2010年2月15日月曜日

連載コラム138 from 台湾

先月、警視庁が「2009年度自殺者数」を発表。
その数、なんと3万2753人で、
前年より504人増加していた。

また、12年連続して年間3万人を超えたと報告され、
このうち2万3406人が男性、女性は1万にも
満たないとされている。

事故に見せかけた自殺などもあるだろうから
実際の数は、4万に近いのではないかと
恐ろしい想像をしてしまう。

日本では、1日に約100人が自ら命を絶つ。
毎日、100人が死に追い込められていく。

平和大国だとされる日本だが、
まるで戦場のようである。

原因は果たして不況だけか
警視庁は月別の自殺者数も発表しており、
それによると1月から8月まで前年を上回るペースで
増加。年度末とその直後である3月から5月までは
毎月3千人が自殺したという。

一昨年の、いわゆるリーマンショック直後にも
一月で3千人自殺しているという背景から、

「不況と自殺は比例する」

と言われるようになっている。

しかし、果たして不況だけが原因なのだろうか。

事業が上手く行かなくなる、借金が重なる、
リストラされる。
そんな不況は過去にもあった。

「生きていればなんとかなる」と歯を食いしばり
頑張るという人は今や少数派であり、
大抵の人は自殺を選んでしまう。
そういうことなのだろうか。

増加する精神疾患者
厚生省が昨年夏に発表した内容によると、
「仕事のストレスが原因で精神疾患となった」と、
2008年に労災認定を申請した人は927人だったそう。

うち269人が認められたという。

「鬱」「アダルト・チルドレン」「統合失調症」など、
精神疾病に対する差別は年々減ってきているが、
労災が申請できる、企業の中においては
まだまだタブー視されている。

セクハラだのモラハラだのニュースになるが、
特に大企業とされる会社の人間関係や仕来りなどは
何一つ変わってないのが現状なのである。

それでも「仕事のストレスで鬱になった」などと申請
するということは、職を失う覚悟でか、
すでに失業した人なのだろう。

実際に「鬱」の人であっても、精神科に行かぬ人は多い。

風邪をひいても、体調が悪くても、仕事を最優先させ
病院に行かぬのが日本人である。

隠れ鬱の人は山ほどいる。

しかも、鬱は「誰の目からも」鬱だと分かる、
最も状態が悪い時は自殺はしない。
自殺願望はあるのだが、それずら行動に移せぬほど
気力がないからである。

鬱になりかけた時、治りかけの時が一番危ないのだ。

もともと「鬱」を発症していた人が、新聞で「不景気」だと
あおられ、メディアでもリストラだとあおられ、
悲観し「思わず」命を絶ってしまうケースも
とても多いのではないだろうか。

自殺は精神病と大きく関係
多くの人々が精神病を発症している現代の日本。

遺伝性も精神病疾病もあるのも事実だが、
国民の心を病ませてしまう、
日本はそんな恐ろしい国になってしまったのかもしれない。

そして、病んだ心を治してくれるシステムや
救いの手が差し伸べられないのも事実。

一般社会人は「大丈夫、大丈夫」と仕事を守り、
一方で、公務員は「鬱」だと嘘をつき有給扱いにしてもらう。

この国は、最も正しく生きている人に対して、
むごい仕返ししかしない、酷い国なのである。

自分の将来に、日本での未来に悲観し、
自らの命を絶って行く。

彼らの気持ちが私にはよく分かる。



写真は台北市の公園で咲いていた桜。
日を追うごとに気温が上がっている台北ではもう桜が咲き乱れています。


コラムニスト●プロフィール
…………………………………
岩城 えり(いわき えり)
1971年12月東京生
オーストラリアで学生時代を過ごし
アラブ首長国連邦・シンガポールで就職
結婚し帰国したものの夫の転勤のためすぐに渡米
2005年12月より台湾在住

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