2009年12月1日火曜日

連載コラム251 from 北海道●問いかけの時代

2009年のユーキャン流行語・新語大賞候補が発表された。
60語もある候補の中には、「政権交代」や「事業仕分け」
など、政治関連の流行語も多い。
また、「草食男子」「弁当男子」「乙男」などや、「婚活」
「離カツ」や「歴女」。
芸能人の薬物問題を象徴した「あぶり」。
明るい流行語は極めて少ないと感じる。
その年の傾向を改めて振り返る意味でも、流行語は欠かせな
いものだ。
しかしながら、多様性を求む時代に、流行語候補がノミネート
されても、それ以上に大賞を決めることに果たして意味がある
のだろうか?

「婚活」や「離カツ」のように、言葉を縮めた表現に「就活」
がある。
今回はノミネートされなかったが、これも今どきの言葉だ。
そして、今どきの就活には、パソコンや携帯というアイテムは
必需品である。
サイトにアクセスして、関心のある企業に登録する作業から
始まると言われる今どきの就活では、後日メールで企業から
説明会の案内が送られ、面接へと漕ぎ着けるが内定には至らず。
その数、60社や100社はざらだという。
このことに、厳しい就活と言われるが、漠然と感じることは、
もう闇雲に就活が報われる時代は終わったということである。

今の日本では終身雇用で将来が守られる暮らしも既に崩壊している。
日本は高度経済成長が到達した時点から、次なる目標を失い、
バブル期を得て、今になった。
それまでのサラリーマンは暮らしが不安定になり、家のローンが
払えなくなり、自身としての誇りも打ち砕かれた。
そういう暮らしの中で、人は世の中の何を信じて生きていいのかも
解らない。
正しいと思っていた生き方が打ち砕かれると、当然それは子供に
も繁栄されるわけで、実は大人達は子供達にも曖昧に、何を
どうして、どう伝えていいのか、根本的なことを解っていないの
かもしれない。

崩壊と共に失われたことは多い。
しかし、それは今までのルールが通用しなくなっただけで、希望が
削がれたわけでない。
多くの学生達がリクルートスーツに身を包み、マニュアル通りに
右へ倣い、そういう職探しの時代は終わったというだけのことだ。
それは個々の時代に突入したということ。
将来つきたい仕事を、若い頃から想像しそのために何が必要か
何を身につければいいか、どういう分野に進めばいいか、そういう
ことを探って子供たちは大人になる必要があるということだ。
そして、もちろんそこにはグローバルという時代の波もある。
日本という枠の中で生きる方法もあるだろうし、この国を飛び出し、
自分のやりたいことを極めていく方法もあるだろう。

実はこの考えに到達したのは、カンブリア宮殿でお馴染みの村上龍
さんのエッセイ集がきっかけだった。
「村上龍 文学的エッセイ集」なる本は、2006年に刊行された本で
偶然古本屋で購入した本だ。
村上龍さんの小説は、実のところ殆ど読んではいない。
読んだのは「半島を出よ」のみである。
後は、まだ本箱の隅で眠っている。

村上さんのエッセイ集には、正直目から鱗だった。
なぜなら、このエッセイ集を読むまで、私もどうしていいか解らない
側の人間だったからである。
時代への不安や憂鬱は敏感に感じても、これだという意見に到達でき
ないわけで、討論番組を見ても、何を読んでも、結論など出なかった。
不安定な大人の生き方は、子供たちの生き方にも跳ね返ってくる。
子供は何より、大人の不安を察知して、疑心暗鬼に掛かり、
希望を見いだせず、嘆いているのかもしれない。
世の中の全てが同じものを目指して明るく生きていた時代には、
大人も堂々と自信を持って子供にもこうなのだと示せるが、それは
過去のこと。
そのことに、今は何より私達大人が気づかなければならない。
そして、子供達には、右へ倣いの教育よりも個々の可能性を引き延ばす
教育こそが望ましいのだろう。

過去を振り返り、あの時代は良かったと感傷に浸っても、何も変わ
れない。
なぜなら、過去は過去でしかないのだから。
私達は、間違えなく今を生きている。
だから、これほどまでに目まぐるしく時代が変化しても、柔軟に生きな
ければ生き抜けない。
それは、個人がより試されていく時代だ。
それら全てが、問いかけの時代なのだと思う。


コラムニスト●プロフィール
……………………………………
赤松亜美(あかまつあみ)
北海道在住

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