2011年10月1日土曜日

連載コラム295 from北海道●この国に思うこと

「改革派」でも知られる官僚、古賀茂明さんが、とうとう経産省を
退職した。
なにかこのニュースに、私自身は本当にがっかりさせられてしまった。
古賀さんの退職話は、すでに今年の6月から浮上していて、霞ヶ関
の腐った体質を相手に、ひとり猛然と闘う古賀さんに、心を熱くさ
せられた。
負けないで、とひそかにエールをおくった人も多かったと思う。
私たち国民にとって、国の中枢、霞ヶ関のことも、政治の実体も、
本当はひどく解りにくい。
国民生活と直結している増税や円高も、回転ドアのようにコロコロ
変わる政権うんたらも、私たちの生活とはあまりにもかけ離れてい
て、なにをされようが、あきらめモードにおちいりやすいけれど、
本当はそういう国民の体質こそが、国の甘えを増長させているのだろう。
震災でも美徳と称賛された、黙って耐えぬく日本人姿勢は、まるで
絶滅危惧種の生物のようで、だったら、霞ヶ関や悪徳政治家たち
は、繁殖力や生命力の高い外来種、もしくはやたらと順応性にたけ
ている害虫というところだろうか。

古賀さんの本を読んでゾッとしたのは、日本は私たち国民が思って
いる以上に、危機的状況にあるということだ。
私たちは、この場におよんで震災復興のための増税案が早急に決め
られようとしているさなかも、東電の賠償がなんだかうやむやにな
りつつある中でも、福島の除染もしてない癖に緊急時避難準備指定
区域の身勝手な解除令がされた今も、またしても怒りもせずに、
黙って受け入れてしまうのだろうか。

政府はいう。
これは、1000年に一度の震災だと。
未来の子ども達のために、借金を先送りしないためにも、今ここで
増税が必要なのだと。
それで、あっちにもこっちにも微々たる増税をかかげたがる。
それをこれからは、毎年ちょっとずつ小出しに国民に強いてくる。
でも、古賀さんの本によると、実際に増税だけでまかなおうとする
と、消費税なら30%は必要だという。
なぜなら、国と地方を合わせたこの国の借金総額は1000兆円を
突破する勢いだからだ。
つまり、国民ひとりあたり780万円もの借金を背負っているのだ。
しかし、国が疲弊しているこんな時に、増税をすれば、国民生活は
冷え込むだけだ。
切り崩すところは、他にもあるはずなのに、知恵を出したがらない。
増税は、いわゆる国民に対する脅しである。
復興のためだから、国民は協力しろよ、しないとこの国は破綻する
よと言っているのだ。
そして、さっさと増税した暁には、官僚たちは、自分たちの身分や
待遇はこれまでと変わらず、増税の一部も自分たちの保障に使うか
ら、なんてことになる。
だからこそ、まずは増税ありきという政府に、私たちは疑いを持た
なければならない。
国民に増税を強いるなら、官僚も公務員も政治家だって、痛み分け
が必要なのだ。
財務省だって、ためこんでいる国債を吐き出したがらない癖に、増
税だけはしっかりとやりたがる。
こういう時に使うんだろう? それは、と言っても、そういう頭は
鼻っからない。
使ってしまって、何かあったら困るじゃないか。
何かの時って、今じゃないの?と思っても、金を溜め込んで握って
いることこそ、更には増税こそが財務省の役割だと信じているからだ。
実際、与党のなかでも、やっと手放すJT株の売却に踏み切ろうと
しても、増税枠が定まらない。
前原さんは、9兆2000億円だといい、政府は株を売却するにし
たって、それは見込みだから最初に決めたとおり11兆2000億
円だと言っている。
街角インタビューでは、「復興のためだもの。仕方ないよね」とい
う声が多い。
助け合うことが悪いというのではない。
私たち国民は、この悪徳商法のような国のやり方に、もっと注意を
はらう必要があるということなのだ。
なぜ、増税をかかげながら、朝霞のような公務員宿舎が建設されな
ければならないのか?
蓮舫さんのテレビインタビューを聞いたけれど、まったく理解不能
である。
お得意の煙に巻くような説明は、官僚の入れ知恵なのだろう。
朝霞の宿舎を擁護する蓮舫さんに冷ややかな気持ちになる。
やっぱり事業仕分けなんて、ウソっぱちだったと。

国会で、経済産業大臣の枝野さんが、古賀さんが辞職したことをな
んども野党に追及されていた。
枝野さんの冷い答弁には、本当にがっかりさせられた。
そのうえ、公安・拉致・消費者大臣の山岡さんはマルチ商法の推進
議員だという。
もう、愕然とする。
野田政権は、霞ヶ関と取引したのだ。
どこの省も、自分達のことしか考えていない。
国民の方を向いて仕事などしていない。
この途方もない震災を抱え、そのうえ台風で和歌山や奈良の山村が
むごい状態にさらされたというのに、まだ自分たちの利権にか興味
がない。

ただ、国会の答弁で「みんなの党」に、かすかな希望を感じた。
江田さんや小野さんの質疑に、ぜんぶが腐っているわけではないん
だと思ったからだ。
それに、代表の渡辺さんは、公務員改革で古賀さんを唯一抜擢して
使った大臣だ。
小さな政党だけど、この党を中心に、若手を集めて、ついでに古賀
さんも呼んで、この国の仕組みを根こそぎ変えてくれないだろうか
という気持ちになる。

古賀さんは、テレビで言っていた。
「また、公務員改革をやりたくなったら、ぜひ呼んでほしい」と。
古賀さんは、あきらめていないのだ。
いつか必ず、この国が変わることを信じているのだろう。

福島県いわき市の「スパリゾートハワイアンズ」が、長い休業を終
えて営業を再開する。
踊るフラガールの笑顔に、力をもらうようだった。
南相馬市の産婦人科医院では、出産した若い母親と小さな命に、勇
気を感じていた。

この国の未来がどこへいくのか、すべては私たち国民の姿勢にか
かっている。
あきらめないこと。
そして、変えたいと思う姿勢こそが、私たち一人ひとりには必要な
のだと思う。


コラムニスト●プロフィール
……………………………………
赤松亜美(あかまつあみ)
北海道在住

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