2012年2月16日木曜日

連載コラム304 from 北海道●カーネーション

昨年10月から始まったNHK朝の連続テレビ小説「カーネー
ション」は、とにもかくにも元気いっぱいなドラマだ。
初回放送から、ヒロイン小原糸子のパワーは全開で、ヒロインを取
り巻く出演者も文句なしに凄い。
大正生まれの女性なのに、夢をあきらめず、夢に向かってひたすら
頑張り生きぬく姿が何より魅力的である。
舞台は、大阪の岸和田。
岸和田といえば、やっぱり「だんじり」なのだろう。
テンポのいい、巻き舌の大阪弁が、このドラマのもう一つの魅力な
のだと思う。
あの時代に、自分の好きなことをあきらめず、夢に向かって道を切
り開いていく糸子に、感動を覚える。
戦争の暗い影に巻き込まれ、夫や親しい友人の徴兵や死、また大切
な家族の死に直面しても、糸子はその度に、立ち上がる。
心を奮い立たせ、また立ち上がり、また頑張り抜くのだ。
自分の心に正直に生きるヒロインに共感を覚える。
それは、道ならぬ恋に胸を焦がした時も同じだった。
糸子は、けっして自分に嘘はつかない。
嘘はつかないけれど、恋をしている時の糸子は、美しくて、素敵だった。


私は、この朝ドラを、長いことずっと好んで見ている。
記憶に残る忘れがたいドラマは、これまでも沢山あった。
「はね駒」や「澪つくし」、「おしん」や「ふたりっこ」や「あぐり」。
「すずらん」「ちゅらさん」「芋たこなんきん」「だんだん」「ゲ
ゲゲの女房」に「てっぱん」。
ドラマ「てっぱん」では、昨年3月11日の震災によって、放送が
一時期中止になり、後からドラマの枠をもうけて、まとめて放送さ
れたけれど、それでも忘れがたいドラマだ。
しかし、いま放送中の「カーネーション」は、私が知る朝ドラの中
では、一番ではないかと思ってしまう。
東北の震災から、すでに一年が経とうとしている今、家族や地域の
絆がまた見直されるようになり、そういう中で、このドラマが訴え
かけるものは、とても大きいと感じてしまうからだ。
家族とぶつかり合っても、叱られても、負けずに逃げずに立ち向
かっていくこのドラマのヒロインは、そこに確かな家族への愛情が
あり、信頼がある。
だから、いつでも正面から向き合い、決して逃げない。
決して、嫌いになることもない。
家族とはそういうもの、とこのドラマから、ひしひしと伝わってく
るかのよう。
きっと小原糸子は、日本人が懸命に生きぬいてきたあの時代の母の
象徴のようなもの。
働いて、働いて、働きまくって、必死に店と家族の生活を守って生
きてきた母の背中を娘たちは見つめ、母から自然と学び育った。
そこには、確かな家族の形があるし、教育もあるのだろう。
世界的に有名なデザイナーのコシノ三姉妹の母、小篠綾子さんの生
涯をモデルにしたこのドラマは、脚本家の渡辺あやさんのオリジナ
ルストーリーだという。
岸和田の呉服商の娘・小原糸子が裁縫の道を選び、洋装店を開き、
女でひとつで3人の娘たちを育て、奮闘する物語だが、ともあれ朝
から元気になれること間違いナシでございます。
「カーネーション」、とにもかくにも素敵なドラマです。


コラムニスト●プロフィール
……………………………………
赤松亜美(あかまつあみ)
北海道在住

連載コラム186 from 台湾

最近、日本のニュースでよく報じられる
加害者が切れて酷い暴行を加えるという事件。

先月16日にも21歳の若者たちが、
無抵抗のネパール人男性に対してよってたかって
暴行を加え殺すという事件が起こった。

あまりにも酷い事件であるが、最近の日本では
さほど珍しくもなく「切れる人」は増えているというのが
常識にもなりつつある。

そんな中、海外で日本人が切れタクシー運転手に
暴行を加え、立ち去ったという事件が発生。

暴行を加えた男性と共にいた女性は芸能人で、
当初、タクシー運転手が悪いと責める会見を開いたが
複数の目撃者により、それがウソだとバレ、
激しいバッシングを浴びている。

原因はシートベルト
この事件は2月2日に台湾の台北市内で発生した。

日台ハーフで台北日本人学校を卒業しているタレントの
MAKIYOが、クラブを経営する沖縄出身の日本人男性と
タクシーに乗り込んだところ、運転手にシートベルトを
しめるよう促され、これを拒否。

台北市では、2月から「タクシー後方座席に座る乗客も
シートベルトをしめなければならい」ということが法律で
定められ、運転手は、しめてくれと言ったのである。

しかし、2人は「しつこい」「嫌だ」と拒否し、
タクシー運転手を引き出し、殴る蹴るの暴行を加え、
意識をなくし道端に横たわったままの運転手を放置したまま
別のタクシーをつかまえ平然とその場を去ったのだ。

台北市にはいたるところに防犯カメラが設置されており
こういう事件が起こると、ニュースで公開されることになる。
2人の姿もばっちり写っており、
タクシーも追跡されるなどされ、あっさりと逮捕された。

MAKIYOはすぐに記者会見を開き、
「運転手はシートベルトと言いながら、私の胸をさわった」
「それで友人が怒ってしまって。友人には悪いことをした」
と弁解し、友人を庇う発言をした。

これに世間が激怒したのだ。

ウソがバレ謝罪に
被害者に謝罪することないMAKIYOの会見と
平然とした態度に台湾中が大激怒し
まず、Facebookで激しいバッシング活動が行われた。

さすがにまずいと思ったMAKIYOはすっぴんで母と共に
意識不明の重体となってしまった運転手が入院する
病院へ見舞いへ行った。

もちろんニュースカメラもその姿を追い、
悲しみに嘆く被害者の妻に謝罪する彼女の姿を報道。

MAKIYOの母親というのが、また何度も離婚をし
現在婚活中といういわくつきの女性であることから
どうしようもない親子だと一層バッシングされるように
なった。

ジワジワと広がる反日
MAKIYOは半分台湾人であるが
男性が日本人であること、MAKIYOは日本人として
台湾のバラエティー番組で活動してきたことから
この事件が起こってから日本人に対する風当たりが
強くなっている。

女性や子供は夜はタクシーに乗らないようにと
在台日本人には伝えられているほどである。

日本に対して親近感を感じ、昨年の大震災の時も
おしみなく助けの手を差し伸べてくれた台湾人。

しかし、ここに来て「やっぱり日本人は冷酷だ」
「弁解ばかりで罪を認めずごまかそうとする。
とんでもない国民だ」
と言われるようになってきている。

海外に出てこのような事件を起こすと
加害者だけでなく、日本人全員が非難の的となる。

切れやすい人はそんなモラルなど、そもそもないのだろうが
もっと強く意識して海外で行動すべきである。


















写真は、今年から一般公開されるようになった台北、士林官邸にある慈雲亭です。





コラムニスト●プロフィール
…………………………………
岩城 えり(いわき えり)
1971年12月東京生
オーストラリアで学生時代を過ごし
アラブ首長国連邦・シンガポールで就職
結婚し帰国したものの夫の転勤のためすぐに渡米
2005年12月より台湾在住 from 台湾

2012年2月1日水曜日

連載コラム303 from 北海道●モナクカバキチ

NHKニュースで、54勝の地方競馬最多勝記録をもつ「モナクカバキ
チ」という馬を見た。
これは、広島県福山市営競馬の話で、「カバキチ」は、13歳のオス。
人間に例えると、50歳をこえる年齢である。
11年前のデビュー以来、200回余りのレースに出場してきた。
ファンがしきりに声援をおくる中、3歳、4歳と若い馬達にまじっ
て、「カバキチ」は、勢いのある走りを見せていた。
競馬の世界で、昔は、若い馬だけが、レースを走ることはごく当た
り前だった。
8歳ぐらいの馬だって、ほとんどいなかったように記憶する。
ゲームの「ダービースタリオン」が、世に一大ブームを巻き起こし
た頃の話である。
生産・馬主・調教も兼ねて、手塩に掛けて育てた馬を、レースで走
らせながら、タイトルの獲得を目指すこのシミュレーションゲーム
は、時には事故で馬が死んでしまうもあり、そんな時は、悲しい音
楽と共に、夕日を背に馬の顔がアップになって、画面に経歴が流れ
始めると、込み上げてくる悲しさに、泣いてしまうこともしばしば
だった。
ともあれ「ダビスタ」は、攻略本なしには、レースには勝ち進めな
い仕組みになっていて、プレイヤーは、とにもかくにも強い馬を育
てようと、馬の研究に余念がなくなる。
血統と血統の相性やインブリード、ニックスや健康面のこと。
最強馬をつくるために、G1レースを総ナメにするために、とゲー
ムにのめり込む。
実は、この「ダビスタ」、こだわりの強いゲームである。
サラブレッドの歴史から、牝馬リストに年間のレーシングスケ
ジュールや、それに騎手にいたるまで、限りなく本物に近い。
それだからか、どうしたって、「ダビスタ」から、実際の競馬に、
興味を抱かざる終えなくなってしまうのだ。
この頃の私は、「ダビスタ」の影響で、日曜日が来る度に、競馬を
よくテレビ観戦していた。
スポーツ新聞をひろげて、あーでもない、こーでもない、と仲間う
ちで言い合いながら、勝ち馬を予想した。
貧乏だから、誰も馬券なんて買えなかったけれど、それでも競馬に
夢中だった。
夢中で、楽しくて、きっと、あの頃の私は、走る馬たちに、夢を見
せられていたのだろう。

広島県福山市営競馬で、出走した「カバキチ」は、3ヶ月半ぶりの
レースだったという。
成績は、5着。
それでも、去年の8月に、体調を崩し、復帰も危ぶまれていたのだ
が、レースでは、見事に元気な姿を見せていた。
近頃では、現役競走馬の年齢も上がっている。
中央競馬では、9歳までしか競走馬として登録はできなかったが、
その規定もはずされ、今では、10歳や11歳の馬が出走している。
競走馬の平均年齢が上がった理由に、馬の質や、栄養、健康面での
管理が、良くなったこともあるのだろうが、昨今の競馬界の不況
も、多少なりとも理由のひとつに否めないと思われる。
規模の小さな馬主が、巨大な資本家や海外の投資家に、喰われてい
くような時代だから、日本の競馬界も、ずいぶんと苦労しているは
ずなのだ。
それでも、小さな地方競馬で、「カバキチ」のような年老いた馬が
頑張る姿には、勇気をもらうようだ。
胸に、何かが、すっとおりてくる。
あきらめないで。
あなたも走り続けて、と云われているような気持ちだった。
「カバキチ」のように、と思います。
もっと、心を強くして頑張りたいものです。


コラムニスト●プロフィール
……………………………………
赤松亜美(あかまつあみ)
北海道在住

連載コラム185 from 台湾

日本はOECD経済協力開発機構に加盟する34国の中で
相対的貧困率、ワースト6位である。

ちなみに1位はメキシコ、続いてイスラエル、チリ、
アメリカ、トルコときて日本となる。

パーセンテージ数にすると16%で、これは6人に1人が
日本で貧困だという計算になるという。

しかし異なる国を同じ物差しで計っても、
正確な結果はでないもの。
そもそもOECDの算定基準は収入だけなのである。

そこで、厚生労働省は1月、急増し記録更新までしている
生活保護受給者たちや、いわゆるワーキングプア問題
に対応するために、貧困の指標を見直しすることを決定した。

基準項目
報道によると、厚生労働省は専門家による検討会を開き、
新しい指標の「失業率」や「医療をどれくらい受けているか」
ということを項目に加えるとのこと。

そして、生活により密着した「食事に困っていないか」
「携帯電話などの必需品が買えるか」などを項目に
入れることを検討するという。

携帯電話が果たして必需品なのかは微妙なところ。
日本には購入電話が沢山あり、固定電話を使用する人も多い。
この上、携帯電話を持つことは必要なのであろうか。

食事に関しても、これまた微妙なところだ。
各家庭における1ヶ月の食費は、それぞれ大きく異なる。

昔は羽振りがよかったのに、不景気になり収入が減ったのに
贅沢な生活をし続けて自己破産し、生活保護を申請したという
ケースを、筆者は知っているからだ。

治らない贅沢病
このケースは友人の義理両親のことである。

自営をしていた彼らはその昔、とても羽振りがよく
冷蔵庫には腐るほど食材が詰め込まれ、
外食も多く、出前も多く、年に一度の休みには海外旅行していた。

しかし不景気になり仕事は減り、震災で受注がストップ。
生活のレベルは下げられないと、それぞれ家庭を持った
子供たちに仕送りをするよう強制的に指示をしたという。

しかし、それでも足りないためサラ金から借金をするようになり
どうにもいかなくなり自己破産するはめに。
年齢も70代に手が届こうとしているのに、年金などバカらしくて
と未加入。

子供たちはこれ以上面倒など見られないと手を切り、
家や車、全てを手放させ、生活保護を申請させたそうだ。

しかし、頻繁に子供たちに電話をかけ「お金が足りない、足りない」と
泣きながら訴えるのだという。
話を聞けば、相変わらず外食を続けており、旅行にも行きたいなどと
言っている。

友人は、「子供たちのため、自分たちの老後のためにも、贅沢をせず
せっせと貯金しているのに、それをワガママな老人の贅沢のために
差し出さねばならない。そんなのは絶対に嫌だ」とうつ病になり、
離婚まで考えるようになった。

正月にも「お年玉をくれ」とせがまれ、一月分のパート代にあたいする
金を渡したと暗い顔をしていた。

彼女は今、夫の仕事の関係で海外に在住しているが、
帰国後には真剣に離婚を考えると言い、その準備を進めている。

貧困を見極める
震災があったとはいえ、これだけ多くの人が生活保護を
受けているというのは、それだけ貧困化が進んだから。

格差は広まる一方で、貧困者が増えていることを
これ以上隠し切れなくなったから、指標を見直すことに
したという風にとれなくもない。

しかし、紹介した例のようなケースは山ほどあると見られる。
そして、その逆で、生活保護を受けるよりも下のレベルの
生活を必死になって続けている者もいる。

日本はまじめでウソつきが少ないとされているが、
今やそんなことはなくなったといってもよいだろう。

本当に困っているのか、貧困なのかを見極めることが
一番大切なのではないだろうか。






















写真は、台北市松山空港に展示されている美しい作品です。



コラムニスト●プロフィール
…………………………………
岩城 えり(いわき えり)
1971年12月東京生
オーストラリアで学生時代を過ごし
アラブ首長国連邦・シンガポールで就職
結婚し帰国したものの夫の転勤のためすぐに渡米
2005年12月より台湾在住 from 台湾