2012年5月15日火曜日

連載コラム192



日本のお笑い芸人がマラソンの楽しさに目覚め
オリンピック代表を狙うほどハマりこんだ。


しかしマラソン大国日本ではオリンピック枠に
入りこむことは至難の技。
そこでその芸人はマラソンがそれほどポピュラーでなく
弱い他国へと目を向けた。


そして、日本国籍を捨て、その他国の国民となり
オリンピックへのチケットを手に入れた。


日本のマスコミは連日のように彼のことを報じ、
その国のマラソン選手にもインタビューを行った。


この騒ぎを聞きつけたオリンピック委員会は
彼が代表になることは「規定に反するのでは」と懸念。


結局、彼のオリンピック代表は取り消されてしまった。


日本のマスコミが鍵
これはいわゆる猫ひろしという芸名で活動する男性の
五輪出場取り消しである。


彼はマラソンで五輪を目指してカンボジア国籍を取得。
しかし日本のマスコミが、


「本当にカンボジア代表として出て良いのか」
「出られなかったカンボジアのマラソン選手へのインタビュー」


などを連日のように報道。
論議を巻き起こし、最初は歓迎ムードだったカンボジア人たちも


「金に糸目をつけない汚い事件だ」


と思うようになっていったようだ。


そして、この事を知ったIAAFが調査に乗り出し
「国籍変更1年未満の選手は、国籍の取得から連続して最低
1年はその国に居住していないければなない」
という規定に反していると指摘。


カンボジアの五輪委員会は
「彼は2009年以降カンボジアに住んでおり、
今回の五輪のためだけにわが国の国籍を取得したわけではない」
と説明したが、IAAFは「規定は規定」としてこれをはねつけたのだ。


日本人嫌いな日本人
今回、日本のマスコミが彼をバッシングした理由は
金で他の国内選手辞退させたこと、そして、
「五輪では、ゴールしたときニャーと言う」など
オリンピックの精神を馬鹿にしたことにあるだろう。


五輪に出るため日本国籍をとる外国人もいるのだが
そちらの方は、メダルを狙える選手だからか、
はたまた外国人だからか、暖かく応援する。


日本人は海外で日本人を嫌う、めずらしい人種だ。


華僑や欧米人などは、海外で自国の人に出会うと
とても友好的に接し、応援するものだが、日本人は違う。


海外ではなるべく日本人とは接触したがらず、
帰国後も「いかに自分は日本人のいない場所で、
外国人ばかりの中で暮らしか」を自慢気に話す。


日本人は海外で日本人にあうと激しい嫌悪感を抱くのである。


今回の猫バッシングも、そんな残念な日本人精神が奥底にあるように
思えてならない。


外国人のリアクション
今回のこの一連の出来事をどう思うか、
外国人の友人に聞いてみたところ、大半が「問題ないのでは」という
意見を持っていた。


日本人びいきというわけではないが、
「自分の国にも海外からやってきて代表を狙うため
国籍を取得する選手がいる」というのがその理由だ。


オリンピックは、それだアスリートにとって特別な祭典であり
それを尊重してもよいのではないかと言うのである。


こんなにも日本のマスコミがバッシング報道したのは
何か金銭が絡んでいたからではないかという意見を持つ者もいた。


猫氏は日本国籍に戻るだろう、勝手な人間だと伝えていたマスコミ。


しかし、会見を開いた猫氏は
「カンボジア代表として次のオリンピックを目指す」
と明言し、今度も頑張ると意欲を示した。


また4年後、同様のことが起こらないか、見ものである。

写真は、台湾独特の珍しい木です。










コラムニスト●プロフィール
…………………………………
岩城 えり(いわき えり)
1971年12月東京生
オーストラリアで学生時代を過ごし
アラブ首長国連邦・シンガポールで就職
結婚し帰国したものの夫の転勤のためすぐに渡米
2005年12月より台湾在住 from 台湾 from 台湾

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