2010年12月1日水曜日

連載コラム275 from北海道●翼なき野郎ども

泉谷しげるという人が、なんか好きだ。
なんか気になるし、なんか面白い。
泉谷とくゆうの男臭さがどうにも気になるから、こちらは恐い物見
たさで、どうしても目が離せなくなるのだが、唐突に客に向かって
「ばかやろう、このやろう」と大声で怒鳴っている姿にも愛を感じる。
本人は、とってもシャイなのだろう。
だから、凶暴さに苦笑いしても、なんだか立ち去れない。
いや、去りたくないのだ。
私に言わせれば、泉谷しげるという人とは、そんなオーラをもつ人
である。
もし、ここで、立ち去ってしまったら、後で無性に後悔してしまう
ような、もったいないような、何か自分だけ見逃してしまうよう
な、損をしてしまう気をこちらにおこさせる人だ。
そういうことを、平然と思わせてしまう人。
それは、どんなに怒鳴ろうが暴れようが、威嚇して蹴られそうに
なったとしても、彼の内面に見え隠れする、照れとかあったかさを
ふと見つけてしまうからだろう。
ずっと、生きざまを見ていたくなる。
今度は、何をしでかしてくれるだろうと、どうにもワクワクさせられる。
泉谷しげるは、六十を過ぎても、しっかりと不良少年だ。
いや、不良少年きどりなのだ。
シンは、マジメなのに、だらしなく生きたいとさえ思っている。
本人は酒が飲めないのに、酔っぱらいの姿が誰より似合う。
ぐでんぐでんに酔って、酔いつぶれて、路上で吐いて、そのまま酒
瓶片手に寝てしまう姿が、異様に似合う人だ。
なんか、こういう人が私はとても好きだ。
とてもかわいいなんて、思ってしまうのだ。
本職は、ミュージシャンだけど、歌もやっぱり男臭い。
でも、ずっと聞いていたくなる。
たそがれたり、笑ったり、癒されたり。
そんな気分が長く続くのが、泉谷しげるの歌だ。
かっこいいおっさんだなと思う。
大道なんか、こっちから願い下げだと本気で語っている泉谷さんが
好きだ。
生涯、挑戦して、実験してやると偉そうに啖呵を切る泉谷さんが大
好きなのだろう。
男は、やんちゃな方がかわいくて、かっこいい。
一生、少年でいいのだ。
一生、身勝手でいい。
そういうことを、泉谷しげるという人は完璧に思わせてくれる。
こういうじいちゃんが欲しいと、若い女の子が泉谷しげるに目尻を
下げる姿に、素直に共感できる。
本当に身内だったら、マジで困るだろうなと思いつつ、しっかりと
共感できる。
若いときより、泉谷しげるは、今の方が断然かっこいい。
すぐに熱くなって、すぐに怒鳴りまくって、実は怒鳴ったのが本人
いわく発声練習なんて言う血の気の多さきどりも、泉谷しげるらしい。
らしいなんて、知ったかぶりしてこちらが言おうもんなら、「ばか
やろう」と、また怒鳴られそうだ。
でも、そんなところもひっくるめて、魅力だ。
泉谷しげるの歌は、メロディがいい。
歌詞も、ときどきドキッとさせられる。
あの独特の声質。
昔の歌は、特にそう。
でも、最近の歌も、衰えなんて、まったく感じない。
感じさせない、それが泉谷しげるの歌だ。

ときどき、役者として活躍しているが、その多才ぶりは素晴らしい
限りだ。
しかし、本職はミュージシャンだから、俺にとっての俳優業は、派
遣と一緒なんて高飛車な態度で言うけれど、その役者ぶりは、独特
の色彩を放つ。
それだからか、なんとも味のある役どころが多いのです。

「泉谷しげると翼なき野郎ども」という音楽番組があるが、これ
が、けっこう面白い。
番組は、すでに2008年2月から始まっているが、自分らの音楽
について熱く語るところも見所のひとつである。
番組の中で、ところどころ織り交ぜるライブも素晴らしい。
しばらく、ファンでいたいと思う。
いえいえ、ずっとファンでいたい限りだ。
泉谷しげるの男臭さとむさ苦しさに、これからも注目したいと思います。


コラムニスト●プロフィール
……………………………………
赤松亜美(あかまつあみ)
北海道在住

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