2009年11月15日日曜日

連載コラム248 from 北海道●大人の部活動

『北陸の旅』の連載を終えて、奇妙なタイトルで書き出してしまったが、
私が述べる『大人の部活動』とは、大人たちの趣味的な活動を意味する。
絵画や陶芸、英会話に韓国語講座、なんとかのボランティア活動に
携わることも
そうだし、ならば「趣味はスポーツクラブに通うこと」と答える人
も、いまは
普通に多い風潮かもしれない。

私はダンスを9年続けている。
正確にいうと、ダンスサークルに所属して9年目。
ダンスというのは、以前にも打ち明けてきたことだが、ジャズ系や
ヒップホップ系の
踊りであり、マダムたちが勤しむ社交ダンスでもなければ、なんと
か流の日本舞踊でも
ない。
年甲斐もなくなんて、身も蓋もないことはどうかいわないでほしい。
本人がこれと思って生き甲斐を感じているのだから、温かい目で見
守ってとも
いわないが、鼻で笑われるのもごめんである。
いや、笑いたければ、笑ってよろし。
どうぞ、笑ってください、でもこっちは真剣、それだけです。
人にはそれぞれの価値観があり、その価値観の中で、それぞれの目
標を見つけていく。
人間の幸福とはそんなものだ。
他人には理解不能でも、本人には大切だと思うことがあるものです。
そして、その趣味を同じ価値観を持った人たちと分かち合い、高め
あえれば、
尚のこと幸福だろう。
だから、何かに夢中でいられること、何かが好きと思える人生は、
良い意味で幸せ
なのだと思う。

私は森山開次さんのファンである。
それから、近藤良平さんのファンでもある。
そして、我がサークルの講師、ターボの大ファンだ。

マニアックな話で、さっぱり解らないと思われる方もいるかもしれない。
けれども、森山開次さんも近藤良平さんも世界的に活躍されている
ダンサーで、
海外公演も多く、テレビや舞台、話題の映画にもチラリと出演され
ていたり、
その業界では、知る人ぞ知る有名人だったりする。
コンドルズという名前をどこかで耳にしたことはないだろうか?
学ランで踊る姿が定着してしまったコンドルズは、近藤良平さんが率いる
ダンスグループでもある。
ファンに惜しまれながらも終了した『サラリーマンNEO』に、この
コンドルズは出演していた。
一件風変わりで、独特の笑いと感性を織り交ぜたコンドルズのダンスは、
観る人に元気を与える。
笑いと笑顔で、心がぽかぽかしてくるダンスだ。
『サラリーマンNEO』は海外でも放送され、多くのファンを勝
ち取った番組でも
ある。
ちなみに、局はNHK。
それから、『あさだ!からだ!』にも出演中。
この番組には、近藤良平さんだけではなく、森山開次さんも出演し
ている。
どちらも、それぞれのカラーを全開にし、ファンにとっては貴重な
番組でもある。
ちなみに、子供向け番組でござる。
そして、こちらもByNHK。

森山開次さんの舞台は、兎にも角にも作品の全てが圧巻している。
森山開次にしか作り出すことの出来ない世界観がある。
ベェネチアのホールで2007年に踊った作品『ベルベット・ス
イート』は、
観客からも大絶賛されたひとり舞台だ。
当時、民放テレビの『情熱大陸』でも取り上げられ、日本各地でも
公演をした。
札幌では教文の小ホールで公演し、チケットは早々と完売した。
開次さんの舞台には、強烈なインパクトがある。
どこにそんなエネルギーを隠しているのか、普段の物静かな人柄からは
想像もつかないほど、過激でおどろおどろしく、それは地下でマグ
マが活動して
いるような不気味さがあったり、血のにおいを感じたりするけれど、
それでいて全てに切なさを秘めている。
哀しみが心いっぱいに溢れてくるほど、開次さんの舞台はすごい。
そして、それを小ホールという限られたスペースでやってしまうか
ら、場内は、
開次さんのパワーで包まれてしまうのだ。
そういう舞台をこなしながら、一方では『あさだ!からだ!』での作品も
踊れちゃう。
その凄さに、ほとほと参ってしまう。
その違いは、月と太陽ほどだ。
夜と昼ほどの、陰と陽ほどの極端さがある。
だが、どちらも森山開次の世界。
どちらも、凄いし、素晴らしい。
ちなみに開次さんは、この夏帝国劇場で上演していたミュージカル
『ダンス オブ
 バンパイア』に出演していた。
そして、現在公開中の映画『カムイ外伝』にも出演している。

この時期、私は毎年恒例のダンスの発表会を控えている。
今年は、10月25日、残すところあと僅かだ。
発表会練習が日に日に加速していく中、気がつけば足が不調になっ
ていた。
股関節にやや緩みを覚え、痛みを覚えながらも、腰や膝、そして首
にまで、
痛みは拡大していた。
それでも、こういうアクシデントは特別なことではない。
誰でも、誰にでもあることで、昨年だってサークルの仲間のひとりは、
腰にブロック注射を打ち続けて、発表会を乗り切った。
我らのような世代は、そういうお年頃である。
体を酷使すれば、どこかにそのことが跳ね返ってくる。
それでも乗り越え、達成することを目標にしている限り、
仲間にも支えられるのだろう。

9年という月日は、あっという間だった。
その間、サークルのメンバーは入れ替わり、止めていく人もいれば、
ずっと変わらず残り続ける人もいる。
新しい顔もその都度出入りし、現在の我がサークルは21歳から5
0ウン歳までの
メンバーで構成されている。
私は長年、このサークルに所属しながらも、ずっと発表会が苦手だった。
発表会の季節になると、否応ナシに憂鬱になった。
要するに自分の踊りに自信がなく、舞台が好きになれなかったのだ。
そんな葛藤を抱えながらも、止めずに続けてきた。
止めようと思ったことは、幾度もある。
けれど、止めてしまえば、それっきり。
感動も達成感も味わうことなく、私は子供の頃のように苦手なことを
投げ出して、何も変わらない自分を生き続けていたかもしれない。

ダンスの舞台は、踊るより観る方が好き。
その気持ちは、やっぱり胸の奥底にまだある。
コンドルズの舞台にウキウキするように、森山開次さんの舞台に感
動するように、
私はひとりでだって彼らの公演があれば観に行く。
それほど、私にとっては魅力的なわけで、観るのも勉強、そういう
気持ちだ。
しかし、それを観たことをそのまま活かせなくても、考え、工夫し、
自分なりに努力することも必要なこと。
私にはその部分が欠けている。
観たらみっぱなし、感動したら、良かった嬉しかったで、終わって
しまう。

だから、もう随分前のことになるけれど、私は我がサークルの講師に
釘を刺された。
要するに、怒られたのだ。
(だって、観る方が好きなんだもん・・)
その時の私は、鬼の形相で捲し立てる講師の愛の鞭にげんなりした。
だって、観る方が好きだなんて、もっとダンスが上手くなりたいとか、
もっと極めてみたいなんて気持ちが全く感じられないから、
それで講師は激怒したのだと思う。
こんなに教えているのに、おまえはどういうことだ? と。
仲良しクラブじゃないんだぞ、もっとやる気を出さんかい、と。
そうなんです、うちの我がサークルは、特に精神面では、
どっかの実業団なみに厳しいのです。
だから、その体質についていけない人は、自然と止めていくわけで、
でもだからこそ、軟弱だった私も心が鍛えられていきました。
なにくそ、根性で、頑張りました。
やめれば、それでおしまいでも、やめなければ、きっといつかは味
わえる。
頑張ったと思える自分や、これだと思う瞬間に出会えるのです。

発表会を前にして、足が不調でも、こんなの屁の河童でございます。
痛み止めを飲めば、よろし。
それから、筋力トレーニングで強化すれば良いことじゃ。
問題なかです、頑張れます。
そんで、今年はばっちり踊っちゃるけん!
ってな、気持ちです。

人生何かに夢中になれること、オススメです。
で、興味はあるんだけど、気持ちがそこまで高まらないあなたへは、
森絵都さんの『DIVE!』という本を是非に。
努力の先にしか見ることの出来ない景色、とってもいいものですよ。


コラムニスト●プロフィール
……………………………………
赤松亜美(あかまつあみ)
北海道在住

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