2010年10月15日金曜日

連載コラム272 from北海道●チリ万歳

チリのサンホセ鉱山の落盤事故で、作業員たちが、みな無事に生還
できた。
作業員を乗せたカプセルが、地上に引き上げられた瞬間や、家族、
人々との再会は、現地からの生中継で、世界中を駆けめぐった。
夫や父親の帰還に、涙を流し、がっちりと抱き合う家族の姿に、胸
にあついものが込み上げる。
彼らから伝わり、教えられるものは、人間の生命力や精神の強さだった。
本当に、全員が助かって良かった。
感動的な生還劇に、チリという国が、とても好きになる。
なんて素敵な国だろう。

絶望的な落盤事故に、一筋の光をあたえたのは、事故から18日目
に見つかった作業員からの手紙である。
掘削ドリルの先にはさまれた、地下に閉じこめられた作業員からの
手紙だった。
ひとつの手紙が人々に希望をあたえ、勇気をふるいおこし、奇跡に
繋がった。
世界は、悲しみや苦悩にあふれているけれど、人の心を揺り動かす
ものは、やっぱり愛なのだと思った。

作業に掛かった費用うんぬんや、ある作業員の愛人と奥さんのバト
ルうんぬん。
いいではないか・・・。
彼らの陽気な笑顔をみよ。
そんな、余計な情報は、まったく無用です。
それにしても、救出作業の手際の良さと速さには、びっくりだ。
チリは、日本と同じく地震が多いんですね。
救出作業中も、地震に見舞われたらしいけど、みんな無事に生還で
きて、良かったです。
救出作業に最後まで立ち会い、作業員ひとりひとりを握手と抱擁で
出迎えた、ピニェラ大統領の笑顔が、とても素敵だった。
いいなぁ、日本も、こういうトップが欲しいんだけどなぁって、気
持ちになる。
そう言えば、「たかじんのそこまで言って委員会」で、おちゃらけ
て言ってました。
日本の政治家は、ぜんぜん頼りないから、海外から良き人材を招こ
うって。
賛成とか反対っていうより、その発想が凄いなぁ。

国会を、時々見てます。
管総理と、仙石官房長官の態度に落差ありすぎでしょと、思う。
尖閣諸島問題で、尖閣諸島にいる、希少モグラの現地調査と保護う
んぬんなるやりとりに、なんで?という気持ちになった。
しょうもない質疑応答に、うなだれる。
尖閣周辺は、今や日本の漁師も、なかなか近づけない始末。
はっきりキッパリと、島は日本の固有領土ですって示すために、尖
閣のモグラ調査だと?
やる気があるとかないではなく、底の浅いつまらない考えですばい。
どうして、日本はいつまでも、こうなのでしょうか・・・。

昨年の暮れに、録画したNHKドラマ「坂の上の雲」を、今頃まと
めて見た。
原作は、司馬遼太郎の長編小説だ。
激動の明治時代の日本と世界を舞台に、松山出身の三人の主人公の
生き様に、心が震える思いだった。
堕落した今の日本の政界に、彼らは何を思うだろう。
日本人は、彼らがなしとげた奇跡の貯金を、見事に使い果たした。
国会より、自分は、この原作を読むべきなのだろう。

チリの奇跡の生還劇に、私も万歳です。
そんで、しばし、読書にひたります。


コラムニスト●プロフィール
……………………………………
赤松亜美(あかまつあみ)
北海道在住

連載コラム154 from 台湾

9月7日に沖縄・尖閣諸島沖で起きた
中国漁船衝突事件。

この事件は、中国漁船が尖閣諸島付近で
操業していたところをパトロール中の日本の
海上保安庁の巡視船に発見され、
停船勧告を無視し逃走。

逃走のさい、巡視船2隻に衝突を繰り返し
破損させたとして公務執行妨害で逮捕
したものである。

中国は「尖閣諸島は中国のもの。
違法行為などしていない」と主張し、
船長逮捕は大問題だと日本政府に警告。

日本大使を真夜中に呼びつけたりしたが、
日本が「手順に従い・・・」と船長を解放をしないため、
中国で仕事をしていたフジタの社員を、
「スパイ行為した」と逮捕した。

お互い人質をとり駆け引きをする形になり、
日本はあっさりと降参。船長を解放した。

粘りのない日本
海外のメディアは、
「日本は外交が何か分かっていない」
「本当に粘りがない」と批判気味でこれを報道。

あまりにも思い通りに事が進んだ中国だが、
「衝突のビデオ」を公開されるとマズイこと、
逮捕した人質が、大金に化けることを確信。

粘りのない日本政府のことだから、
私たち国民が知らないところで大金が中国へと
流れたのだろう。

一部を公開する方向で話が進んでいた
ビデオも結局は公開されないことになったようだ。

中国のやり方が汚いと海外メディアで報じられ
イメージを悪くしたとも言われているが、
そんなの中国は気にもしていないだろう。

それどころか、日本政府が「衝突ビデオ」を
公開しないのは日本側に落ち度があるから、
攻撃をしかけたのは日本側だと主張するだろう。

遠慮、配慮、という言葉は身内でもない者に対して
与えるわけがないではないか。

日本政府は一体誰のための政府なのか。

恐ろしいメディアコントロール
外国のメディアまでが「日本は何をしているのか」と
疑問を投げかけている、
理解に苦しむ日本政府の対応。

外国だったらデモが起こるだろうに、と思っていたら
日本でも2000人を越えるデモが行われた。

何をされてもデモしない日本人が、
日本の旗を持ち「規則正しく」デモ行進したと、
CNNなどがいち早く報じた。

日本のメディアはどのように報じるのかなと
ロケーションフリーを使用し、
日本のテレビを見てみたところ、
どの局もデモのことを報じていなかった。

大手新聞の公式サイトも全く触れていない。
我が家では最も偏らず報道しているとして、
日本経済新聞をとっているが、
その新聞にも掲載されていなかった。

政府が関連していることは明らか、
そしてみんなしてそれに従った日本のメディアに
心底がっかりしたと同時に背筋が寒くなった。

ひょっとして選挙の結果だってコントロールされており、
日本国民の知らないところで、
日本は終わりに一歩、一歩近づいているのかもしれない。

こんな国、もう見捨てるしかないのかもしれない。


▼写真は、台北淡水河で見つけた美しいシラサギです。

















コラムニスト●プロフィール
…………………………………
岩城 えり(いわき えり)
1971年12月東京生
オーストラリアで学生時代を過ごし
アラブ首長国連邦・シンガポールで就職
結婚し帰国したものの夫の転勤のためすぐに渡米
2005年12月より台湾在住

2010年10月1日金曜日

連載コラム153 from 台湾

9月7日に沖縄・尖閣諸島沖で起きた
中国漁船衝突事件。

この事件は、中国漁船が尖閣諸島付近で
操業していたところをパトロール中の日本の
海上保安庁の巡視船に発見され、
停船勧告を無視し逃走。

逃走のさい、巡視船2隻に衝突を繰り返し
破損させたとして公務執行妨害で逮捕
したものである。

これまでにも中国だけでなく台湾の魚船が
尖閣諸島沖に侵入しているが、
ここまで大事になることはなかった。

ここまで悪質な例はなかったこともあるのだが。

台湾のメディアの反応
この事件をうけて台湾メディアは早い段階から
特集を組み報じてきた。

時に日本大使を休日の真夜中に呼び出し
抗議をするという点は、
華僑にとって「この上なく侮辱的」なことになるため
繰り返し伝えられてきた。

日本でも「わざわざ夜中に呼び出したのか」と
報じられていたが、なにぶん残業好きな日本人。
それほど「侮辱」とは受け止めなかったように感じる。

しかし、台湾は「休日の真夜中に呼び出した」ことで
中国がこれからかなり強硬な態度に出ると
予測していたのだ。

驚くシンガポールメディア
比較的冷静な目で中国の動向を伝える
シンガポールメディアは、
今回の事件を「驚いた」と表現。

何に驚いたのかというと、
この1年でここまで中国と日本の間が
悪化したということに、である。

確かに、昨年まだ自民党が政権を握っていたとき、
麻生太郎元首相が訪中し、とても友好的なムードが
全世界に向けて報じられてきた。
麻生元首相のあの笑顔の効果もあり
日本と中国は、これからよきパートナーとなると言われ
事実、その後急速に間が縮まったかのように
見受けられた。

シンガポールは南シナ海の領域問題を抱えており
今回の日本と中国の件は決して人事ではない。

良いケーススタディとして注目しているのである。

中国人と真の友人関係を結ぶ難しさ
以前、シンガポールの友人がこう話してくれた。
彼の両親は中国から来た移民であり、
数年に1回、中国の故郷に山ほどの土産を持ち
訪れるのだという。

土産とは最新の電子機器など。
それを故郷の人々、親戚でない人にも配るのだという。

そして、驚いたことに、
彼らはそれを当然のように受け取るのだという。

インドでもお金持ちが貧しい者へ色々恵み、
それを彼らは当然のように受け取るが、
それは「それが良いこと」という宗教的な教えがあるから。

中国人はプライドが高い気質があるため
与えてあげる、受け取ってあげる、と、
両者が当然のようにふるまうのだという。

与えるもののプライドをどこまでくすぐり吸い上げるかも
ポイントらしく、シンガポール人の友人は
両親が彼らに使われていると憤慨していた。

同じ華僑であっても、こうなのである。
<次回も、中国人気質の難しさについて執筆していきます>


▼写真は、台北最古の関渡宮にある美しい石の狛犬です。
















コラムニスト●プロフィール
…………………………………
岩城 えり(いわき えり)
1971年12月東京生
オーストラリアで学生時代を過ごし
アラブ首長国連邦・シンガポールで就職
結婚し帰国したものの夫の転勤のためすぐに渡米
2005年12月より台湾在住

連載コラム271 from北海道●尖閣諸島沖の衝突事件に思うこと

尖閣諸島沖で、衝突した中国漁船と日本の海上保安庁巡視船の
ニュースが連日続いている。
衆院予算委員会が開かれ、臨時国会はいよいよ10月1日からだ。
すでに、予算委員会でも、尖閣諸島沖での衝突事件について、答弁
がされた。
中国人船長を逮捕したことで、今回の中国の報復は素早かった。
レアアースの輸出禁止から、「フジタ」の社員の取り調べと拘束
に、日本政府はきっと頭を抱えたことだろう。
9月30日現在、監禁されていた「フジタ」の社員は、4人のうち
3人が釈放されたと伝わる。
逮捕した船長を、釈放したことや、中国からの賠償の要求に、日本
側が耳を塞いだ姿勢が不幸中の幸いだったのか、真実は解らない
が、中国は、それまでの威圧的な態度をゆるめ出した。
しかし、この度の騒動の行方は、たまたまである。
これで、一件落着というわけではない。
日本が、心から中国という国を理解して行動をおこしたのかという
と、おおいに疑問が残るし、これでこの騒動は、ひとまず沈静した
としても、実際は、まだ「フジタ」の社員一名は、拘束され続けて
いるわけだし、レアアースの輸出に関しても、100%解決したわ
けではない。
むしろ、中国との経済的な交友関係には、このような事態がおこり
うるということを、日本は肝に銘じなければならない。

中国は、なかなか難しい国だ。
しかし、彼らは、そのしたたかさを武器に、国をここまで大きく発
展させ、成長させてきた。
それは、日本人が持つ気質とは、まったく違うが、だが、外の国と
の駆け引きは、日本の流儀が必ずしも通用しないことを、日本人は
そろそろ気づくべきだ。
日本の忠誠や流儀に、好感を抱いてくれる国もあるだろうが、外交
の場では、たいがいそんなものは通用しないと、むしろ、日本人は
腹をくくったほうがいい。

この衝突事件後、ある時期からいっせいに、日本のメディアが流し
た情報は、中国国内で、反日感情を剥き出しにした民衆の姿だった
が、この繰り返される映像に、非常に違和感を覚えたのも事実だ。
この映像は、どのように入手したのだろうと、まずそのことを思った。
尖閣諸島沖での衝突事件は、策略だったとも、突発事故だったと
も、言い難い。
漁船がスパイも兼ねていたという話もあるが、それも証拠がない限
り、想像のはんちゅうにすぎない。
しかし、その真実がなんであったにしろ、日本側は、感情的に逮捕
し、その場しのぎで対処したに過ぎない。
管総理は、予算委員会の答弁で、この件に関して、「政治介入な
し」と言ったが、誰の目から見ても、あの船長の釈放は、政治的な
判断だ。
しかし、そうであっても、那覇地検の判断という押し付け姿勢を、
政府はつらぬくだろう。

沖縄の人々には、普天間の問題に続き、今回に限らず、あの領海で
漁業をされている皆さんには、心苦しくなった。
どうして、沖縄ばかりが、このような思いをさせられるのだろうか。
私が心配するのは、今回の衝突事件は、まだ序の口だということ。
東シナ海の大陸棚には、大量の海底油田が眠っている。
そのことが、おおやけになってから、この海域は、自分達のもので
あると主張する国たちが出てきた。
それまで、ちっぽけな諸島を取り囲むこの海域に、なんの感心も示
さなかった国たちが、公然とてのひらをかえしてきたことにも、日
本は、事を荒立てずに、穏やかに対処し、東シナ海の油田は、日中
の共同開発という、極めて平和で友好的な合意のもとに、取り組む
ことにしたのだ。
だが、中国は、今や世界でも有数の経済大国である。
まだまだ成長過程にある中国にとって、資源の確保はとうぜんの必
要枠で、共同開発に乗り出した時点から、日本が当たり前に主張す
る領土、領海線など、ないに等しい。
日本側が考える配慮が、必ずしも他国の理解が得られ、暗黙の了解
などないことを、日本政府は自覚するべきである。

日本人は、世界でもまれにみる特殊な民族だ。
しかし、外交という駆け引きでは、日本人としての気質があだにな
ることもある。
穏やかで、一歩引く姿勢は、謙虚で好ましいが、優柔不断な国だと
見られるのも事実だ。
外交は、友好的な関係を結ぶことが全てではない。
世界は、さまざまな国であふれている。
それらの国々と、腹の探りあいをしながら、したたかに、渡り合う
ことこそ、外交と呼ぶのだ。

総理の座におさまって、嬉しさが隠しきれない管総理の姿をテレビ
で目にするたびに、私は憂鬱になる。
この国の将来に、漠然とした危機感を覚えてしまうからだ。
それは、民主党政権に対する私の不安でもある。
これは、長きに渡った自民党政権のひずみでもあるが、民主党は、
政治に対する姿勢も、ビジョンも、戦略も、まるで素人だ。
そして、極めつけに、「与党になって、まだ一年たらず。我々の精
一杯の努力を、温かい目で見守ってほしい」と与党の方々は、未だ
に口にするけれど、誤解してもらっては困るのだ。
政治に、失敗などあってはならないということを。
政治に携わることも、総理大臣におさまることも、本当は栄光でも
なんでもない。
あるのは、この国を守る苦悩だけである。
そういう命がけの政治をする覚悟が、今の政府に、与党の皆さんに
はあるのかと、私はお聞きしたい。
それは、クリーンであることより、よっぽど重要である。

中国という国は、日本より、ずっとしたたかで、国力を更に広げ、
推し進めようと、そのためにはあらゆる手段もいとわない。
地方都市の再開発で、家や農地を強制徴用され、取り壊された人々
が、抗議の焼身自殺を次々とし、また、乳児用の粉ミルクを飲んだ
赤ん坊の胸が膨らんだ事件は、現在の中国国民のもっとも関心の及
ぶところだというのに、今回の尖閣諸島沖の衝突事件を逆手にとっ
て、当局への不満をかわすために、反日感情をあおって、国民の士
気を高めようとするところは、なかなかたくみである。
尖閣諸島沖の衝突事件も、じっさい中国国民がどれほど知っている
のか解ったものではない。
日本に伝わる映像、報道は、全て中国当局の管理下にあり、意図す
るものだということを、私たち日本人は、まず理解しなければならない。
今回の事件で、更に愕然としたのは、日本のマスコミが押し掛け
て、一般中国人に向けて、カメラやマイクを向けて、この事件をど
う思うかなどと、手当たり次第に質問したことだ。
中国内だけではあきたらず、日本を旅行する中国人や、沖縄にまで
おしかけて、沖縄在住の中国人に、この質問を繰り返した。
これは、マスコミの暴力に他ならない。
日本のマスコミは、いつもこういう幼稚な行動にでる。
彼らと、漁船の衝突事件とは、なんの関係もないのに、同じ中国人
というだけで、カメラやマイクをむけて、自分たちの正義を振りか
ざそうとする。
私は、同じ日本人として、とても恥ずかしくなった。
ましてや、沖縄在住の中国人なら、もっと複雑な感情を抱いている
のは、解りきったことではないか。
グーグルの中国内の撤退からもはっきりと解るように、中国政府へ
の不満や不平を堂々と国民が主張できる国家体勢など、現段階の中
国では、まだありえない。
ネットの書き込みは、常時、当局にチェックされている。
望ましくない書き込みは、そっこく削除されてしまうのが、いまの
中国の現状だが、それでも、このネットがもたらす影響が、当局へ
の不満を増殖させていることから、中国政府が手を焼いているの
も、また現状なのだ。

明日からの臨時国会でも、きっと、この後手後手に回った政府の対
応に、国会では追及責任の手を緩めないだろう。
だが、出来ることなら、責任問題を後回しにしてでも、今後の対策
など、建設的な話し合いをしてほしいものだ。

沖縄は、常に危険にさらされている。
尖閣諸島の周囲だけではおさまらず、そのうちに、沖縄も自分達の
領土だと主張してくることだって、先々はありうる話で、そのよう
な事態が及んだ時に、どのようにかわし、どのように対処するの
か、そのためのシミュレーションは必要枠であるけれど、日本の狭
い領土を守りきるためには、やっぱり見せるための軍力が、そろそ
ろ必要なのではないかと、感じた。
このままだと、この国の将来は、とても危うい。
「フジタ」の残りの社員が、一日もはやく釈放されることを、いま
は願うばかりである。

コラムニスト●プロフィール
……………………………………
赤松亜美(あかまつあみ)
北海道在住