2010年3月1日月曜日

連載コラム139 from 台湾

昨年8月28日の夕方、
カリフォルニア州サンディエゴ郊外で
痛ましい交通事故が発生。
大破・炎上した車に乗っていた4人全員が即死した。

車を運転していた男性は高速パトロール隊の警官で
事故直前に「車がおかしい」と911通報していた。
何と、「アクセルが戻らない」というのである。

「あぁ、もうだめだ!」という言葉と共に追突する激音、
叫び声が入っている911コールは全米に公開された。

その後、事故はこれだけではなく、過去5年に同様の事故が
9件起こっており、13人が亡くなっていることが発覚。
トヨタの大規模リコールを引き起こすことになった。

バッシングされても仕方ない事態であるが、
ここに来て、何かがおかしいと感じる人が増えてきている。

スムーズでなかったトヨタの対応
事故を引き起こした「アクセルが戻らない」という現象は
運転席のフロアマットが引っかかってしまい、
アクセル・ペダルが引っかかってしまうことが原因。

あまりにも単純な原因であるため当初、トヨタは
リコールを躊躇してしまった。
なぜならば、問題のレクサスは400万台ほど
販売されており、全て直すとなると、
とてつもないお金がかかるためだ。

しかし、ユーザーの責任にすることも出来ず、
911と共に事故が大々的に報じられたことから
メディアもコントロールできることは不可能となり
世間から隠すこともできなくなり、
結果、大量リコールとなったわけである。

最初のトヨタの対応は決してスムーズではなかったのだ。

責任は日本へ
アメリカでは、大きな事件が起きると
国民に変わり議員が疑問、質問を投げかけ、
追求する公聴会というものを行う。

生中継されるため国民の感心も高いのだが、
この公聴会で名を売り込もうとする議員の絶好の場と
なっており、どちらかというと、暴力のない
「公開リンチ」のようなものになっている。

今回のリコールでトヨタももちろん公聴会に呼ばれた。

リコールの遅れについて米議院から追求され、
「リコールの権限は誰に?」「誰に責任がある」
と問いつめられたトヨタ・アメリカの社長は、
「日本」と断言。

日本の社長が全責任を負う形となった。

会社の体制もあるだろうから、何とも言えないが
「日本」になすりつけるのは、あまりにも酷い。

議員に追求されたということもあり政治的な悪意まで
感じずにはいられない。

トヨタを製造するのはアメリカ人
トヨタ・バッシングがヒートアップする中、
GMが「トヨタに乗っている人が、GMに乗り換えるなら
1000ドルのキャッシュバックや、ゼロ金利で購入できるよう
優遇します!」というキャンペーンをスタート。

リコール車だけでなく、全てのトヨタ車の持ち主に対しての
キャンペーンだけに、発表と同時に問い合わせが殺到した。

GMは昨年倒産しており、今は政府がほとんどの株を所有。
実質アメリカ政府の会社である。

あまりにもせこい展開にアメリカ国民も
「なにかおかしいのでは」と感じ始めた。

アメリカで販売されるトヨタ車を生産しているのは
アメリカにあるトヨタの工場である。

工場で働くのはアメリカ人。
多くの雇用を生んでいるし、多くの税金もアメリカに入るし、
アメリカのための会社なのである。

ここまでやって、オバマ政権はやっと、「恩着せがましく」
トヨタをかばいだした。

それはそうだろう。トヨタがこけたらアメリカの失業率は上がり
関連企業も倒産するのは目に見えているのだから。

日本の経財にも打撃
23日トヨタ自動車の社長が渡米し
公聴会に出席した。

相変わらず弁護を許さず、YESかNOかばかり追求するもので
違和感が残る公聴会になり、さすがのアメリカのメディアも
「納得できない」という意見だけでなく、
「誠意は伝わった」「これからに期待」というリーズナブルな意見を
報じるようになってきた。

刑事問題にも発展しそうだというトヨタ騒動。

日本でも多くの雇用を抱え、関連会社や取引会社もあり
何よりも多くの税金を収めているトヨタなだけに
政府のサポートを期待しつつ、
今後、どうなるのかを注意深く見守っていきたい。



写真はパラオの美しい空です。


コラムニスト●プロフィール
…………………………………
岩城 えり(いわき えり)
1971年12月東京生
オーストラリアで学生時代を過ごし
アラブ首長国連邦・シンガポールで就職
結婚し帰国したものの夫の転勤のためすぐに渡米
2005年12月より台湾在住

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