2009年11月15日日曜日

連載コラム250 from 北海道●映画・カムイ外伝

「カムイ外伝」が実写版の映画となって返ってきたが、
この作品、漫画「カムイ」になじみ深い人でも、十分に満足を与えてくれる作品だ。
「カムイ」と言えば、原作者は白木三平さんだが、私にとっては漫画で読んだ「カムイ」より「サスケ」の方がより印象深い。
子供の頃にテレビ漫画で親しんだ「サスケ」を欠かさず見ていたからだと思う。
「サスケ」も「カムイ」も子供向けにというよりは、アダルト向けだ。
忍者ものの時代劇漫画という設定も、テレビ漫画としては異質だが、抜け道のない過酷な状況で、主人公は追われ、闘い、裏切られ、孤独でありながらも、決して生きることを諦めない強さに心が打たれる。

思い返せば、私の憧れの始まりは白木さんの漫画が原点だったように思う。
「カムイ」や「サスケ」にそれでも生き抜こうする強い精神に感銘し、仕事人の梅安、ジャパンアクションクラブ全盛期の娯楽時代劇シリーズ、私は忍者や裏家業に生きる人々に、ますます強く惹かれるようになっていた。

ともあれ、「カムイ外伝」は、全ての役者らが300%の力を注いでいる、そんな風に感じるほどである。
主役の松山ケンイチは、クランクインした一月後、撮影中にケガに見舞われため、やむなくスタッフは解散している。
だが、それから五ヶ月後に再クランクインしてからは、酷暑の沖縄ロケを乗り切り、見事に映画は完成した。
スクリーンの中の松山ケンイチは、カムイそのものだ。
なんの違和感もない。
むしろ、見ているこちらが身震いするほど息もつけない名演技だ。
いや、名演技という言葉が相応しいかどうかも疑わしくなる。
彼らは、演技というより役そのもの。
だから、私は映画に引き込まれ、恐くなったのだろう。

残虐なシーンの連続に、見ていて思わず顔を背けてしまう観客もいたかもしれない。
しかし、この映画のメッセージは意外にシンプルだ。
逃げろ、そして生きろ、生き抜けだ。
監督の崔洋一氏は、つい先頃まで、自己を見つめることが極端に抽象的で観念的な時代には、闘うというよりは、何でも背を向けて避けてしまおうという空気があったけれど、いま時代の枠組みは大きく変わりつつある中で、みんなが逃げきれなくなってしまったし、自分たちとは全然関係ないと思っていた物事の中に、いつの間にか巻き込まれて、そうすると向き合うしかない。
それは「カムイ」の姿と重なる気がした。
だからこそ、逃げろと言いたいし、そのために生きろと言いたいとコメントしている。
確かに崔監督の言う通り、いまの時代だからこそ、「カムイ外伝」は人々に訴える力がある。

主体はあくまでもアナログにこだわり続けて、表現出来ない部分にだけ、CGを織り込んだそうだ。

この映画の見所は、何と言ってもカムイ・松山ケンイチのアクションと名演技だ。
だが、それに負けず劣らず全ての役者人に喝采を贈りたくなる。
スガル扮する小雪や、サヤカ役の大後寿々花は素晴らしいし、サヤカとカムイのツーショットでは、テレビドラマ「セクシーボイス アンド ロボ」の二人が江戸時代にタイムスリップした想像まで働いてしまう。
この二人の絡みはとても好きだなぁと思った。
とても好感が持てるし、大好きである。
小林薫も佐藤浩市も、そして渡宗のリーダー役の不動は伊藤英明が演じていたのだが、これが迫真の演技だった。
すんげー、こわー、これが正直な感想。
でも、すんごい恐いのに、かっこいいんですよね。
そこが素晴らしい。

で、この作品に出演していた世界的ダンサー森山開次さんは、何処に出ているのかと言うと、渡宗の一員、トベラという役所です。
狡猾そうな顔つきで、柔軟で美しい筋肉におおわれた身体で、見事な舞踊を披露します。
やはり踊っちゃいます。
素晴らしいです、素敵です。
もちろん、セリフもちゃんとあります。
見事に忍者役に填っている。
ブラボーです!

「カムイ外伝」、パワーに溢れてます。
パワー貰えます、映画を見逃したという方は、是非DVDで。
そんで、原作の「カムイ」と「カムイ外伝」も是非に。

コラムニスト●プロフィール
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赤松亜美(あかまつあみ)

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