2010年2月2日火曜日

連載コラム255 from 北海道●沖縄 普天間移設問題

米軍普天間飛行場の移設受け入れの是非を巡って、
沖縄県・名護市長選は新人で反対派の稲嶺進氏が
現職の市長を破っての初当選をした。

第二次世界大戦で、日本で唯一地上戦を展開した沖縄は、
終戦後も米軍が占拠し、27年後の72年にようやく
復帰している。

沖縄での地上戦は、惨たらしい有り様だった。
沖縄諸島に上陸した米軍と日本軍の戦いに民間人も巻き
込まれ、大量自決など、その数は公式に発表されている
ものより、ずっと多いとも伝わる。
米軍に捕まり、辱めを受ける恐怖から、親や兄弟を虐殺
してしまった人々は、いまもその十字架を背負い続けて
生きているし、日本に復帰した今でも、基地や飛行する
軍用機に恐怖や不安を掻き立てられての生活は、どれほ
どのものか想像するだけで心が重くなる。

日米安保条約に基づき、武器を放棄した日本がアメリカ
に守られ、軍への基地提供やその他諸々も、政府が率先
して行ってきたことは、沖縄県民以外の日本人にとって
は、ある意味で安心と安全が保証され、心地よい選択だ
ったと思うが、その間、沖縄では、基地が方々に拡大し、
フェンスが張り巡らされ、低空飛行の軍用機の墜落や、
日常的に悩まされる騒音公害、そして米兵による少女暴
行事件など、基地の存在によって、暮らしが脅かされる
不安といつも闘ってきた。

とはいっても、悪い側面ばかりではない。
沖縄南国特有の風土に基地があることで、ハイカラな音
楽やダンスが若者にも浸透し、今活躍している沖縄育ち
のミュージシャンや芸能人には、独特の深い感性を持つ
存在感溢れる人材も輩出されているからだ。

だとしても、沖縄への負担はそろそろ軽減するべきだろう。
名護市長選の裏話として、今回に限らず米軍飛行場への
反対と容認がこれまででもずっと長い間家族間でも繰り
広げられ、その是非を巡って、家族が断絶するケースは
珍しくなかったという。
建設が容認されれば、政府から多額の保証金が落ち、
そして建設を通して仕事も入るが、実際はその仕事も
一時的で、多額の保証金も平等に分配されることはない。
町の過疎化は進み、寂れた商店やシャッター通りが、
名護市でも軒並み目立つ有り様である。

飛行場が建設されれば、普天間の海への汚染も当然懸念
されるが、まぬがれない海の環境破壊を考えても、
飛行場は作られるべきではないのだ。

鳩山さんが、選挙で普天間問題にNOを提言してから、
ずっと考えていたことがある。
私はそれまで、憲法9条の保存に賛成だった。
平和をこの国から押し広げる意味でも、この憲法はどう
あっても守るべきだと思っていたからだ。
けれども、沖縄問題と絡めてこの9条について考えると、
些か疑問も生じてくる。
米軍基地のフェンスでどこもかしこも張り巡らされた
沖縄にとっては、自分たちの島は今も続く占領下であり、
9条の存在こそが、沖縄ばかりに負担を強いていると
感じてはいないだろうか?
そして今回、普天間に飛行場を移設しないと決めた名護
市民に、沖縄県民に、希望を持たせた政府の責任は重い。
普天間に飛行場が建設できない場合、現実的に考えて、
それは沖縄のどの場所でも無理である。
普天間から沖合に建設する案も俄に浮上しているが、
そんな行為が実現するならば、公約などないに等しい。
大阪府の橋本知事が、関西空港を普天間の代替えにとい
う案を提議した時は、その心意気だけで凄いと思ったが、
それも実際問題、国境沿いに展開しなれば意味がないと
いうことで、関空の代替え案も消えているのだろう。
でも、沖縄以外、関空以外で、米軍の基地や飛行場を
喜んで受け入れる地域など、日本のどの場所を探したっ
て見つからないはずだ。
グアム移設の問題だって、浮上しただけで、やっぱり
現実的にはありえない話である。
こうなれば、益々米軍の存在は今もって日本に必要なの
かと、頭をもたげたくなる。
沖縄県民は、米兵が駐留しているだけで、自分たちの
暮らしが脅かされる心配はあっても、基地に守られて
いる自覚などない。
それならば、いっその事、安保条約も憲法9条も見直し、
米軍には全て日本から撤退して頂いて、それに変わるもの
として、自衛隊を強化し、自ら自国を守る術をつくり出す
べきである。
自衛隊が軍隊に変わろうとも、戦争の苦しみを知っている
我々は、きっと国際貢献も良い形で、軍が使われていくはずだ。
苦い記憶が、抑止力となるはずなのだから。

参議院予算委員会が開かれる国会で、鳩山さんは、普天間
移設問題で、今更「ゼロベースで」などとお茶を濁すような
発言をした。
政府や民主党内で、意見が割れようとも、今の政権は、
沖縄のことを真っ先にマニフェストに掲げていたはずである。
沖縄県民の痛みを知っていたからこそ、そのことを公約に
掲げたのだろうし、彼らに夢と希望を与え、政権を握って
から、出来ませんでしたではすまない話だ。

民主党が、この先果たせなかった公約があったとしても、
この沖縄問題に関しては、別である。
沖縄問題とは、そういう緩い話ではないからだ。
そのことを、今の政府にも、鳩山首相にも解って欲しい。


コラムニスト●プロフィール
……………………………………
赤松亜美(あかまつあみ)
北海道在住

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