2011年12月16日金曜日

連載コラム300 from 北海道●なくならない放射性物質と原発輸出

除染が行われるようになって、新たな問題が浮上している。
NHKクローズアップ現代で取り上げた「知られざる都市濃縮」では、
その実態に迫っていた。
千葉県・柏市でおきているゴミ処理からおこる放射性物質の濃縮。
生活ゴミと一緒に、集められる落ち葉や草木に付着してるごくわず
かな放射性物質が、焼却場では、高濃度の放射性物質に変化していた。
原因は、ゴミを高温で燃やす過程でおきる放射性物質の濃縮。
ゴミを100分の1に減らせる最新の焼却施設では、焼却灰から高
濃度の放射性物質が検出されている。
ゴミの量が減っても、放射性物質はなくならない。
ゴミのかさが減ったぶん、放射性物質が濃縮されてしまうからだ。
このゴミ処理施設では、こうした焼却灰を埋めることもできず、焼
却場の中で、ただただドラム缶に保管している。
作業員たちは、防護服を身につけて仕事にあたり、施設内の通路、
空きスペースは、行き場のないドラム缶であふれかえり、年内にも
いっぱいになる見通しだという。
保管場所が他に確保できないと、ゴミの収集は止めざるおえない。
柏市の焼却場では、一日におよそ1トンの灰が排出されており、こ
れまでも、国や東京電力に灰の保管場所を確保するよう求めてきた
が、具体的な回答は、いまだないという。
これまで、首都圏の焼却場からでた灰の埋め立ては、地方に運ばれ
ることが多かった。
自前の埋め立て処理場を持たない都市の自治体が、地方を頼ってき
たからだ。
しかし、処理された灰から高濃度の放射性物質が検出されれば、話
は別である。
そんな灰は、どこも引き取れない。
国は、放射性物質を含んだ焼却灰を、これまでの目安の8000ベ
クレルを超えても10万ベクレル以下であれば、セメントで固めて
埋め立てられると各自治体に処理方法を示しているというが、これ
には、専門的な技術や施設がないため、どこの自治体もいまだ処理
には至っていない。

放射性物質はなくならない。
ゴミの焼却を通して、それをはっきりと示されていた。
原発事故によって、もたされたリスクは、あまりにも大きすぎる。

それなのに、国は原発輸出にいまだ頑なだ。
政府がヨルダン、ベトナム、ロシア、韓国と結んだ原子力協定が、
国会でも承認されてしまった。
これによって、年明けにも、日本の原発輸出が可能になる。
野田さんのいう「国際的な原子力安全の向上に質する」とは、なん
なのか?
福島原発事故も、いまだ収束していないのに、平気で安全などと
云っている。
原発事故がもたらしたリスクが、震災復興の足かせになり、除染に
よってあらたな問題がつきつけられているというのに、それらいっ
さいには目をつぶり、とにかく輸出をと方針を変えようとしない。
原発マネーで、もうかるのは、ごく一部のふところだけ。
私たち国民は、その恩恵にさえあずかれない。
恩恵どころか、原発を輸出すれば、輸出先の核廃棄物まで、この日
本は引き受けなくてはならなくなる。
いま、国内の核廃棄物の処理問題でも、手を焼いているというの
に、そんな余裕などどこにあるというのか。
輸出先でも運営の指導問題が残る。
ヨルダンは、日本と同じように、地震多発国だし、原発の海外輸出
には、軍事転用も危惧できない。

日本は、あの震災によって、さまざまな気づきがあったはずである。
原発事故によって、それまでの安全神話も、既成概念も、吹き飛ば
されたはずなのだ。
気づき、畏怖の念を抱いているのは、私たち国民だけで、政府はな
にも変わろうとしない。
原発の輸出は、日本が加害者になることだって、十分ありうる話。
その時、日本は、国際社会に、どう責任を取るつもりなのだろうか。
地球の気象変動も災害も、昔とは大きく変わっている。
地震や災害が、輸出した国で、ぜったいにおこらない保障など、ど
こにもないのだ。
リスクの問題、いっさいを解決できないかぎり、原発輸出は悪、と
私は思う。


コラムニスト●プロフィール
……………………………………
赤松亜美(あかまつあみ)
北海道在住

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