2009年11月1日日曜日

連載コラム249 from 北海道●THIS IS IT

マイケル・ジャクソンが死んだというショッキングなニュースが
世界中を駆けめぐってから、早4ヶ月。
ついに、「THIS IS IT」の映画が公開された。

忘れもしない6月25日。
私はこの信じがたい訃報に耳を疑い、混乱と動揺の中で息を潜めて
ニュースに齧り付いた。
CNNは世界中のニュースを後回しにしても、マイケルの報道を
流し続けた。
イランの暴動やアフガニスタン情勢より、連日マイケルだった。
50歳という若さでの死。
ロンドンコンサートを数週間後に控えていた彼を想像しても
この死は未だに信じがたい。

世界中に生中継されたマイケルの追悼式では、彼の生を祝う会と
称したものの、その全容は全てが哀しみに満ちていた。
マライヤ、ライオネルリッチーが歌い、スティーヴィー・ワンダーが
「神は私達がマイケルを愛し必要とするより、もっとマイケルを必要
とした」といってから歌った時は、本当に堪らない気持ちになった。
ブルック・シールズは、涙を必死に堪えながら、マイケルとの
楽しかった思い出と彼の純粋で無垢な繊細な心に触れた。
そして、ジャーメインの「スマイル」。
マイケルが一番好きだったチャップリンの主題歌をジャーメインが
胸を詰まらせながら歌う姿には、苦しいほど哀しくなった。
アッシャーの歌。
ジャネットの傍らでパリスが発した言葉。
ステイプルズ・センターの会場内に参列した人々は元より、センターの
外に集まった沢山のファン、そして私同様にテレビの前で、パソコンの
画面で、マイケルの追悼式を見続けた世界中の人々のとてつもない
深い哀しみや絶望、嘆きを、この五感で感じてしまうようだった。
言うまでもないが、私はあの追悼式を見た時から数日間寝込んだ。
全ての気力が削がれ、哀しみの淵から這い上がることが出来なかった。
布団の中で幾日も過ごし、涙は枯れることなく、心はどん底だった。
なぜ、彼は死ななければならなかったのか・・・。
そのことだけが、頭の中でひたすら繰り返された。
食べる力も、何かに心を傾けることも憚られ、そうして私は
ようやく5日目になって、少しだけ冷静さを保てるようになった。
今でも、マイケルの死を思うと堪らなくなる。
それは、マイケルの純粋なファンなら、当然なのだろう。

私はマイケル世代に育ったひとりでもある。
テレビの深夜枠でMTVやベストヒットUSAが放送された
頃、リアルタイム
で、テレビに齧り付いたものだ。
マイケルの「スリラー」のミュージックビデオの凄さに度肝を抜かれ、
夢中になっていた。
追っかけではない。
熱烈なマイケル命と言い切れるほどの徹したファンではない。
だけれども、彼の歌に打ち所のないミュージックビデオに心から
夢中になったいちファンだった。
「ウィ・アー・ザ・ワールド」が配信され、その愛のある行動に涙
が溢れた。
そして、次の日にはレコード店へ走り、「ウィ・アー・ザ・ワールド」
のアルバムを手にした時、自分もこの企画に賛同できたことに
とても誇らしい気持ちになったものだ。

彼が生涯で自分の半生を書き綴った本では、彼の本音が余すところ無く
書かれている。
それが全てだ。
その本に書かれてあることが本当で、彼を中傷する全ては紛れもない
偽りである。
ファンだけは、そのことを知っている。
だが、世の中というのは、非道なものだ。
スターの階段を駆け上がれば駆け上がるほど、マスコミは彼を追い掛け
回し、あらぬ記事を書き立てて世間を騒がせ、彼を陥れようとした。
それらには、嫉妬ややっかみ、偏見といった醜い感情がみなぎっている。

映画「THIS IS IT」は、マイケルとツアーに関係者全ての人々が、
このツアーにどれほど力を注いでいたかを知る貴重なドキュメンタリー
映画だ。
だが、スクリーンから伝わるマイケルの、関係者の思いが篤いだけに、
客席のこちら側は、苦しくなる。
辛くなる。
この人たちは、いったいどれほどこのツアーに掛けていたことだろ
うかと。
マイケル自身は元より、選ばれたダンサー達。
コーラス隊。
ミュージシャン。
舞台関係者。
衣装係。
大道具係。
そして、「THIS IS IT」の監督でもあるクリエイティブパー
トナー。
そして、マイケルの才能を引き出し、友だったクインシー・ジョー
ンズも。
そして・・。

マイケルの訃報によって、私達がもっとも憎むべきことがあるとしたら、
それは、ハリウッドに蔓延するセレブ達専属の医師と名乗る人たちだ。
彼らは、医師免許を取得しながら、セレブ達の金にたかる寄生虫で
もある。
そういう状況が、今回の哀しい事件を引き起こしてしまったのだろう。
マイケルは薬物中毒ではなかった。
その彼に、睡眠薬を与え、過剰摂取させて死に至らしめた。

マイケルはこのツアーで、環境破壊を4年間で食い止めようという
メッセージまで伝えようとしていた。
彼の愛に感謝だ。
マイケルと同じ時代に生き、マイケルの歌と共に過ごした日々を
幸せに思う。
誇りに思う。
マイケル、ありがとう。
私もあなたを愛してます、永遠に。

コラムニスト●プロフィール
……………………………………
赤松亜美(あかまつあみ)
北海道在住

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