しさを日本にぶつけ
ている。
中国内で何度も頻発した反日デモは、日系企業に多大なる損害をあ
たえ、今や中国から撤退を考える企業も少なくはないくらいだ。
反日を掲げたデモの凄まじさに、恐さや憤りを覚えた日本人は多
かっただろう。
尖閣の国有化で、なぜあれほど感情をむき出しにするのか、私達日
本人には理解しがたいものがあったからだ。
中国との経済的友好には、ほとほと難しいものがあると思い知らさ
れたと言ってもいい。
それと同時に、私達日本人は、一体どれほど中国という国を理解し
ているのだろうかと感じてしまったものだ。

今や13億もの人口を抱える大国中国だが、彼らの変化もインター
ネットが大きな役割を果たしている。
それまでの不満や鬱積を一気に吐き出すかのように、テロにも匹敵
する暴徒は、建物を破壊し、店の商品を次々に奪い去った。
中国はもはや一枚岩ではない。
共産党の一党独裁政治の下で、ここまで成長してきた中国だった
が、その体制は自由化の流れの中で、バランスを失い今にも崩壊し
つつあるからだ。
中国国内の格差も、不満のひとつと言える問題だ。
かつて12億の中国を支え、実りをもたらし、犠牲となった農民工
の人々。
その人々の子供世代が、自分の親と同じような過酷な環境で労働に
あえぎ、機械の部品のような扱いに将来の展望も見いだせずに怒り
が爆発してしまったのが、あのような激しいデモとなった。
日系企業は、その前々から年々雇用者の賃金が上がり続けていたた
めに、こちらにも苦しい事情はあった。
急激な国の発展と経済成長が、豊かさの陰で確かなひずみを起こし
たのだ。
農民工に生まれたがゆえの苦悩もある。
中国は、日本とは違う。
民主主義の道理が通らない国である。
農民工の家に生まれたなら、その子供は農民工として生きるしかない。
同じ国に生まれながら、一方では自分達とはかけ離れた贅沢な暮ら
しをする富裕層がいるのに、彼らはそこを目指すことも恩恵にもあ
ずかれない。

だからこそ、尖閣諸島の領海に中国船が未だに侵入しようが、その
こととデモとは分けて受け止めなければならない。
中国当局が裏で糸を引くような細工と、中国国民の気持ちは別なと
ころにあるからだ。
尖閣の国有化宣言後、中国からの観光客が大幅に激減してしまった
日本だが、それも当局による嫌がらせもあるはずだ。
それでも、日本と中国がこれほどの緊張状態にありながら、わずか
ながらでも日本を訪れる中国人は存在するし、日本に好意的な中国
人は多くいる。
私達日本人は、そうした彼らを今は大切にするべき。
時間は掛かるかもしれないが、そうした小さな積み重ねが、いつか
は全体の緊張もほぐすことに繋がってくれるかもしれないからだ。

それにしても、中国との摩擦は決して日本だけではない。
アジアの隣国やロシア、オーストラリアやアメリカ。
そして、アフリカのような国でもトラブルは頻発している。
今や世界の経済大国2位の中国を他国は歓迎しながらも、中国との
つき合いの難しさに頭を悩ませているのが今日の世界の現状である。
ましてや、軍事力も強化してきた中国だ。
経済成長を盾に、そうとう鼻息は荒い。
それゆえに、中国との問題解決は時間が必要なのだ。
それでも、中国国内で起きたデモは、確かな形であの国に影響を与
えたはず。
私達日本人は、それを冷静に受け止めて、粛々と主張することは主
張してゆくだけである。

「単騎、千里を走る」という映画がある。
これは、2005年に高倉健が主演し、中国の農村部を舞台にした
映画である。
中国人の素人を多く出演させたこの映画は、中国のどこまでも広が
る広大な農村部を背景に、人間の素朴さと温かさが涙を誘う作品である。
なんのことはない作品なのに、なぜか涙が止まらなくなってしまう。
私に限らず、この映画を観た人達の感想をうかがうと、実にそんな
意見が多かった。
私は、この映画にこそ、中国の田舎の本当の姿があるように感じて
しまう。
素朴さと人間の温かさが込められた映画である。
きっとこの映画を観ると、中国という国を優しく受け止められるだろう。

日本は中国とも台湾とも、もちろんそれ以外の国とも、これからも
上手につき合っていかなければならない。
難しい国なら難しいなりに時間を掛けて、外交に関してはことさら
下手くそな日本だが、それでも今からでも遅くはないはず。
そんなふうに明るい未来を描きたいものである。


コラムニスト●プロフィール
……………………………………
赤松亜美(あかまつあみ)
北海道在住

2012年10月2日火曜日

連載コラム317 from 北海道●かぞくのくに


「かぞくのくに」という映画を観た。
この映画は、北朝鮮と日本、帰国事業とヤン・ヨンヒ監督の実体験
にもとづいた映画である。
在日の人々が抱える問題は、日本でも一般的にそれほど知られていない。
帰国事業とは、その名の通り北へ帰ることを意味するが、1959
年の8月13日に、日本と北朝鮮の両赤十字代表がインドのカル
カッタで、在日コリアンの北朝鮮帰国に関する協定に調印したこと
から、この年の12月から北朝鮮への帰国事業が始まる。
北朝鮮帰還第1船は新潟港を出港し、その時に北へ渡った人々は9
75人にものぼるが、1967年までには8万8600人が渡り、
その後この帰国事業は何度かの中断と再開を繰り返しながら198
4年まで続いた。
おおよそ9万人以上の人々が北へ渡ったと言われている。
その当時、日本に住む在日コリアンは、戦前戦中に朝鮮半島から動
員として掻き集められた人々がほとんどだったが、1945年に日
本が終戦を迎えた後に、在日の人々は自分たちの人権問題獲得のた
めに、「北」か「南」をそれぞれに支持し、祖国を選んだという。
当時の日本には、思想の違う「北」と「南」の団体があった。
それが、南北政府の樹立と、その後の両政府の対立と戦争によっ
て、朝鮮半島は分断される。
北朝鮮と韓国という別々な国に、はっきりと分かれてしまうのである。
今もなお、社会主義国として歩み続ける北朝鮮はベールにおおわれ
た部分が多いが、帰国事業が始まる以前から日本でも一部メディア
などを通し、北朝鮮を「地上の楽園」などとあおった。
北朝鮮では大学も無償で行けるし、すべてが自由。
きっと誰もが、そのことを信じてしまったのだろう。
ヤン・ヨンヒ監督のご両親は、韓国の済州島出身だが、「北」を祖
国に選んでいる。
そして、父親は「北」を支持する団体の中心的な活動をしながら、
祖国への忠誠を誓い、自分の子供たちを三人も北朝鮮へ送った。
それが、監督の兄たちである。
帰国事業で北朝鮮へ渡った人々の中には、監督の家族のように、実
際は韓国の出身でありながら、北朝鮮を祖国として選んだ人々も多
かったが、その中には日本人もいたという。
映画「かぞくのくに」は、北朝鮮へ渡った兄ソンホが、25年ぶり
に帰国するところから始まる。
ソンホは、病気の治療のために、3ヶ月だけ許された帰国だった。
25年ぶりに団らんを囲む家族。
その微妙な空気感がさりげなく描かれていく。
日本で暮らしてきた家族。
北で生きてきたソンホ。
25年ぶりの再会なのに、越えることの出来ない溝が横たわる。
家族は、どれほどまでにこの日を待ち望んだことだろうか。
ようやく実現した再会。
食卓を囲み、互いに触れられる距離にいるはずなのに、ソンホの表
情は硬い。
帰国したソンホは、北朝鮮から同行した責任者のヤンを連れていた。
滞在期間中、事故や事件が起きないようにという理由で、見張りが
つけられていたのだ。
友人たちやかつての恋人との再会。
父親、母親、妹のリエ、そして叔父。
ソンホの病気の行方。
そして、突然の帰国命令。
静かな画面を通して語りかけてくるものは、当たり前な生き方も、
幸福も許されない国の不条理さに翻弄される一家族の姿だった。
家族の誰かが北で生きるということは、そういうこと。
人質も同然なのだ。
日本で暮らし、奔放に生きる妹リエもまた、北朝鮮国籍であるため
韓国への入国は許されない。
この映画は、けっして幸せな映画ではない。
観る人の心に、確かな痛みを植え付け、その棘がいつまでも心に
残ってしまう映画だ。
悲しくて切ないままに、「かぞくのくに」を見終わった後も、ずっ
と忘れられないまま続いてしまう。
だが、真実の物語である。

映画「かぞくのくに」を通して、私は高校生の時分に韓国側から見
た国境38度線を思い出した。
私が自分の目で見た北朝鮮は、その一度っきりである。
だが、あの時に見た国境の向こうに広がる貧しくて淋しい風景は、
今も私の胸に焼きついたままだ。
そして、時々は何かのメディアを通して知ることのできる北朝鮮の
現状から、平壌はともかく、あの国で生きる農村部の暮らしぶり
に、私は激しい憤りを覚えることもあった。
国を変えることは、外の力より中から自分たちの力で変えていくこ
とが望ましいと言うのは簡単だが、あの国で生きる人々は、その力
すら削がれている。
国を変える以前に、常に飢餓との闘いがあるからだ。
日本人にとって、北朝鮮とは未だに解決できない拉致被害者の問題
もある。
だが、日本に暮らす在日の人々の中にも、北朝鮮に心を縛られ、逃
れられない監視下にある、そんな家族もいるのだ。
普通に生きること。
普通に暮らせること。
当たり前の自由。
それをこの人たちが取り戻せたら、どれほど幸福だろうか。
ヤン・ヨンヒ監督は、映画「かぞくのくに」の前にも「ディア・
ピョンヤン」「愛しきソナ」などのドキュメンタリー映画を世に送
り出しているが、映画発表後、監督は北朝鮮への入国が禁止され、
謝罪文の要求や自身の映画作りをやめるよう言われたという。
映画を作ることで、家族に危険が及ばないか心配がある反面、映画
という仕事に、強い覚悟と責任を感じているように、監督のインタ
ビュー記事からその心情がうかがえた。
映画「かぞくのくに」は、第62回ベルリン国際映画祭でアートシ
アター連盟賞を受賞した。
また、第85回米国アカデミー賞・外国語映画賞日本代表作品でもある。
主演は、兄のソンホ役に井浦新、妹のリエ役に安藤サクラ。
また、この映画の原作本「兄 かぞくのくに」も小学館から発売し
ている。
「かぞくのくに」に込めた監督の叫びが、世界中の多くの人々の心
に届きますように。
私も映画の力を信じたい。


コラムニスト●プロフィール
……………………………………
赤松亜美(あかまつあみ)
北海道在住

連載コラム199 from 台湾


2012年9月、日本と中国の関係は大きく悪化した。

日本と米国が「日本の領土である」と認識している、
尖閣諸島を日本政府が購入したことを発表したため、
「自分の領土だ」と主張している中国が大激怒。

尖閣、反日という言葉は多くの中国人の怒りのスイッチを
入れるため、中国国内で大規模なデモが巻き起こった。

デモはかなりの規模に膨れ上がり
愛国無罪の名のもと、日系企業をめちゃくちゃに壊したり
放火したり、略奪したりとやりたい放題。

デモではなくテロだと言った日系企業関係者がいたが、
まさしくその通りであった。

反日デモの恐怖
今回の反日デモの報道をニュースで見て感じたことは、
参加者は圧倒的に若者が多いということだった。

若い世代が率先して「日本を倒せ」と叫ぶ姿は異様であり
これから戦争に突入してもおかしくない程の
暴れっぷりを見せていた。

彼らは激しく暴れまくり、制止しようとする警官にも
殴りかかったり、蹴りを入れたりとやりたい放題。

ペットボトルを思いっきり投げたり、
周りのデモ隊が巻き添えを食らってもよいという感じで
暴れまくっていた。

現地の日本人も叩かれた、蹴られたなどの被害があり
上海に住んでいる友人は、

「住んでいるマンションは外国人地区にあるし、
食べ物も出前などデリバリーが沢山あるので大丈夫。

あまり外に出ないから、とても静かに過ごしているけれど、
情報があまりないし、子供が怪我や病気などになったときに
病院でスムーズに診てもらえるかが心配」

と言っていた。

誰もが大使館を頼りにはしていないと語っており、
在留邦人にとって、やはり大使館は頼りにならないのかと
心底がっかりしてしまった。

変化するデモ
日系デパートを略奪したり日経企業に火をつけたりして
大喜びしていた中国人デモ隊。

しかし、次第に毛沢東の写真を掲げる若者の姿が
目につくようになった。

怒りの矛先は、どうやら日本だけではないようだと
世界中の人々が感じ出したころ、
中国政府は本気を出してデモを取り仕切るようになった。

今回のデモを取り仕切っていたのは政府であるが、
デモ隊は反日教育を叩きこんだ90年代生まれの世代が中心だった。

この世代の子供たちは一人っ子政策のため兄弟がおらず
ワガママに育てられており我慢ができない。

そんな彼らだから、大学卒業後ちゃんとしたところに就職できず
常日頃から様々なことに不満を抱いている。

多大なるストレスをため込んでいる彼らは爆発できるきっかけを
今か今かと待ち構えているのだ。

今回の尖閣諸島から起こった反日デモは単なるきっかけであり、
彼らは次第に矛先を本命である政府へと向けたのである。

その絶妙なタイミングで政府は「ここまでは愛国無罪で目をつぶるが、
ここからはそうはさせない」と睨みを利かしだしたのだ。

あっさりとデモがトーンダウンしていくのに驚いた人も多いと思うが
政府相手のデモを報道するわけにはいかないので
継続していたとしても私たちが目にすることはできないだろう。

また、中国人は天安門事件を忘れてはいない。
政府がどれだけ恐ろしいかも知っている。
だから線引きをするのである。

何よりも大事なメンツ
中国人は何よりもメンツを大切にする。
そしてコネも大事にしている。

尖閣諸島であるが、最初に東京都が購入したのなら、
デモは起こっても、中国政府はここまで頑なに反発
しなかっただろう。

東京都知事は中国が嫌いなことは有名であるし、
そういうこともありえると思っているからだ。

何のクッションもなく、日本政府がいきなり購入すれば
世界が見ている中でメンツをつぶされたと激怒するもの。

購入することは事前に中国に伝えていたというが、
メンツをつぶされると思ったことだろう。

そしておそらく今も日本政府には中国政府とのコネが
ない。だからメンツはつぶれっぱなしなのだ。

「まーまー」と間に入って行ってくれる人がないことは、
かなり致命的なことだといえよう。

メンツをつぶされたと激怒する中国を今後、どうなだめるのか。
やはり日本はアメリカ頼りになってしまうのか。

今の政権は本当に嫌なことばかりしてくれるが、
これが最も頭の痛い問題だと言えよう。

写真は、台南の人気夜市にある料理店です。美味しい食材がずらりと並んでいます。


















コラムニスト●プロフィール
…………………………………
岩城 えり(いわき えり)
1971年12月東京生
オーストラリアで学生時代を過ごし
アラブ首長国連邦・シンガポールで就職
結婚し帰国したものの夫の転勤のためすぐに渡米
2005年12月より台湾在住

2012年9月2日日曜日

連載コラム198 from 台湾


韓国の李明博大統領が竹島に上陸し、
天皇陛下訪韓に絡み謝罪を要求すると発言した。

その後、間もなくして香港の活動家が尖閣諸島に上陸。
巡視船に石のようなものを投げつけ、
強引に上陸した挙句、中国と台湾の旗を掲げ捕獲された。

これまで「遺憾」と言うばかりの日本政府も
さすがにまずいと思うようになったらしく、
韓国の李明博大統領には親書を送った。

が、なんと、韓国は新書の受け取りを拒否し
日本に送り返したのだ。

これには日本だけでなく世界もびっくり。
日本という国はここまで韓国に舐められているのかと
思われるようになってしまった。

竹島は日本のものだが・・・・・
アジアの情勢にも詳しい欧米の友人たちに聞くと
「竹島は日本の領土だ」という認識を持つ者がほんとだ。

だがみんな、「日本のものだが韓国のものになっている」
と思っており、「日本が取り戻せることはないのでは」と言う。

「韓国人が竹島に住み始めたとき、日本はすぐにアクションを
取るべきだった。何もせず、遺憾、遺憾ばかり言うから、
痛くもかゆくもない韓国は、竹島を韓国のもののように
色々な物をたててしまった」

「そうした上で、李明博大統領が上陸。
日本はこれまで通り阻止することはしなかった。
もうどこから見ても韓国のもの。日本の領土だけど韓国のもの
になってる」

そう言った友人もいる。

日本のものだけど、韓国のものになってしまった。
日本もそれで構わないと思っている。
そういう考え方をする人が多いようだ。

冷静、冷静
今回、日本政府は一貫して「冷静な対応を」と言い続けている。
これまでとは異なり、韓国に対して主張はしているものの
相変わらず韓国政府には「何しても日本は本気では出ない」と
舐められているようだ。

しかし、何といっても腹立たしいのが日本のマスコミ。

日本も韓国も冷静になれと書くメディアはとても多いが、
国によっては最大の侮辱と感じ対戦も辞さないような
そんなことをしたのは韓国の方である。

冷静すぎる結果、日本はこのような事態を招いたのだ。

これ以上、冷静になってどうすればよいというのだ。

また、ここまで来ても韓流をもちあげ続けるメディアもいるが
そうまでして媚を売るのか、それとも金をもらって宣伝しているのか
と勘繰らずにはいられない。

日韓友好を訴え続けるマスコミのはいい加減
うんざりしてしまう。

日本国のメンツ
そもそも李明博大統領がなぜこのような
世界的に見てもびっくりな態度を撮り続けるのかというと
それは選挙対策だと言われている。

支持率が下がり続けているため
日本をめちゃくちゃに批判し無礼な態度をとることで
愛国心を煽り、反日を合言葉に支持を得ようとしているのだ。

本人もマズいことをしていると思っているはずだ。
だが、日本を怒らせるより、国内の支持を得る方が得だと
そう考えたのだ。

日本の怒りなど、蚊に刺されたくらいとしか
思っていないのだろう。

つまり、日本のメンツなど潰したところで
日本が本気で怒ることなどないと、
そう確信を得ているということだ。

仕方ない。そう思われるような温い対応を
日本はしてきたのである。

中国の出方に注目
一方、中国でも今まで以上に反日活動が
活発化していると伝えられている。

だが、さすが中国。

政府が韓国に対して厳しい対応をとろうとしている
そんな日本に対して、無礼な態度をとるのは
世界的に見ても「マナー違反」と取られるとおもったのか、
韓国よりは紳士的な態度をとっている。

先日北京で起きた、丹羽宇一郎駐中国大使襲撃事件も、
すぐに謝罪表明を出した。

日本の野田首相は胡錦濤国家主席宛ての親書を送ることを
決めた。

この親書を中国がどのように扱うのか。
韓国がいつまでこのような無礼な態度を取り続けるのか

見ものである。




写真は、台中の科学博物館にディスプレイされている恐竜です。ディスプレイの仕方が台湾風だと感じました。



















コラムニスト●プロフィール
…………………………………
岩城 えり(いわき えり)
1971年12月東京生
オーストラリアで学生時代を過ごし
アラブ首長国連邦・シンガポールで就職
結婚し帰国したものの夫の転勤のためすぐに渡米
2005年12月より台湾在住

連載コラム316 from 北海道●竹島領土問題


ほぼ1年ぐらい前から、私の周りではK-POPや韓流ファンが多
くなった。
それもにわかファンなどではなく、明らかな熱烈なファン達だ。
CD、DVDの購入は当たり前で、コンサートも国内だけでは飽き
足らず、韓国まで出掛けていく。
ブログやツイッターが当たり前になった昨今、睡眠時間を削ってま
でアイドルの日記にはまる友人の話や動向から想像するに、きっと
全国的に統計なんかを取れば、もの凄い数のファン層になってしま
うのだろう。
北海道では、コリアンタウンで名高い新大久保も決して近場ではない。
でも、コリアンタウンに如何にもありそうな店ぐらいなら多少は地
方にもあるものだ。
韓流ブームに便乗して、韓国料理や酒も知名度が上がった。
当然の如く、韓国料理好きな人達が増えたし、マッコリ好きも多く
なった。
昨年の暮れには、こんな世相に便乗して、NHKの紅白歌合戦で
も韓国アイドルが、それまでになく多く出場した。
国策として、お国の芸能人に外貨をどんどん稼がせる韓国政府の思
惑が裏にあったとしても、こういう世の中の流れに、個人的には何
も出来ない。
基本的に、文化の交流は良いことだし、ないよりあった方がいいに
決まっているが、なにか韓国の良いイメージばかりが先行している
ような感じがしてならなかった。
8月に、韓国のイ・ミョンバク大統領が竹島を訪問したことがきっ
かけで、ロンドンオリンピックの最中、竹島の領土問題が一気に浮
上した。
オリンピックの競技会場では、韓国代表のサッカー選手が、ハング
ル語で書かれたパネルを掲げ、独島パフォーマンスをした。
オリンピックでは、競技会場などでの政治的宣伝活動は御法度である。
よって、この選手については、メダル剥奪の声も上がった。
また、イ・ミョンバク大統領の行動によって、韓国の人気俳優が、
竹島に泳いで渡るような出来事もあったし、何より最低だったの
は、大統領の天皇陛下に対する発言。
これは、いくらなんでも、常軌を逸する行動だ。
日本の韓流ファン達は、これらの出来事に少なからず不安を覚えた
だろう。
日韓の文化交流も、もしかするとこれまでのようには行かなくなる
のでは、と想像した人も多かったのではないだろうか?
政治的な争いは、政治の世界だけでやってほしい。
文化交流には、関係のないこと。
たぶん、大多数の日本のファンは、そう思っているだろうし、願う
かもしれない。
だが、文化交流と政治が関係がないと考えるのは、日本人だけで、
韓国人は違うのだ。
きついことを言ってしまえば、韓国に親日なんてものは存在しない。
歴史を遡れば、それが歴然とする。
悲しいことだが、韓国民は、日本に占領され受けた屈辱を決して忘
れることなく、教育の中で徹底してきたからだ。
だから、従軍慰安婦問題も、韓国人が公言するそれとは本当は違う。
従軍慰安婦問題は、1965年に日本と韓国の間で、財産及び請求
権に関する問題の解決並びに経済協力に関する協定によって補償も
既に終わっている。
韓国政府も、それについては明らかにしている話だ。
だが、その補償金が、実際に慰安婦だった人々の手に渡ったかどう
かについては解らない。
そして、この解らないことは、韓国国内の問題と捉えるべきなのだ。
これまでも、韓国政府が、反日を掲げて国民向けのパフォーマンス
をする時は、大概政府が何か問題を抱えて苦しい事情がある時で、
国民の不満をかわすためのガス抜きのアピールだった。
しかし、そうだとしても、韓国の人々の心に、日本への恨みが脈々
と受け継がれてきたことも、また事実である。
日本への憧れ、親しみ、そう言った感情も韓国の人々は抱きながら
も、憎しみも捨て去ってはいない。
竹島領土の問題は、そうした韓国人の心情、感情をよく表している
と言ってもいい。
実効支配が、正しいか正しくないかなど彼らには関係ない。
すり込まれた教育が、間違いかどうかなんて彼らにとって振り返る
必要もないことなのだ。
自国を占領され、虐げられた先人達の屈辱が、今も尚、怨念として
ある、それだけのことである。
問題なのは、いくら領土に関する歴史認識が日本の方が正しくて
も、韓国の竹島軍事占領を日本が60年も野放しにしてきた事実である。
島根県の漁師達が領海内での漁業でトラブっても、日本はこれを
ずっと放置してきた。
その間、日本の穏やかな友好的な外交は、韓国政府、韓国の人々の
目にどのように映っていたのだろうか。
日本が竹島を手放せない理由は、竹島そのものより領海にある。
漁業権の問題ばかりでなく、領海内に眠るエネルギー問題にも深く
関わってくるからだ。
しかし、この自然エネルギーについても、政府は公に発表したがらない。
やっと最近になって、竹島問題を国際司法裁判所(ICJ)に提
訴する動きに日本政府が本腰を入れ始めたが、韓国の実行支配が6
0年も続いてきた島を今更日本が取り戻せるのは、たぶん相当難し
いだろう。
例えば、北方領土の問題も同じくだ。
ロシア政府と日本との間で、何度となく和解、返還のチャンスが
あったにも関わらず、北方領土は、67年間もロシアが実効支配し
てきたし、近年では目まぐるしく島を開発し発展させてきたことに
より今ではロシア人が多くが住むようになって、この島の日本返還
はひどく難しい。
そもそも北方領土の実効支配が行われた理由に、日露戦争後、日本
が、サハリン(樺太)の半分をロシアから取り上げ所有してしまっ
たことに原因があるのではないだろうか。
第二次世界大戦後に侵攻してきたロシアにサハリン並びに北方領土
を支配されてしまったのは、その昔に戦争で自国の領土を奪われた
恨みによる侵略と私なんかは想像してしまう。
目には目を、歯には歯を、そういうことである。
竹島も北方領土も、実効支配の全ては、そういう理由によるもの。
そんなふうに想像すると、これは単なる領土問題ではなくなってく
るし、彼らの恨みの連鎖を日本に断ち切るすべはないのかと苦しく
なってしまう。
だったら、竹島も北方領土も彼らにくれてやればいい。
非国民と罵られるかもしれないが、そのかわりに、領海だけは日本
の物として、きっちり決着をつければいい。
北方領土は領海すら無理な話かもしれないが、竹島に関しては、領
海だけは譲らないよう解決できればベストではないだろうか。


コラムニスト●プロフィール
……………………………………
赤松亜美(あかまつあみ)
北海道在住

2012年8月1日水曜日

連載コラム315 from 北海道●脱法ハーブ・薬物の闇に思うこと


脱法ハーブの吸引事故のニュースが後をたたない。
いずれも「好奇心で吸った」とのことだが、店舗で扱う以外に、自
販機まで登場して堂々と売り買いされているのだから、汚染は広が
るばかりだ。
自販機があろうとなかろうと、薬物とは無縁に生きる人は大勢いる。
けれども、公共の場で合法を盾に、こうも堂々とされては、腹立た
しさ募るばかりだ。
吸引者の事故が相次ぐなか、条例で規制をかける自治体も、どこか
及び腰だ。
なぜ、脱法ハーブに、薬事法なのだろう?
薬事法で取り締まる限り、いたちごっこから抜け出せないのに、何
かそこに、積極的に取り締まりたくない理由が、隠されているよう
に感じてならない。
そもそも、あれはハーブではないし、ハーブの名なんか語ってほし
くない。
暴力団排除条例が全国に広まってから、もうすぐ一年。
脱法ハーブを未だに野放しにしているのは、私達一般にはわからな
いガス抜きがあるからと感じてしまうのは、私だけなのか。
暴力団排除条例を引くかわりに、彼らにもガス抜きさせる。
脱法ハーブという合法で、何らか捌け口を与えていると考えるの
は、想像が過ぎるだろうか。
ちまたには、ゲートウェイドラッグなどと格好いい言葉があるが、
要するに、入門薬物のこと。
さまざまな薬物依存に走るきっかけになる薬物を示す。
薬物への危険については、最低限、社会で生きぬく智恵として、教
育の場で子供たちに教え込んでほしいものだが、そういう教育が実
際問題どの程度あるのかも、わかったものではない。
夜回り先生が全国各地で、薬物の危険を訴える活動の一貫として、
我が町でも、講演されたことはあったが、それも随分前のことである。
薬物は危険。
ほんの少しの好奇心が、取り返しのつかない結果を招く。
依存を断ち切るのに、努力とか心の強さなんて関係ない。
一度使用すれば、脳がその味を覚えてしまうからだ。
それが、一度から二度になり、三度になり、依存へと繋がる。
NPO法人「ダルク」のような薬物依存者更正リハビリ施設も方々にあ
るが、一度でも薬物依存におちいれば、一生依存からは逃れられない。
更正施設を卒業したとしても、社会に出れば、その手の誘惑は後を
絶たないし、死ぬまで薬物の誘惑はつきまとうのだ。
たった一度の好奇心が、人生を変える。
そのことを想像してほしい。
そうした闇に落ちない方法は、一つしかない。
薬物には決して近づかないこと。
たとえどんな理由があろうとも。
けっして試さないと自分に決めるしかない。
興味を心から排除するしかないのだ。
それでも、世の中に薬物が存在する限り、依存者はいなくならない。
様々な理由によって、薬物を手にする人がいるからだ。
人間不信や、果てしない自己嫌悪、逃れたい喪失感。
自分自身のどこかに疑いをもったり、未来に激しい不安を抱えた
時、心の隙間が薬物が忍び寄ることもある。
脱法ハーブなど、私には到底認められないが、心の隙間なんてもの
は、薬物では絶対に埋まらないものだ。
使用すれば、あるのは破滅だけである。
ただいま某全国紙に、小説「海と月の迷路」を連載中の大沢在昌さ
んは、「新宿鮫」シリーズであまりにも有名だが、大沢さんの著書
に「心では重すぎる」という小説がある。
もう14年も前に書かれた小説だが、薬物依存者の実態や更正施設
も絡めたこの推理小説は、痛みを感じるほどリアルな小説だ。
一生、薬物のリスクを背負うかどうかは、個々の自由。
社会から、この手の物は、撲滅ができない。
だったら、自分の意志で、それらには近づかないことである。
好奇心などと、子供じみた理由をならべる前に、薬物の恐さやリス
クと向き合い、知るべきと思う。


コラムニスト●プロフィール
……………………………………
赤松亜美(あかまつあみ)
北海道在住

連載コラム197 from 台湾


7月20日、アメリカのコロラド州デンバーで
『バットマン』シリーズ最新作『ダークナイト ライジング』
を上映していた映画館で、銃乱射事件が発生。

12人が死亡し、58人が負傷するという大参事となった。

ジェームズ・ホームズ容疑者はアメリカの銃事件として
珍しく、生きたまま、警察から銃で撃たれることなく逮捕。

逮捕時、髪をオレンジ色に染め、
映画に登場する悪役を名乗るなど、
精神的におかしいところが多い容疑者だが、
警察は顔写真を公開し、メディアも公開。

その後、両親の顔もニュースで流し、コメントも発表している。

顔写真公開は当たり前
アメリカでは、冒頭の事件などの重罪事件容疑者の
顔写真をすぐに公開する。

年齢関係なく公開されることがほとんどで
小学生くらいの子供であっても容赦しない。

容疑者であるとはいえ、罪は罪であるというスタンスを
持っているからだろう。

また、犯人の親などの写真も報道されることが多いが
これも当然として受け止められている。

人権、人権と叫ぶアメリカだが、被害者の人権を
最優先させた結果だといえよう。

O・J・シンプソン事件のように限りなく有罪であっても
無罪になることが多いアメリカでは、
無罪を勝ち取った容疑者のその後も
タブロイドが追い掛け回すことが多い。

日本で同様のことが起こったら大問題に
発展しそうだであるが。

大津のいじめ事件
昨年10月に、滋賀県大津市の中学校に通う
中学2年生が、同級生からのいじめを苦に、
自宅マンションから飛び降り自殺した。

またもやいじめられた若者が自殺という道を選ぶという
悲惨な事件が発生したのだが、
このいじめは犯罪ともいえるような過激なもので、
担任教師もいじめを目撃しながらも、
怖かったのか、面倒だと感じたのか黙認。

親には心配させたくないという心を持つ生徒
であったからこそ、学校にも強く相談できず、
最終的にいじめから逃れるために死を選んだ。

いじめは複数の生徒に目撃されており、
いじめた者が誰なのかも明確であるのだが、
大事にしたくない学校は、いじめなどないと放置。

ネットでいじめた者が誰なのか特定されると、
いじめた者の家庭は複雑だったの、
転校先で無視されるいじめになっているのだの、
加害者が被害者であるように報じられるようになった。

誰が被害者なのかを明確に
日本のマスコミは、お涙頂戴さながらの報道を
よくする。

加害者にも事情があったような、
加害者の人権を守るような、妙な報道が多い。

被害者の顔は当然のごとくニュースで流し、
被害者の遺族にはしつこく取材をする。
被害者の遺族は取材に応じるのが当然で、
取材してやってるんだという態度まで感じられるほどだ。

一方、加害者の家族がニュースに登場し
コメントすることはない。

加害者に可哀そうな家庭に育ったというのなら
そういう環境を作った親の責任は重大ではないか。

なぜ、加害者の親には取材をしないのか、
不思議で仕方ない。

写真くらいは公開を
大津のいじめ自殺事件では、加害者の顔写真が
ネットで割り出され流出している。

それを悪だ、ネットリンチだと騒ぎ立てる者もいるが、
なぜそうされるのかということを考えてもらいたい。

人間誰しも危険な人間との接触は避けたいもの。
加害者の顔を見ておきたいと思うことはごく自然な欲求である。

学校も教育委員も市も警察も動かず、
大騒ぎになったから、やっと動き出すというこの事実も
酷いものである。

日本のメディア、そして警察は、被害者側の人権を、
もっと考えるべきだと思えてならない。



写真は、台北の道端で販売されているパイナップルです。
台湾パイナップルは、シンまで甘く、大変おいしいです。


















コラムニスト●プロフィール
…………………………………
岩城 えり(いわき えり)
1971年12月東京生
オーストラリアで学生時代を過ごし
アラブ首長国連邦・シンガポールで就職
結婚し帰国したものの夫の転勤のためすぐに渡米
2005年12月より台湾在住

2012年7月15日日曜日

連載コラム196


日本の消費税が上がるのだという。
平成26年4月に8%、27年10月に10%に
引き上げられるそうだ。

100円のものが110円になり、
1000円は1100円に、10000円は11000円になる。

購買欲も薄れてしまい、きっとどこでも売り上げは
下がるだろう。

なぜならば、上がるのは消費税だけではないからだ。

所得税、社会保険料、厚生年金保険料も、どんどんと
上がることが決定している。

東日本大震災の復興財源を賄う増税だというが
あんまりではないだろうか。

マニフェストは何だったのか
今回の増税、一番困るのが子育てをしている
サラリーマン家庭だという。

子供手当ては激減され、おまけに所得制限がつき、
もらえる額などビビたるもの。

医療費は3割負担で、病気がちな子供でも産んだ日には
地獄を見ることになる。

大企業のサラリーマンの場合、年金も健康保険も
何もかもきちんと払うことになるため、
ずるい政治家だらけの日本において一番バカを見ることになる。

「オレたちの税金で年寄りの年金を払ってるんだ」
と言う奴に限って、払うのは消費税のみだったりする。

住民税の年少扶養控除も廃止されるが、
国民に甘い言葉で囁いていたマニフェストは全て実現せず。

一説によると、増税後の4人家族の負担額は30万以上増える
とのことだ。

子供など産めるわけない
今の日本では、誰もかれもが、いかに楽して金をせしめられるか、
そればかりを考えているようだ。

確実に搾り取れるサラリーマンから取ろうと法案を通す政府、
もらえるもんはもらわなくてはと、年金も健康保険も払わないのに
生活保護で楽に生きていく人々。

医者も人権も何もかも無視したような延命治療を行ったり、
とにかく不必要な治療に大量の薬を出し、点数を稼ごうとする。

教師のクオリティーは落ち、教師による性犯罪が増える一方。
いじめも酷く、公立、私立の格差は広がるばかり。

子供を預ける学童は3年生まで利用可能で、
それ以上の子を持つ共働きやシングルの親は、
夏休みをどうするかで頭を悩ませる。

晩婚が進み、親も年寄りのため頼れない。
それどころか親の介護もしなくてならないのだ。

お稽古事は、足元を見るため、信じられないほど高額。
無情に増税しまくり、子供には大金がかかって仕方ない。

大金がかかりまくる子供など、おちおち産めるわけが無い。

やはり日本の日は沈んでいるのか
銀行の金利が上がる見込みはないし、
本当に、日本で暮らしていても、よいことはないように
感じられる。

治安がよいと言われているが、それも地区によりけり。
おまけに、これほど自殺が多い国もめずらしく、
国民が、相当病んでいることをうかがい知ることができる、

生活保護も見直されるだろうが、結局、お役所は、
強く出られる、本当に弱い人たちに手当てを出さず、
怖そうな人や、ややこしくなりそうな人には、
さっと出すことになるのだろう。

福島第一原発も相変らずコントロールできておらず、
311当時の政府の最悪な対応だけがぽろぽろ報じられる。

自然災害は多いのに、目に見えないことをいいことに、
大丈夫、大丈夫と国民に日常を送れるよう強要する。

あと、10年、20年後。
日本はどんな国になっているのだろうか。

日は沈み、スラムが沢山あるような、酷い国になっている。
そんな風になるように思えてならない。

写真は、タイのプーケットの美しい写真です。






















コラムニスト●プロフィール
…………………………………
岩城 えり(いわき えり)
1971年12月東京生
オーストラリアで学生時代を過ごし
アラブ首長国連邦・シンガポールで就職
結婚し帰国したものの夫の転勤のためすぐに渡米
2005年12月より台湾在住 from 台湾 from 台湾

連載コラム314 from 北海道●美しき山田五十鈴さん


山田五十鈴さんといえば、テレビドラマでお馴染みの『必殺シリー
ズ』が、どうしても思い出される。
三味線で小唄をうたう姿は、凛として美しく、おしょさんそのもの。
バチで、悪人を殺す姿も艶やかな限りである。
中条きよし扮する三味線屋の勇次の母親・おりくである。
この二人は、実に色っぽく、テレビ画面から匂い立つような錯覚を
こちらに与えてしまうほどの色気をもつ親子だった。
かの必殺ドラマにこの親子が登場するだけで、なんとも色艶があ
り、華やかさを感じたものだ。
切れ長の流し目でアップになれば、惚れ惚れするほど美しい中条き
よしは、どこからどう見たって、山田五十鈴とは親子そのもの。
それほどのはまり役で、印象深い。
長者番組としてヒットし続けた必殺シリーズは、本当によく出来た
時代劇だったと思う。
その時々の風潮をさりげなく取り入れ、時代劇としての古い殻を打
ち破り、いつも斬新で新しさに満ちていたハードボイルド娯楽時代
劇である。
ハードボイルドは、格好いいが当たり前だけど、きっとそれだけで
はないのだ。
心も強くしてくれる、そんなふうに思えてならない。
子供の頃から、必殺ドラマが好きだった私としては、このドラマで
育ったと言っても、言い過ぎではない。
学校から帰るなり、ランドセルをほうり投げて、夕方の再放送に夢
中だった。
その大好きなドラマの延長線上に、山田五十鈴さんもいた。
雅な立ち振る舞いや美しさは、山田五十鈴さんこそ天下一品。
あまりに美しすぎて、少しずるい、なんて気持ちにもなったものだ。
そして、美しいと言えば、京マチ子さんもどこか忘れがたい印象である。

いつだったか、勝新太郎の『悪名シリーズ』に、五十鈴さんの娘・
嵯峨美智子さんが出演されていたのも観たけれど、母親に負けず劣
らずの美貌と色気だった。
山田五十鈴さんも、女優としては、とても良い時代に花を咲かせ続
けた役者さんだったのだろう。
戦後の成長期に作られた日本映画やテレビドラマは、あらためて鑑
賞するほどに、勢いと活気に満ちている。
放送倫理の縛りもなく、自由で元気そのもの。
おこがましい発言ではあるが、役者さんに限らず、そういう時代
に、制作にたずさわれた人々は、なんて幸福なのだろうと想像して
しまう。
映画バカが、山ほどいたからだ。
今は、あの頃より元気がなくなった。
映画はともかく、いつからか、お茶の間のドラマはほどほどのもの
ばかり。
可もなく不可もなく、視聴者からの苦情を気にするあまり、制作費
は掛かっているはずなのに、つまらないものが多い。
時代劇でいえば、制作費の事情もあって、NHKまかせになった。
それに、国産ドラマより、今では海外ドラマの放送枠が多い。
日本のテレビ事情に限らず、今やアジアでは、そういった形での輸
入ドラマの放送が多くなってしまっているので、あまり文句もつけ
られないけれど、この多さにはどこか危機感を抱かざる負えない気
持ちである。
ドラマは自国で作るより、輸入したほうが得だなんて、そんな損得
勘定が見え隠れしてならないからだ。
放送倫理については、総務省の管轄だろうから、お上の事情はわか
らない。
でも、テレビドラマにもっと自由をあたえて、面白くしてほしい。
いち視聴者のささやかな願いである。

山田五十鈴さんの若い頃の作品は、あまり観てこなかった。
それだからか、これからでも五十鈴さんを偲んで、少しずつでも観
てみようと思います。
山田五十鈴さん、どうぞ安らかにお眠りください。
楽しい娯楽作品をありがとうございました。
心よりご冥福をお祈り致します。



コラムニスト●プロフィール
……………………………………
赤松亜美(あかまつあみ)
北海道在住

2012年7月3日火曜日

連載コラム313 from 北海道●さようなら、ちいさん


突然の訃報だった。
俳優の地井武男さんが亡くなった。
本当に驚きだった。
ここ数年は、ローカル旅番組の『ちい散歩』で、お茶の間の人気者 
だった地井武男さんだったが、残念なことに、私はこの番組を見て 
いない。
北海道では放送がされてなかったからだ。

ちいさんと言えば、やはり名脇役という印象が強い。
主役を押し上げる、安定感のある脇役の役者さんである。
それとなく刑事役も多いように感じるけれど、やはりドラマ『北の 
国から』の中畑のおじさん役は、いつまでも印象深く忘れがたいものだ。
倉本聰さんの『北の国から』は、国民的なドラマだった。
視聴率も高く、ファンも多かった。
それゆえに、ドラマが終了したあとも、ドラマの舞台となった富良 
野を訪れる旅人も多い。
あのドラマによって、富良野のイメージは、がらりと変わったのだ 
と思う。
もう、何十年も前の話になるが、大阪に住むいとこがひょっこりと 
遊びに来たことがあったが、滞在中に、どうしても富良野に行きた 
いと言い出した。
その頃の私は、まだ社会人になりたてで、実家暮らし。
私の実家のある町から富良野までは、なかなか遠かった。
車で走るとしても、相当な距離である。
免許を取り立ての私には、富良野までのドライブは、まだ自信がな 
かった。
だから、いとこには断ってしまったのだが、そうしたら、彼女はひ 
とりで行くと言うのだ。
いとこは、電車を乗り継いで、ひとりででも富良野に行くと言って 
きかない。
私も家族も、これにはすっかり慌てて、「この次は必ず連れて行く 
から」と彼女を何とかなだめすかし、富良野行きを踏みとどまらせた。
都会の人にとって、雄大な北海道は、憧れのイメージが強いのだろう。
ましてや、『北の国から』の大ファンであったいとこにとって富良 
野は、特別だったのだと思う。
どうしても訪れてみたい場所だったのだろう。
けれども、富良野は、電車でたやすく行ける観光地ではない。
若い20歳そこそこの女の子が、ふらりと出掛けていって探訪でき 
るところではなかった。
行ったところで、帰ってくるのも至難の業である。
車での移動が絶対的に不可欠だった。
だから、鈍行電車で富良野までたどり着けても、だだっ広い田舎で 
は、人に会うことも店を探すことも難儀なことである。
ドラマのロケ地だって、駅から簡単に行ける場所ではないから、泣 
く泣く富良野行きをあきらめたその時のいとこは、本当に落胆して 
いたが、それでも、それから数年後に、結婚をしたいとこは、自分 
の家族を引き連れて、また北海道を訪れ、車で、富良野・美瑛・旭 
川をたっぷりと周遊した。
『北の国から』を愛するファンにとっては、富良野は聖地なのだろう。
純や蛍や五郎さんや、中畑のおじさんの姿までも、あのドラマの美 
しさと共に、色褪せることはない。
青空の下で広がる長閑なパッチワーク畑もラベンダー畑も。
五郎の家や麓郷の森だって、いつまでも鮮やかなままなのだと思う。

ところで、昨年他界した俳優の原田芳雄さんの古い映画には、若か 
りし頃の地井武男さんも多く出演している。
テレビドラマでお馴染みの朴素で、正義感あふれるイメージとはま 
た違い、破綻していく役どころが多いが、これらは日活ニューアク 
ション時代に制作された映画だ。

ちいさん。
あまりにも、突然の訃報に、心が萎えました。
どうぞ、安らかにお眠りください。
ちいさんのご冥福を心からお祈り致します。







コラムニスト●プロフィール
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赤松亜美(あかまつあみ)
北海道在住

連載コラム195

日本の消費税が上がるのだという。
平成26年4月に8%、27年10月に10%に
引き上げられるそうだ。

100円のものが110円になり、
1000円は1100円に、10000円は11000円になる。

購買欲も薄れてしまい、きっとどこでも売り上げは
下がるだろう。

なぜならば、上がるのは消費税だけではないからだ。

所得税、社会保険料、厚生年金保険料も、どんどんと
上がることが決定している。

東日本大震災の復興財源を賄う増税だというが
あんまりではないだろうか。

マニフェストは何だったのか
今回の増税、一番困るのが子育てをしている
サラリーマン家庭だという。

子供手当ては激減され、おまけに所得制限がつき、
もらえる額などビビたるもの。

医療費は3割負担で、病気がちな子供でも産んだ日には
地獄を見ることになる。

大企業のサラリーマンの場合、年金も健康保険も
何もかもきちんと払うことになるため、
ずるい政治家だらけの日本において一番バカを見ることになる。

「オレたちの税金で年寄りの年金を払ってるんだ」
と言う奴に限って、払うのは消費税のみだったりする。

住民税の年少扶養控除も廃止されるが、
国民に甘い言葉で囁いていたマニフェストは全て実現せず。

一説によると、増税後の4人家族の負担額は30万以上増える
とのことだ。

子供など産めるわけない
今の日本では、誰もかれもが、いかに楽して金をせしめられるか、
そればかりを考えているようだ。

確実に搾り取れるサラリーマンから取ろうと法案を通す政府、
もらえるもんはもらわなくてはと、年金も健康保険も払わないのに
生活保護で楽に生きていく人々。

医者も人権も何もかも無視したような延命治療を行ったり、
とにかく不必要な治療に大量の薬を出し、点数を稼ごうとする。

教師のクオリティーは落ち、教師による性犯罪が増える一方。
いじめも酷く、公立、私立の格差は広がるばかり。

子供を預ける学童は3年生まで利用可能で、
それ以上の子を持つ共働きやシングルの親は、
夏休みをどうするかで頭を悩ませる。

晩婚が進み、親も年寄りのため頼れない。
それどころか親の介護もしなくてならないのだ。

お稽古事は、足元を見るため、信じられないほど高額。
無情に増税しまくり、子供には大金がかかって仕方ない。

大金がかかりまくる子供など、おちおち産めるわけが無い。

やはり日本の日は沈んでいるのか
銀行の金利が上がる見込みはないし、
本当に、日本で暮らしていても、よいことはないように
感じられる。

治安がよいと言われているが、それも地区によりけり。
おまけに、これほど自殺が多い国もめずらしく、
国民が、相当病んでいることをうかがい知ることができる、

生活保護も見直されるだろうが、結局、お役所は、
強く出られる、本当に弱い人たちに手当てを出さず、
怖そうな人や、ややこしくなりそうな人には、
さっと出すことになるのだろう。

福島第一原発も相変らずコントロールできておらず、
311当時の政府の最悪な対応だけがぽろぽろ報じられる。

自然災害は多いのに、目に見えないことをいいことに、
大丈夫、大丈夫と国民に日常を送れるよう強要する。

あと、10年、20年後。
日本はどんな国になっているのだろうか。

日は沈み、スラムが沢山あるような、酷い国になっている。
そんな風になるように思えてならない。

タイのプーケットの美しい写真です。






















コラムニスト●プロフィール
…………………………………
岩城 えり(いわき えり)
1971年12月東京生
オーストラリアで学生時代を過ごし
アラブ首長国連邦・シンガポールで就職
結婚し帰国したものの夫の転勤のためすぐに渡米
2005年12月より台湾在住 from 台湾 from 台湾

2012年6月15日金曜日

連載コラム194


大阪、ミナミの繁華街で男女2人が刺し殺される
通り魔事件が発生した。
被害者と加害者は面識のない赤の他人という
通り魔殺人事件であった。

加害者の男は刑務所から出所したばかりで
住む場所も仕事もなく、悲観し自殺しようと思ったが
出来ず、死刑になればと見ず知らずの2人を
殺したと供述しているとのこと。

身震いするほど身勝手な事件なのだが、
またもやマスコミは加害者は可哀想な身の上だと
伝え始め、
ネットでは事件を遠巻きに見ていたヤジ馬が
被害者の写真を掲載している。

お涙頂戴のマスコミ
この手の事件が起きると、日本のマスコミはなぜか、
加害者がいかに気の毒な人生を歩んできたかを
伝えたがる。

今回の加害者も「お母さん大好きな親思いの子」
だったのが小学生のときに母を亡くし、
父の店も倒産してしまい、引越しを経験。

寂しさをまぎらわすためか中学生になるとグレはじめ、
高校には行かず暴走族で暴れまくり総長に。
薬物や強姦で逮捕され10年ほど前には父の年金で
生活。

父と暮らしていたアパートの賃貸料を滞納し追い出され、
2004年には破産宣告を受け、その後、覚せい剤所持で
有罪判決となり刑務所に服役。5月24日に出所し、
わずか2週間あまりで通り魔をしたのだという。

免罪符などない
最愛の母親を小学生で亡くすということは
確かに可哀想なことである。
甘えたいさかりであり、その後の性格に影響を及ぼすかも
しれない、出来事だといえよう。

しかし、幼い頃に母親を亡くしている人は、かなりいる。
離婚が増えている日本では父親が親権を得ることも多く
母親の愛を知らずに育つ子も多い。

父親の店が倒産すること、引越しを経験すること、
同じようなミの上の子供だってゴマンといる。
もっと悲惨な経験をしている子供だっているのである。
その子供たちが全員悲惨な人生を送り、殺人鬼になるだろうか。
いや、ならない。

高校に進学しなかったこと、暴走族に入ったことまでは
そういう子供だったのだなと理解できるのだが、
その後の薬物や強姦は、到底理解できない。

カッコイイから、嫌な気持ちを忘れられるからと、クスリに手を
出したとしても、強姦は他人を傷つける最低最悪な犯罪である。

また、20代で父親の年金をあてに同居していたというのも
呆れる話だ。
散々暴れまくっていたのならば体力はあるだろう。
中卒だって職を選ばなければ仕事はあるはずだ。

おまけに破産宣告。あまえた考えの持ち主だということが
とても良く分かる。

可哀想な身の上は免罪符にはならない。
刑務所から出てきて、住むところも仕事もないのは、
まさしく本人の責任なのである。

モラルのない日本
こういうマスコミの報道は人権活動家へのアピールのなのか
と勘ぐってしまうほどであるが、
まともな考え方をしないのはマスコミだけではない。

今回の通り魔殺人事件は繁華街で起こったため
目撃者は大勢いた。
被害者は助けてと繰り返し言ったが、誰一人として助けず
遠巻きに眺めたり、写真まで撮影している者までいたのだ。

確かに包丁でグサグサと刺しまくる男に
立ち向かうのは危険なことだろう。
しかし、大勢が一丸となって向かえば、制することは
出来たのではないだろうか。

アメリカならば必ず周囲が止めに入るだろう。
ただ、それはヒーローが一番素敵だと考える国民であり
正義感が強い人が多いから。同じことを日本人に
求めるのは無理がある。

事なかれ主義者の多い日本では、
逆に助ける方が変だというのも理解できる。

だがその現場を写メしてネットに流すということは
あまりにもモラルの低いことではないだろうか。

身勝手な殺人事件が増えていることもそうだが、
どんどんモラルが低下する日本の行く末が心配でならない。

写真は、台湾の風情ある美しい花です。






















コラムニスト●プロフィール
…………………………………
岩城 えり(いわき えり)
1971年12月東京生
オーストラリアで学生時代を過ごし
アラブ首長国連邦・シンガポールで就職
結婚し帰国したものの夫の転勤のためすぐに渡米
2005年12月より台湾在住 from 台湾 from 台湾

連載コラム312 from 北海道●現代教育への疑問


授業中に落ち着きがなく、集団生活に馴染めない。
奇声を発したり、すぐに暴力をふるったり、あばれてしまう。
そうした子供が教室内にいるだけで、授業に支障をきたし、ムード 
がピリピリしたり、先生達の気苦労も漠然と想像はできるものの、 
問題行動を起こす子供を病気とみなして、『発達障害』という枠で 
囲おうとする社会の趣きに愕然とした。
NHKクローズアップ現代『薬漬けになりたくない ~向精神薬をのむ 
子ども~』を見た。
ショッキングな話だった。
問題児なんて当たり前のこと。
学校生活に馴染めない子供がいたって、それは当然。
そんなふうに受け止めてしまう私のような人間が、古いとでもいう 
のだろうか。
昔は、そんな子供はどこにでもいた。
当たり前で、ごく普通のことだったはずである。
子供は、それだけエネルギーの塊なのだ。
発達障害とは、何をもって言いたがるのか。
不安を覚えた。
子供達を育てにくい社会になったものだと悲観的になる。
数年前から、耳にすること、目にすることに疑問を感じてしまうこ 
とは多々あった。
小学校での運動会での一幕。
みんなで手をつなぎ、一緒にゴールする徒競走。
競わせないで、平等を重んじる不思議なルール。
学芸会の劇の一幕。
運動会と同じく、公平さをよそおって、主役をクラスの全員が演じ 
るお芝居。
モンスターペアレントという言葉が語られるようになってから、学 
校教育にねじれを感じたのは、きっと私だけではなかったと思う。
小学校の教員をしている友人から、クラスが崩壊した話を聞いた。
我が子かわいさに、学校に注文をつけてくる親たちの話も聞いた。
素直に大変だと思ったものだ。
けれども、そうした学校生活の一端で、集団に馴染みにくい子供に 
レッテルをはり、向精神薬をあたえたがる現場、社会があるとする 
ならば、こんなに恐いことはない。
私たち大人は、子供を見守りはぐくむ社会をいったいいつ放棄したのか。
責任を互いに押し付けあってばかりで、右に習えない子供を『発達 
障害』だといいきる社会。
息苦しいのは、大人達ばかりではないのだ。
子供にだって、逃げ場は必要。
だけれども、大人も子供も時間に追われ、目まぐるしく生きなけれ 
ばならない現代では、ささやかな逃げ場すらどこにもないのかもし 
れない。
『鶴瓶の家族に乾杯』や『ようこそ先輩』に見られる子供達から 
は、そんな心の崩壊やねじれなどみじんも感じられない。
いつも希望に満ちて、子ども達の行動や発言に笑顔になる。
だからこそ、強く思う。
向精神薬で、子供を押さえつけようとする社会など、ゆがんでいると。
精神薬を服用しなければ学校に通えないというならば、学校には行 
かないほうがいい。
なぜ、医者は簡単に処方してしまうのか。
なぜ、親はそれを子供に飲ませるのか。
疑心暗鬼に掛かりながら、子供に向精神薬を服用させるなど、子供 
を殺すことと等しい。
この場合の責任とは、いったい誰のための責任なのか疑問を感じる。
親も医者も学校も、子供の将来より自分達の楽な方を選んでいるだ 
けではないのか。
今年から中学校の体育で必修化させたダンスも、文部科学省の安易 
なおふれによるものだが、ダンスを必修させたがる意味が理解できない。
私個人は、趣味でダンスサークルに通っているけれど、私のまわり 
でもこのおふれに対して、疑問視する声は多かったし、現場の混乱 
が目に見えるようだ。
ダンスに触れたこともない先生達が、おいそれと踊れるようになる 
とは思えないし、そうした先生から、ダンスを教わる子供も気の毒 
なのだ。
ダンスは、体育とは違う。
リズム感も必要だし、スポーツが得意不得意に関係なく、センスが 
問われる。
運動不足の解消だけを取り上げて、媚を売るだけの方策など、本質 
が欠けている。
だからこそ思う。
大人達の思いつきで、子供達の教育を翻弄しつづける日本の子育て 
は、ゆがんでいるのだろうと。
必修授業にダンスなんていらない。
向精神薬なんて、子供には絶対にいらない。
見守りはぐくむ社会を、私たち大人は子供に返すべきである。






コラムニスト●プロフィール
……………………………………
赤松亜美(あかまつあみ)
北海道在住

2012年6月1日金曜日

連載コラム311 from 北海道●生活保護の受給に思うこと


このとろこ連日のように、生活保護の受給問題がメディアで取り上
げられている。
発端は、芸人の河本準一氏の母親が生活保護を受けていたこと。
15年前から生活保護の受給があったとの話だが、某週刊誌に書か
れた記事を自民党の片山さつき議員が、国会で個人名を出して問題
視したことにより広がった。
河本氏の母親の受給が、不正かいなかかについては、賛否両論だ
が、現にテレビでもネットでも、様々な意見が飛び交っているのが
現状である。
ただ、やはり、芸人という職でテレビ出演して商売をしている以
上、母親が長期に渡って受給してきた事実は問題である。
芸人に、常に模範であれとは言わないが、公人であることに変わり
はない。
芸で身を立てていくとは、そういうこと。
どんなに泥水をすすっても、自分の親が生活保護を受けるなど、
あってはならないことなのだ。
なぜなら、その事実があるかないかだけで、世間の目も違ってくる。
収入に波がある、病気で仕事が出来なくなった時期があった。
その事情も理解はする。
しかし、売れっ子芸人が立派な豪邸に住み、海外で豪遊したなどと
取り沙汰されれば、それだけで母親の生活保護の受給は、本人に
とって一生の致命傷になる。
幼少期の貧乏ネタで笑いを取ってきただけに、ひとつも笑えなく
なってしまうからだ。
芸人とは、悲しくもそういう商売。
そのことを、まずは本人達が理解すべきなのだと思う。

河本氏の母親の受給問題と連鎖して、キングコングの梶原雄太氏の
母親の受給も浮上した。
こちらは、梶原氏本人が、スポーツ紙に公表した模様。
しかし、梶原氏も2000万円なるマンションを母親に買い与えな
がら、受給との話である。
そもそも、生活保護とは、どうしても働けない人が余儀なく受給さ
れる制度。
高級マンションに住み、仕事がなくなったといって、たやすく受給
できてしまうなら、不満が出て当然なのだ。
しかも、梶原氏も河本氏同様、公人であり芸人。
その点ひとつとっても、これはモラルの問題なのだろう。

生活保護の受給に関しては、いぜんとして不正受給者がはびこって
いる現状がある。
本来もらうべき人には手が差し延べられず、もらわなくてもよい人
達が堂々ともらい続ける現状がまかり通っているからこそ、公人、
芸人のような職種は、受給に甘えてはいけない。
生活保護の受給を『もらい得』なんて、世の中に堂々と広めてはな
らないのだ。
私は、彼ら芸人個人より、これは吉本興業という会社のモラルの欠
如だと感じてしまう。
吉本興業自体に、そういうモラルが欠けているから、所属芸人に、
こんな問題が起きてしまうのだ。
芸能界も、けっして綺麗なとろこではない。
さまざまな裏事情もあるだろうし、公には出来ないことも抱えてい
る世界だ。
しかし、そういう世界であっても、心ある事務所はちゃんあるもの
だし、今や手広く商売をし、芸能タレントを多数抱え込み、養成所
まで育成している天下の吉本興業なのだから、所属タレント達が、
本業とは別なところで世間に足をひっぱられぬよう、目配りが必要
なのだ。
モラルをかえりみず、儲け主義に走りすぎると、あらぬところで足
をすくわれる。
土地柄や人種は関係ない。
それが、日本のルールだ。

一昔前なら、生活保護の受給は恥の感覚まであったはず。
しかし、恥であっても、受給する人達は、やむにやまれぬ事情によ
り生活保護を受けていたはずである。
それなのに、今では生活保護受給者は、そこから抜け出すこともま
まならない。
受給にどっぷりと浸かり、自立することすら皆無である。
この国は、民主党政権になってから、生活保護の受給に甘くなった。
どんどんもらってください、と言わんばかりに公に勧めてきた。
自立支援のセーフティネットもほとんどないままに、受給者が増え
続け、今やこの国の生活保護費は5兆円に達しようとしている。
社会福祉士ひとりに対し、受給申請者が100人という割り当て
も、まったく改善されていない。
やみくもに、ばらまき政策をしてきたツケが、このざまである。
国会は、増税で押し問答をしている場合ではないはずだ。
早急に、この問題に関して法改正を進めるべきである。

この国に、モラルを取り戻してほしい。
私達大人の不道徳な行いを、子供達はいつも見ているのです。



コラムニスト●プロフィール
……………………………………
赤松亜美(あかまつあみ)
北海道在住