2011年6月15日水曜日

連載コラム288 from北海道●震災から、はや三カ月

義援金の配布が遅れている。
東日本大震災に寄せられた義援金は、いまだ全体の15%しか被災
者には届いていない。
阪神淡路大震災や中越沖地震、または北海道南西沖地震の災害の経
験は、この度の震災にまるで活かされていない。
『義援金配分割合決定委員会』は、厚生労働省の協力のもとに設置
された委員会である。
住宅全壊・全焼・流失・死亡・行方不明者は35万円。
住宅半焼・半壊は18万円。
原発避難指示・屋内退避指示圏域の世帯は35万円を基準としてい
るというが、これでは配布の前に綿密な調査と報告が必要である。
役場そのものも被災し、自治体としての機能を失っている市町村
だってあるというのに、義援金の支給は、被災者の詳しいデーター
(罹災証明書)にもとづいてなどとご丁寧な始末だ。
日本赤十字社は、立派な人道機関だから、ホントのことをいうとあ
まり中傷はしたくない。
だから、震災後しばらく経ってから、「被災者にお金が配られるの
は、夏ごろになるらしい」話を知った時は、ひどく驚いた。
「なんで夏までかかるの? ウソでしょう?」ってな気持ちだった。
それでも、義援金は皆さまの善意によって集められたお金だから、
このことを中傷してしまうと、寄付に躊躇してしまう人達もいるの
ではないかと思い、どうにもこの話題に触れることを私自身はひる
んでしまったのだ。
日赤の事情を理解し、のみこむしかないだろう、そう思った。
だが、東日本大震災から、もう三カ月という月日が経過してしまっ
た今となっては、あまりにも全てにおいて時間が掛かりすぎている。
被災地では、仮設住宅への入居が当たったのにもかかわらず、義援
金も手にできず、入居してしまうと金銭面で不安だからという理由
で、避難所に留まっている人々も多い。
それもそのはず。
仮設住宅へ移れば、光熱費や水道代、食料の面でも、自分たちで全
て負担しなければならないからだ。
被災者にこういう問題がふりかかるのは、すでに解りきっていたこ
とではなかったのか?
なのに、過去の震災経験がいかされず、義援金の配布までとどこ
おっていることに、いらだちを感じてしまう。
平等な分配を心がけるあまりに、本末転倒なのだ。
住宅損傷の調査など、本当に必要だろうか?
三カ月も先が見えない避難所暮らしを強いられている人々には善意
すら届かないなんて惨すぎる。
システムが悪すぎる。
手続きが多すぎるのだ。
被災者には、手始めに一律100万円の配布。
これぐらいのことが出来なければ、スピード感は保てないのではな
かろうか?
政府は、義援金について、いっこくもはやく配ってくれるよう要請
しか出来ないと言っている。
未曾有という言葉を誰もが発しながらも、なにもかもが手続きには
ばまれているのが現状である。
そして、『はばむ』といえば、被災地の復興が縦割りの行政機関に
いちいちはばまれている。
道路交通の諸々は国土交通省の管轄だといい、震災で発生した大量
のがれき処理などの廃棄物の処理は環境省が及んでくるし、また震
災の災害で今あるほとんどの土地が使えなくなり、農地を転用する
しか住民の住宅が建てられない現実があったとしても、それなら
ば、これまでの補助金を返せと迫られている始末だ。
医療法、農地法、廃棄物処理法、道路交通法、その他にもさまざま
な法律が被災地の復興をはばんでいる。
窓口がそれぞれに違うから、被災した自治体、住民側は、それぞれ
の窓口機関に問題になっていることを申請する手続きから始めなけ
ればならない。
いま、この国の政治に求められていることは、被災地からこうした
縦割りの行政を取り払ってあげることではないだろうか。
自分達の足元だけ注視して、政局争いなどやっている場合ではない
はずだ。
この国がいまおかれてる現状にちゃんと目を向けてほしい。
政治家は、政治家としての役割をきっちりこなしてほしいです。
国民は、震災の復興を通して、あなたたち政治家の行動を見ています。
誰が政治家として必要な人か、そうではないか、国民を甘く見ない
でほしい。



コラムニスト●プロフィール
……………………………………
赤松亜美(あかまつあみ)
北海道在住

連載コラム170 from 台湾

6月2日、日本の国会で菅内閣不信任決議案の
採決が行われた。

直前の報道では可決されるようだといわれていたが、
当日まさかのどんでん返し。

採決が行われる数時間前に、民主党代議士会で、
菅首相が、
「大震災に一定のめどがついた段階で、
若い世代の皆さんに色々な責任を引き継いでいただきたい」
と語り、震災復興と福島第一原発事故の一定の目処がついたら
バトンタッチしたいと公言したからである。

この発言をうけて「菅首相は近いうちに辞任する決心をしてる」
とメディアは一斉に報じた。

そして、このことが大きく影響し、
投票総数445票のうち、賛成152票、反対293票で
否決される、という結果となった。

あまりにも無責任
この民主党代議士会には、
1日には不信任に賛成意見だとされた鳩山前首相も出席。

菅首相の発言を重く受け取り、サポートすると発言した。

心情としては、
「不信任案に可決され、辞任に追い込まれ、
無能さを世界中にさらされ、歴史にも刻まれるのは忍びない。
近いうちに、何かをきっかけにして辞任させるから
同じ党なんだから、見届けてやろうじゃないか」
というところなのだろう。

こうして菅内閣不信任決議案は否決された。

海外メディアは「否決されたが、菅内閣はもう終わっている」
そんなニュアンスで伝えた。

日本のマスコミも、不信任決議案の直後から、
退任は6月中、いや夏、秋などとお祭り騒ぎのように報道。
誰もが、菅内閣はもう終わったものだと見ている。

しかし、菅首相は「一定の、一定の」を繰り返すだけで
辞任時期の明言は避け続けている。
挙句の果てに、某大臣は首相は辞任するなんて言ってない
という風に言い出す有様。

あまりにも、あまりにも無責任である。

本来ならば
本来ならば、こんな時期に不信任決議案が出されることは
非常識であり、絶対にあってはならない。

みなが一丸となり首相を支えながら、
被災者救済、震災復興、原発処理を手伝うべきなのだ。

しかし、今の首相、内閣ではそれは出来ていない。

政治主導と言いながら、権力争いで復興事業を投げ出して
きたのである。

世界はそれを見つめてきた。

そして、菅首相が近いうちに辞めると言い出したらしいと知り、
ならばさっさと辞めて、適任能力のある者に
スムーズに引き渡すべきだと思っているのだ。

しかし、菅首相はその座にいつまでも居座ろうとしている。
少なくとも、そうしているように見える。

被災者にことより政治家のこと
不信任決議案が行われる前夜、代議士会で
菅首相は鳩山前首相と話し合いをしたという。

そして2人は「東日本大震災の復興基本法案の成立、
本年度第2次補正予算編成に目処がついた段階で
退陣するということで合意」したのだそうだ。

ご丁寧に確認文書を作ったそうで、
その文書も公開。

そこには、上から順に
一、民主党を壊さない
二、自民党政権に逆戻りさせない
三、震災復興ならびに被災者の救済に責任を持つ
と記してあった。

つっこまれても逃れられるようになのか、
文書には署名はなく、公式なものではないらしいが
こんな事態でも被災者は一番最後なのかと知り、
情けなくなる。

復興はすぐに結果がでるわけではない。
時間がかかることで、すぐに目に見えるものではない。

しかし、いまだに体育館で避難生活を送っている
被災者が多い事実。

2、3ヶ月まえに原発で起こった事が、毎日のように明かされていく
事実。

ここまで政府に舐められているのに、何もしない国民。

このままだと日本は沈没してしまう。

どうしようもない悪い流れ止めるのには、
やはり首相を内閣を変えるのが一番だと思えてならない。




▼写真は、台湾市内を優雅に散歩する台湾によくいる雑種ネコです。



















コラムニスト●プロフィール
…………………………………
岩城 えり(いわき えり)
1971年12月東京生
オーストラリアで学生時代を過ごし
アラブ首長国連邦・シンガポールで就職
結婚し帰国したものの夫の転勤のためすぐに渡米
2005年12月より台湾在住 from 台湾

2011年6月1日水曜日

連載コラム169 from 台湾

東日本大震災発生から2ヵ月半が過ぎた。

この度の震災で、世界中から多くの義援金が集まり
支援も受けている。
しかし、はっきり言ってハイチ大地震と比べ
アメリカのメディアは被災者の大変さを伝えていない。

チャリティー活動もハイチ大地震ほど
活発に行われているわけではない。

カンヌ祭で東日本大震災被災者救援チャリティー
ファッションショーが行われたが、
最近の大きな活動といったら、これくらいである。

あまり活発にチャリティーが行われない理由は、
日本が先進国だということも大きいだろう。

しかし、日本にうんざりしているのが
真の理由なのではないだろうか。

地震・津波より原発
今、世界のメディアは地震・津波の恐ろしさより
原発問題と真実を隠そうとする東電・日本政府の
恐ろしさを問題にし、大きく伝えている。

原発に頼っている国が多いということもあるが
東電が真実を語らないことを問題視しているのだ。

結局大げさでなかった欧米メディア
CNNの看板リポーター、アンダーソン・クーパーは
震災発生直後、リディア行きを取り消し宮城入きを決行。
被災地から被災者の視点に立った素晴らしい報道を
世界に向けて発信した。

しかし、彼はすぐさま東京へと向うことになる。
福島第一原発が爆破し、放射能が漏れていることを
懸念したからである。

その時から世界中が原発は深刻な状況に陥っている
メルトダウンしている可能性が高いと報じるようになり、
アメリカは半径80キロ以外へ批難するよう指示。

欧米の国も東京を出るよう指示したり
色々な勧告をだしていた。

そんな彼らを日本政府・メディアは「おおげさ」だと
こけおろした。

日本政府は「ただちには人体に影響ないレベル」
「メルトダウンは最悪の事態。
そこまでいってないと予測されている」と連呼した。

日本のメディアは「いたずらに脅かすのはよくない」
と、「たいしたことないから、大丈夫」だと伝えた。
「放射能は少し浴びたくらいなら、逆に健康になる」と
言った、とんでもない学者までいた。

ところが、今になって東電は
「メルトダウンしていた」
「地震発生後まもなく空焚きになってた」など
最悪な事態であったと公表。

欧米は大げさでも何でもなかったのである。

異常な状態の日本
メルトダウンどころかメルトスルー状態だという
福島第一原発。

自衛隊ヘリを飛ばせた派手な水かけパフォーマンスや
消防署による放水、戦車も出すと言うなど
見ごたえあることばかり行ってきた日本政府だが、
もう長い間、1時間に何トンも原発に向って放水しているが
さっぱり水がたまらないという事実。

見た目では変化がないため、
視聴率が稼げないと見切りをつけたテレビは、
報道を控えめにするようになり、周辺住民や被災者以外は
普通の暮らしが戻っている。

しかし、海外メディアはこの日本の今を
「異常な状態」だと分析。

日本は、放射線の怖さ、東電の隠蔽体質の酷さ、
日本政府の情けなさを批難報道しないどころか、
「放射線より怖いのは風評被害」
と、放射線を浴びた食べ物を食べようと推進していると。

売る側からしたら「日本政府が大丈夫と言っている。
えらい学者が大丈夫と言ったから、政府もOKを出している」
という気持ちなのだろう。

売らなければ生活が成り立たないどころか、
赤字になる人も多いのが事実。

しかし海外では「それはあまりにも異常。日本は狂っている」
と言われているのだ。

「日本人は皆がそうだから、と言うが、
皆が内部被爆し、皆が死ねばいい、ということなのか」
というのだ。

この異常な状態をとめられるのはやはり政府しかないだろう。
しかし、菅内閣にその力はない。

放射能汚染を食い止めるためにも、少しでも疑いのある
食物は売らず、政府か東電がまとめて買い取り破棄すべきである。

そうでないと汚染は日本中に広まり、
日本は世界から孤立してしまうだろう。



▼写真は、台湾のごく一般的な果物屋に並ぶフルーツです。パパイヤ、グアバなどが旬です。

















コラムニスト●プロフィール
…………………………………
岩城 えり(いわき えり)
1971年12月東京生
オーストラリアで学生時代を過ごし
アラブ首長国連邦・シンガポールで就職
結婚し帰国したものの夫の転勤のためすぐに渡米
2005年12月より台湾在住 from 台湾

連載コラム287 from北海道●情報の非公開に思うこと

先の国会で記憶に新しいのは、5月20日の参議院予算委員会で、
自民党の佐藤正久議員が福島第一原子力発電所事故後の政府対応
を、厳しく批判したことだ。
福島県出身の佐藤議員は、元陸上自衛官。
2004年からの自衛隊イラク派遣では、第一次復興業務支援隊長
を務めている。
イラク派遣時に、イスラム圏のルールに従って、口ひげをたくわえ
た風貌でもお馴染みの人だが、あの当時、サマーワの部族長や住民
らと信頼関係を築いたことでも有名である。
いつだったか、さだまさしさんがコンサートで、この佐藤さんとは
古い友人であると語っていた。
佐藤さんの純朴な人柄に触れたさださんの話が、今思い出しても懐
かしい。

3月23日になって、原子力安全技術センターが、放射性物質の広
がりを予測するシステム『SPEEDI』のデーターを公開した。
『SPEEDI』とは、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシ
ステムのことで、原子力発電所などから大量の放射性物質が放出さ
れたり、そのおそれがある場合、周辺環境における放射性物質の大
気中濃度および被ばく線量など環境への影響を、放出源情報、気象
および地形に基づき予測するシステムのことである。
驚くことに、この『SPEEDI』には、開発費も含め、これまで
に約240億円が注ぎ込まれ、昨年の予算も7億円だったという。
『SPEEDI』のデーターは、3月13日から原子力安全委員会
や経済産業省に情報が送られていたが、国民には公表されなかった。
公表されなかった理由について、政府と東電の原子力対策本部事務
局長を務める首相補佐・細野豪志議員は、「公開によって、社会全
体にパニックが起こることを懸念した」と言ったが、この発言に
は、しんそこ疑問を感じてしまう。
12日に、原発20キロ圏内に避難指示が勧告された人々は、いっ
せいに避難したのだ。
その中で、放射線量の高い地域へと避難した人々は、のべ1万人である。
ただただ山の方へと避難した浪江町、南相馬の住民たちは、原発か
ら北西へと向かった。
そして、15日の福島第一原発二号機の爆発によって、この人々は
避難先で更に高い放射線にさらされている。
後日公開されたデーターでは、原発から北西に向かって飯舘村ま
で、放射線の被害は及んでいるが、原発から33キロ余り離れた飯
舘村長泥の屋外積算放射線量は5月29日までの67日が経った今
も、危険区域だ。

『SPEEDI』の情報を知っていた内閣府の原子力安全委員会も
文部科学省も経済産業省の原子力安全・保安院も、責任の所在は自
分達にはないと、どこかひとごとだ。
ましてや総理官邸の枝野官房長官は、『SPEEDI』の存在を後
日知ったという。
これは、いったいなんなのか?
避難した住民が危険にさらされることを承知で、この機関に携わっ
ていた人々は事務的な判断しかできなかったというのか?
責任は、これらの情報に関わった人々全てにあるのでないか?
この人たちには、その認識すらない。
組織として情報が統一されていないのも、終わっている証拠である。
福島原発の海水注水中断の騒動も、これとまったく同じだった。
このことは、後になって、現場の吉田所長が、自分の判断で注水を
継続していたことがあきらかになったが、このとき、東電は吉田所
長の処分を検討していると公にした。

私たちは、この震災で、心をひとつにしてと思っているが、あまり
にも温度差を感じてしまう。
現場で奮闘する人々は誰もが必死なのに、東電の上層部からはその
誠意すら伝わってこないし、『SPEEDI』の情報が公開されな
かった事実をめぐっても、やはり同じことを感じてしまうからだ。
情報を扱い握っている人達には、国民の安全のために情報を公開す
る義務があったはずだ。
それなのに、危険地域に避難してしまった住民の痛みや不安、怒り
すら想像することは出来なかったのだろうかと思うと途方もない気
持ちになる。
もし本当にそんな感情をみじんも感じていないとすれば、それは人
としてあまりにも機械的すぎるのではないか。
そして、こんな人達ばかりが国民の安全を握る情報の源にいること
も、組織としては終わっているのだろう。

しかし、だ。
それでも、この大規模な震災、原発事故を抱えて、今まさに内閣不
信任案の提出で、国会は盛り上がろうとしている。
確かに管さんには、がっかりするし、スタンドプレイが多いのには
腹立たしい。
ここぞという時の総理としての態度にも問題が多いのも事実である。
だけれども、管さんを総理の椅子から引きずりおろしたところで、
そのかわりは見つかるのだろうか?
人材がまったくいないわけではないが、いまの国会が総理をめぐっ
て解散になったところで、選挙どころではない被災地を抱えては、
国会が空転するのは目に見える話ではないのか?
それに、管直人という人は、そんなにやすやすと総理をやめる人で
はない。
悪い言い方をしてしまえば、それだけ総理の椅子に執着しているからだ。
本人にやめる意志がない限り、総理の入れ替えなんてできないし、
日本の法律ではそれも難しい。
こういう最悪の情況下で、日本のトップに問題があるのは、腹立た
しいことだが、それならばそれで、まわりが補佐してトップのいた
らない部分を補っていくしか道はないのではなかろうか。
さっそくG8でも、管さんのスタンドプレイは目立っていたが、こ
れは民主党の性分なのかもしれない。
鳩山前総理にしろ、管さんにしろ、勝手に派手なパフォーマンスを
して国際公約を掲げてしまう癖は、まるでオオカミ少年のようで、
世界からの信用はますますなくしてしまうのだけれど、目の前の震
災の規模とこれからの長い復興を思うと、やはり取るに足らないこ
とのように思えてしまう。
なにを優先するか、そのことに尽きるのではないだろうか。
トップの入れ替えは、復興の道筋がある程度たってからでも遅くは
ないはずだ。
国難のために、難破船を修繕してでも進むべく、日本の政治家たち
は覚悟と努力をしてほしいと思います。


コラムニスト●プロフィール
……………………………………
赤松亜美(あかまつあみ)
北海道在住