2011年10月17日月曜日

連載コラム296 from北海道●スティーブ・ジョブス氏を偲んで

私にとって、アップルのコンピューターは、なくてはならないもの
の一つ。
生まれてはじめてパソコンという物に触れた時も、アップルの製品
だった。
全てが感動だった。
なんて、かわいらしい!!
アップルのコンピューターは、その言葉に尽きる製品なのだと思う。
なぜなら、ゴミ箱をふくむアイコンの一つひとつに、制作者の遊び
心が詰まっているからだ。
パソコンのノーハウを一個も知らず、偶然習いに行った先であてが
われたコンピューターが、アップルの製品だったことも、私にとっ
ては運がよかった。
その時の講師の先生達は、よく授業の中でアップルのコンピュー
ターを絶賛していた。
いま思い返しても、微笑ましいぐらいに、熱烈にアップルのコン
ピューターを賛美していたから、彼らは間違いなく、アップル派の
人々だ。
「この受講が終わって、もしもパソコンを買うことがあったなら、
ぜひアップルのコンピューターを買いましょう」
これは洗脳ではなく、先生達が心から良いと思うことを、私達に推
し進めていただけなのだ。
そして、そんな先生達の意見に、私は素直に賛同した一人にすぎない。

であるからして、私の初の専用のコンピューターは、パフォーマだった。
他の機種など、鼻っから眼中にはない。
スケルトンの愛くるしい図体のマックが登場すれば、ここぞとばか
りに乗り換え、今ではマックも4台目ではあるが、しかし、まんべ
んなく使いこなしているかというと、苦笑いして、首を横にふるし
かないだろう。
私は、マックユーザーとして、たぶん相当もったいない使い方をし
ている。
もっと、よくばりにいろんなことが出来るはずなのに、私のマック
は、使用者の体たらくな行いゆえに、宝の持ち腐れなのだ。
それでも、アップルの製品は、私にとってステータスでもある。
そして、そうあり続けたいと思う自分を、どこか誇らしく感じてい
るのだ。

マックのパソコンを使っていると、たまにチクリと嫌みを言われる
こともある。
いぜん務めていた職場でも、私がマックユーザーだと知った先輩上
司は、「あんなのはダメだ。アップルは、いずれつぶれるに決まっ
ている。やめたほうがいい」と言った。
実は、こういうのは、一度や二度じゃないのだが、なんで、他の機
種を使う人達は、マックユーザーを目のかたきみたいにするのだろ
うとよく思ったものだ。

去年、iPadが発売された時、それまでパソコンになんの興味
も示さなかった私の母が、珍しく私にうったえた。
「あれって凄いねー!お母さんも、あれが欲しい!」
母は、ページを捲るように小説や文章が読めてしまうiPadに
心底おどろいたらしい。
子供のように、ワクワクして、「ほしい、ほしい」としきりに訴え
ていた。
私の実家で、パソコンを使っているのは父のみである。
父にとってパソコンは、唯一母に威張れるアイテムだから、母に使
い方を教えて、一緒に楽しもうという発想は、全くないわけで、母
がその父を押しのけてスイスイとパソコンを使うようなことになっ
てしまえば、夫婦間の火種が増えて、険悪になるだけだからと、母
はパソコンを覚えることをあきらめてしまった。
まったく呆れてしまうほど、心の狭い父親である。
だから、この時も、「iPadがほしい!」と訴えたわりには、
けっきょくのところ諦め、母は健気にも父を立てて、家の中に波風
を立てないようにした。
父が、もっとおおらかな性格で、夫婦ふたりでパソコンも覚えて楽
しむことが出来たなら、どんなにいいだろうと娘の私は思うけれ
ど、今のところその可能性はゼロに近いから、これも仕方のないこ
となのかもしれない。
娘の私なんぞは、なんてくだらない威厳なんだと、父を冷めた目で
見てしまうけれど。

それはそうとして、iPhone4Sが発表された翌日、まさかス
テーブ・ジョブス氏の訃報が飛び込んでくるとは、夢にも思わなかった。
体調が思わしくなかったことは、よくよく解っていたけれど、それ
でも彼の死を想像したこともなかったし、それは、まだ先のことの
ように感じていたからだ。
彼は、素晴らしい発明家だった。
ただの発明家ではない。
芸術の域をも超える発明家だ。
彼が世の中に送り出した製品は、どれもがびっくりするような驚き
と感動に満ちている。
そして、美しい限り。
細部にまで、制作者のこだわりが詰め込まれていた。
彼の死を悼んで、iPhone4Sの予約や発売に、店に長蛇の列が
出来た。
彼の最後の作品を自分も手にしたい。
そんなユーザー達の気持ちの表れなのだろう。
だって、私ですら、ジョブス氏を悼んで、そんな気持ちなのだから。

願わくば、これからもアップル社は、ステーブ・ジョブス氏の精神
を受け継いでほしい。
そんな気持ちになる。

人生は短い。
他人の人生を生きるな。
ハングリーであれ、クレイジーであれ。

YouTubeを見ながら、ジョブス氏の言葉を今は心に刻みたい。



コラムニスト●プロフィール
……………………………………
赤松亜美(あかまつあみ)
北海道在住

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