2009年12月15日火曜日

連載コラム252 from 北海道●日本映画を観るべし

時間があると、映画のビデオを鑑賞することが常々多い
私であるが、ここ暫くは、邦画をよく好む。
ハリウッド映画も含めて、映画業界にも不況の波は
少なからず及んでいるものの、近頃の日本映画は
不況も不景気もなんのその、全くもって元気だ。
その理由のひとつに、日本映画に素晴らしい作品が
多くなったからだと、私などは思う。

天才肌の三谷幸喜監督の作品も、これまでの作品は
勿論だし、「ザ・マジックアワー」なんて、完璧すぎる
くらい完璧な作品だ。
舞台セットも撮影も、計算され尽くしたあの映画は、
兎にも角にも、驚きと美しさと感動、それに笑いに満ちている。
映画こそ大衆娯楽作、夢を与えてくれるものだと
三谷監督の作品を見る度に、痛感させられる。
今年、映画館で上映された「ディア・ドクター」の監督、
西川美和さんも、あんなに味のある作品を世に送り出し
ながら、実はまだ若くて容姿端麗なのだから、そのことでも
驚きだ。
西川監督のデビュー作「蛇イチゴ」は、ブラックコメディな
作品ではあるものの、個人的にはとても好きな作品である。
そして、映画「ゆれる」では、家族の絆や絶望から再生を描く
「蛇イチゴ」とは全く違うシリアスドラマである。
これが、もの凄くいい。
人間のやりきれなさ、嫌悪感、嫉妬、絶望、冷酷さを深くえぐり、
最後には優しさで包み込む。
一度観たら、忘れられないほど、レベルの高い映画だ。
そんな西川監督は、映画の構想はいつも夢で見たことがヒントに
なるのだそうだ。
夢で見たことから、自分で脚本を編み出してしまうなんて、
スティーブン・キングみたいで、超すごい!
その他にも、松尾スズキが原作、監督を務めた「クワイエット
ルームにようこそ」も一押しの映画である。
これは、とある出来事によって精神科病棟に入院してしまう
主人公の葛藤と成長を描いた作品なのだが、実は私はこの映画を
観てから、急いで原作も読み、二度驚いたのだ。
原作者が監督な訳だから、原作に忠実な映画だったことも当然
なのだろうが、映画の出来栄えも最高だけど、原作の短編も
素晴らしくて、鳥肌がたった。
松尾スズキさんの文章には、独特の文脈の美しさがあって、
読んでいて、どんどん吸い込まれてしまうし、なんなの?
なんなのよぉ、この人って、私は何度も心の中で叫んでいた。
これも、今更なのだけど、多彩な松尾スズキさんは、
劇団「大人計画」の旗揚げ人物でもあるし、作品作り、演出、
俳優と、これまでも多くの分野で、活躍してきた訳だから、
当然なのだろう。
だけど、北海道に住んでいると、「大人計画」の芝居を観る
ことも、その才能の凄さに触れられることもまれである。
よほど、注意をはらっていないと、情報すら見落としてしまい
がちだ。
だから、私も遅ればせながら、今更その凄さに驚いた。
松尾さんには、これからも映画を是非つくってほしい。
彼の映画に触れたいなと心から思うからだ。
そして、彼の本ももっと読んでみたいです。
ちなみに、「クワイエットルームにようこそ」は、2006年の
芥川賞にもノミネートされている。
どういう理由で、賞に選ばれなかったのか解らないけれど、
個人的には、惜しい気持ちである。
こういう作品にこそ、賞を取ってほしいものだ。
本当に惜しい。
そして、同じく劇団「大人計画」で活躍する宮藤官九郎も、
もうずっとテレビにドラマに、映画にと活躍しているけれど、
彼主演の映画といえば、私なんかは「福耳」かなぁと思う。
もちろん、「クワイエットルーム」でも、味のある役所を
演じていたし、凄いなぁと思ったけれど、「福耳」は、
ファンタジックで、楽しくて、最後にはじーんとしてしまう。
宮藤官と、田中邦衛の絡みも最高に楽しい。
愛がある映画は、いいです。
人の心をちゃんと満たしてくれるから。
そして、この映画は、瀧川治水氏が監督。
三木聡監督の「ダメジン」も、はちゃめちゃでB級映画では
あるけれど、笑いの宝庫だ。
元気がない時、こんな映画を観たら、きっと救われる。
楽しくて、バカバカしずぎて、「これで、いいのだ」って
テンションを上げてくれるからだ。
きっと、こういうバカバカしい映画も、必要なのです。
そう思います、私は。

日本映画は、角川映画全盛期時代の後、確実に低迷していた
ように感じる。
どの作品にも、伝えたいことが難しくて伝わりにくかったり、
作品が尻切れトンボで、観客は悶々とした気持ちを抱えたまま
映画を見終わることが多かったからだ。
それが、2000年頃から、徐々に変わり出したように思う。
ドキュメンタリー映画も含め、日本映画は、年を追うごとに
良くなっていった。

いま、私が特に填っている映画は、「パッチギ!」だ。
「パッチギ!」と続編の「パッチギ!LOVE&PCACE」は、
セットで観れば、その感動もひとしおである。
このシリーズの監督、井筒和幸監督の昔の作品と比べても、
この「パッチギ!」シリーズは、ダントツに素晴らしい。
過去の時代、在日朝鮮人の人達の心情や葛藤、そこに存在した
偏見に晒されていたことや、家族愛、強さ、そして祖国への思い、
全てをこの映画で堪能できてしまう。
そういう意味でも、この映画は文化的な財産だ。
教科書では教わらなかった歴史の一ページが、この映画には
詰まっているからだ。

そして、今月の24日まで東京新国立劇場では、「パッチギ!」の
舞台が上演されている。
舞台の宣伝をテレビで目にしたことで、私はまた「パッチギ!」
の映画を観ていた。
主題歌の「イムジン河」を聴いて、もっと感傷的になった。

日本映画、とにかくオススメです。
いい映画に浸って、みんなで元気になりましょう。

コラムニスト●プロフィール
……………………………………
赤松亜美(あかまつあみ)
北海道在住

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