2012年10月2日火曜日

連載コラム199 from 台湾


2012年9月、日本と中国の関係は大きく悪化した。

日本と米国が「日本の領土である」と認識している、
尖閣諸島を日本政府が購入したことを発表したため、
「自分の領土だ」と主張している中国が大激怒。

尖閣、反日という言葉は多くの中国人の怒りのスイッチを
入れるため、中国国内で大規模なデモが巻き起こった。

デモはかなりの規模に膨れ上がり
愛国無罪の名のもと、日系企業をめちゃくちゃに壊したり
放火したり、略奪したりとやりたい放題。

デモではなくテロだと言った日系企業関係者がいたが、
まさしくその通りであった。

反日デモの恐怖
今回の反日デモの報道をニュースで見て感じたことは、
参加者は圧倒的に若者が多いということだった。

若い世代が率先して「日本を倒せ」と叫ぶ姿は異様であり
これから戦争に突入してもおかしくない程の
暴れっぷりを見せていた。

彼らは激しく暴れまくり、制止しようとする警官にも
殴りかかったり、蹴りを入れたりとやりたい放題。

ペットボトルを思いっきり投げたり、
周りのデモ隊が巻き添えを食らってもよいという感じで
暴れまくっていた。

現地の日本人も叩かれた、蹴られたなどの被害があり
上海に住んでいる友人は、

「住んでいるマンションは外国人地区にあるし、
食べ物も出前などデリバリーが沢山あるので大丈夫。

あまり外に出ないから、とても静かに過ごしているけれど、
情報があまりないし、子供が怪我や病気などになったときに
病院でスムーズに診てもらえるかが心配」

と言っていた。

誰もが大使館を頼りにはしていないと語っており、
在留邦人にとって、やはり大使館は頼りにならないのかと
心底がっかりしてしまった。

変化するデモ
日系デパートを略奪したり日経企業に火をつけたりして
大喜びしていた中国人デモ隊。

しかし、次第に毛沢東の写真を掲げる若者の姿が
目につくようになった。

怒りの矛先は、どうやら日本だけではないようだと
世界中の人々が感じ出したころ、
中国政府は本気を出してデモを取り仕切るようになった。

今回のデモを取り仕切っていたのは政府であるが、
デモ隊は反日教育を叩きこんだ90年代生まれの世代が中心だった。

この世代の子供たちは一人っ子政策のため兄弟がおらず
ワガママに育てられており我慢ができない。

そんな彼らだから、大学卒業後ちゃんとしたところに就職できず
常日頃から様々なことに不満を抱いている。

多大なるストレスをため込んでいる彼らは爆発できるきっかけを
今か今かと待ち構えているのだ。

今回の尖閣諸島から起こった反日デモは単なるきっかけであり、
彼らは次第に矛先を本命である政府へと向けたのである。

その絶妙なタイミングで政府は「ここまでは愛国無罪で目をつぶるが、
ここからはそうはさせない」と睨みを利かしだしたのだ。

あっさりとデモがトーンダウンしていくのに驚いた人も多いと思うが
政府相手のデモを報道するわけにはいかないので
継続していたとしても私たちが目にすることはできないだろう。

また、中国人は天安門事件を忘れてはいない。
政府がどれだけ恐ろしいかも知っている。
だから線引きをするのである。

何よりも大事なメンツ
中国人は何よりもメンツを大切にする。
そしてコネも大事にしている。

尖閣諸島であるが、最初に東京都が購入したのなら、
デモは起こっても、中国政府はここまで頑なに反発
しなかっただろう。

東京都知事は中国が嫌いなことは有名であるし、
そういうこともありえると思っているからだ。

何のクッションもなく、日本政府がいきなり購入すれば
世界が見ている中でメンツをつぶされたと激怒するもの。

購入することは事前に中国に伝えていたというが、
メンツをつぶされると思ったことだろう。

そしておそらく今も日本政府には中国政府とのコネが
ない。だからメンツはつぶれっぱなしなのだ。

「まーまー」と間に入って行ってくれる人がないことは、
かなり致命的なことだといえよう。

メンツをつぶされたと激怒する中国を今後、どうなだめるのか。
やはり日本はアメリカ頼りになってしまうのか。

今の政権は本当に嫌なことばかりしてくれるが、
これが最も頭の痛い問題だと言えよう。

写真は、台南の人気夜市にある料理店です。美味しい食材がずらりと並んでいます。


















コラムニスト●プロフィール
…………………………………
岩城 えり(いわき えり)
1971年12月東京生
オーストラリアで学生時代を過ごし
アラブ首長国連邦・シンガポールで就職
結婚し帰国したものの夫の転勤のためすぐに渡米
2005年12月より台湾在住

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