2010年5月23日日曜日

連載コラム262 from 北海道●素敵なコラム

野坂昭如さんのコラムが好きだ。
某全国紙に掲載されるコラムのことだけど、野坂さんの文にいつも
グッとくる。
野坂さんは、体調を崩されてから、奥さまの手を借りて口述筆記で
原稿を仕上げるとのこと。
以前「徹子の部屋」に、野坂さんの奥さまが出演された時に、そん
なことを言っていた。
友人と話していた時に、ふと野坂さんのコラムの話になった。
この友人は、私と同じ新聞を購読している。
「うまいよねぇ~、あのコラムは凄い!」と友人は絶賛した。
コラムを読んで、野坂さんのファンになったという友人と二人で、
この話題ですっかり盛り上がった。
読んで、グッとくる文章には、魂を感じる。
それを言霊の力という人もいるけれど、そんな魂の力が働いている
ように思えてならない。
するすると紡いだ文章であっても、そこにこめるかこめないかで
は、伝える力も違ってくるのだろう。
もちろん、プロの作家としての野坂さんの力量も当然のこと。
でも、それだけではないのだろう、きっと。

学生の頃は、佐藤愛子さんのエッセイをよく読んだ。
面白い話、びっくりする話に交えて、激怒した話も多い佐藤愛子さ
んのエッセイは、読んでいてとても清々しい。
歯に衣着せぬ物言いに、思わず読んでいるこちらも、「そうそう」
と相槌を打ってしまう。
佐藤愛子さんのエッセイを読むと、元気になる。
力が漲り、俄然ファイトが湧く。
もう、大ファンだ。
エッセイなら佐藤愛子に限ると、この頃の私は、愛子さんの本がと
にかく好きだった。

高校生の時、偶然にも演劇部に入部したのがきっかけで、よく戯曲
を読むようになったが、その当時の顧問の先生が、新劇派だったこ
とと、勉強会という名目で、たびたび芝居や映画に部員のみんなを
連れて行ってくれたので、私の読書の幅もこの時から一気に広がっ
たように思う。
それまで見たこともない芝居に、とても魅了された。
芝居を見た後で、脚本まで購入して、場面を思い出しながらセリフ
を目で追うが、これが酷く苦戦する。
元来、言葉遊びのキャッチボールばかりが続く新劇の芝居は、そん
なに解りやすいものではない。
意味不明のセリフのオンパレードなのだから。
でも、それでも芝居の中で問いたいこと、訴えたいことはやんわり
と伝わってきた。
つかこうへいさんの「蒲田行進曲」の映画をみんなで観に行ったの
も、ちょうどこの頃。
「蒲田行進曲」は、見事な素晴らしい映画だった。
展開が早くて、ドキドキして、直球で、何よりくさいのがとてもい
いのです。
それからは、つかさんの本を買いあさった。
蒲田行進曲は当然のこと、他の戯曲やエッセイもたくさん読んだ。
読んで、時々笑い、時々わからなくて無言になることもあった。
でも、大好きだった。
知らない世界に触れているだけで、解らなくても楽しくて夢中だっ
たからだ。

最近、野坂さんのコラムと同じく、地方紙のコラムを読むのが楽し
みでもある。
私が住む地域の地方紙に、地域住民のコラムが掲載されているからだ。
彼らは日替わりに、身近で楽しい話題を書くことが多い。
小さな地元新聞なので、執筆家の方々はみな素人だ。
私と同じく、書く楽しみが高じてコラムを掲載されている人もいる
し、何か別な趣味や職業が高じて、綴っている人もいる。
何れにしても、この地域ではどの新聞よりも一番好まれて、購読者
も多い。
地域に密着した記事が多く、読者からの投稿、俳句や短歌、詩や川
柳の掲載欄の扱いを眺めると、この地域重視の目線が、地元住民か
ら愛される由縁なのだろうと思った。
その地方紙のコラムに、グッとくる文を書く人がいる。
ひとりは、整形外科病院のお医者さま。
ひとりは、安平町という小さな町に在住の男性。
そして、もうひとりは、自然保護区のレンジャーをされている女性
である。
それぞれに、個性のある文章は、どれも味があり、心に染みてくる。
特に、レンジャーをされてる女性、篠原さんという方のコラムを読
むのが、いつも楽しみだ。
静かで、温かく、言葉の一つひとつが、コトリと音を立てて心に落
ちてくる。
読む人の心に、明かりを灯す、そんな感じだ。

心に染みる文章は、読んだ後も、心に留まる。
私の記憶の引き出しに、しっかりとインプットされるからだ。
そんな文章を、自分も書けたらと思う。
なんて、言ったら愛子さんに檄を飛ばされるだろうか。
「しっかりしなさい。ぼやく暇があったら励みなさい。邁進のみ」と。


コラムニスト●プロフィール
……………………………………
赤松亜美(あかまつあみ)
北海道在住

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