2011年5月1日日曜日

連載コラム167 from 台湾

未曾有の大被害をもたらした東日本大震災から
早くも1ヶ月半が過ぎた。

被災地は復興に向けて少しずつ動き出しているが
逆に震災以降、どんどん酷い状況に追い込まれている
そんな人たちもいる。
福島第一原発の事故により
強制的に避難するよう強いられたり、
生計をたてていた農業、酪農、漁業を止めるよう
指示された人たちである。

出荷を止められた酪農家は、
乳牛を生かすために餌を与え、毎日乳をしぼって
捨てているという。

お金は飛ぶ一方で、労力も半端ないのに
原乳を売ることができないため収入は入ってこない。

そんな人たちが、26日に東京電力へのデモを行った。
東電の本社に入り、直接訴えたが
満足のいく対応や保障に関する答えは
得られなかったそうだ。

うやむや、あいまい
日本政府は福島第一原発事故により
大気や海に流れ出ている放射能に関して
「ただちに健康に被害をおよぼすものではない」と
一貫して発言してきた。

東京電力、保安院、政府の連結は、
今なおスムーズに取れているようには見えないが、
政府の作戦はあながち間違いではなかったと思う。

なぜなら国民はこの政府の言葉を信じ
今では原発事故にさほど強い関心を示さなくなったからだ。

政治的な指示を受けているからか、
東京電力に恩や借りがあるからか、
日本のメディアも原発についてあまり報じなくなってきた。

海外メディア向けの東電や保安院の発表には、
今や誰も来ない。真実を明かさないと分かっているからだ。
日本のメディアも酷い。加害者だ。

その結果、原発周辺に住んでいない人たちにとっては
何事もなかったかのような日常に戻っている。

風評被害の怖さ
福島第一原発事故により福島県・茨城県の人たちの、
農作物、酪農物、魚などが風評被害を受けている。

これを助けようと積極的に購入する活動も広がっている。

しかし放射能というのは目に見えるものではないし、
食べてすぐに被害が出るものではない。

小さい子供がいるなど、食に気をつけている人たちにとって
東電や政府が出す後出し情報はあまりにも酷いものばかりで
到底、今出ている発表を信じる気にはなれない。

千葉県の水道水にしても、
「数日前に出ていたものは大人の基準値も超えていた」と
発表していたくらいなのだ。

彼らからしてみれば、風評被害を受けているという人たちが
本当に被害者なのか分かったものではない。
売ろうとしているものが危害を与えるものであれば
被害者ではなく加害者になるのである。

風評被害の真の怖さはここにあるのだ。

政府は、「ただちに」「すぐには」という表現は一切やめるべきだ。
そして、もっちきっちりと検査をし、ここからここまではダメで、
ここからここまではグレー、ここからは安全と分けるべきである。

苦しいのは日本だけではない
福島第一原発事故から漏れ続けいてる放射能は
日本だけでなく世界中を漂っている。

韓国では「放射能がきた!」と休校する騒ぎとなった
と伝えられた。
これはあまりにも大げさだと韓国政府がたしなめていたが
同時に日本に対しても強く批難している。

世界で一番日本への義援金を集めた台湾にも
福島第一原発事故の被害は及んでいる。

高雄の漁師たちの魚の売れ行きが悪くなっていると
伝えられているのだ。
理由は、放射能に汚染されていると懸念されているから。

台湾では今なお日本の被災者に対する
募金活動が行われているが、放射能問題には敏感に
なっている。

今月の初めには、台湾にも放射能が来たと言われ、
小さな子供たちは外に出ないほうがいいのではと
噂された。

しかし、台湾は漁師たちを含め日本を批難する声は
あがらない。

台湾も地震国であり、いくつもの原発を持つため、
「自然災害によりもたらされたのだ。わざとではない。
仕方ない」と考えているのだ。

耐えているのは日本人だけではない。
被災者、被害者のためにも日本は全ての情報を公開し
真実を明かすべきである。


▼写真は、台北市内にある大安森林公園です。広々とした公園で101も見えます。
















コラムニスト●プロフィール
…………………………………
岩城 えり(いわき えり)
1971年12月東京生
オーストラリアで学生時代を過ごし
アラブ首長国連邦・シンガポールで就職
結婚し帰国したものの夫の転勤のためすぐに渡米
2005年12月より台湾在住 from 台湾

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