2011年11月15日火曜日

連載コラム298from北海道●TPP

とりあえずAPEC(アジア太平洋経済協力会議)が閉幕したが、TPP
については、日本でも参加か否か、意見が二分し、未だよく解らな
い部分もある。
国力のため、経済成長のためと、世界に乗り遅れてはならない言い
分も解らなくはないが、アメリカ主導のシステムに乗っかること
で、日本はメリットよりデメリットを抱えてしまうことの方が実は
多いのではなかろうかと懸念はやっぱりぬぐえない。
輸出産業や株式市場には、参加がプラスであっても、食の安全面か
ら考えれば、どうにも危うさが隠せないし、何より不安に思うの
は、日本の医療制度の崩壊だろう。
日本では、国民皆保険が存在するため、すべての国民が等しく公的
保険による医療を受けることができるが、これは日本独自のシステ
ムであるから、この市場を開放してしまうと、海外の営利目的の企
業型医療機関が日本にも参入してくる。
自由化の危ういところは、そうした参入によって、今までごく当た
り前に、誰もが平等に医療を受けられていたことが、平等ではなく
なり、お金のある人しか治療を受けられず、医療格差を招いてしま
うことだ。
そもそも、TPPはなんのためのTPPかと単純に考えて
も、経済的に低迷しているアメリカが自国の商品を(雇用も含め
て)積極的に外の国に売りだし、買ってもらうがための画策ではな
いのか。
画策なんて言ってしまうと、いかにも意味深だが、ならば、日本も
アメリカの戦略に乗っかり、日本の産業も世界に進出して、攻めの
姿勢でといっても、日本の医療が積極的に海外の現場に打って出る
など、どうにも想像しにくい話である。
これまでも、自由化によって、日本のさくらんぼ農家が競争にさら
され、結果的にはプラスに転じた話を国会やメディアを通して、な
んども耳にしてきたが、日本の第一次産業が、すべて佐藤錦をブラ
ンド化させたさくらんぼ農家に当てはまるわけではないように思う
し、非常に不安に思うのは、日本のこれまでの高い規制が守られな
くなってしまうことにあるだろう。
遺伝子組み換え食品や輸入牛肉の規制緩和だけを上げても、この自
由化が現実となれば、私たち消費者の食の安全は個々にゆだねられ
ることになってしまうし、トータル的に外食産業などは、どう考え
たって、今より更に安値で出回る輸入品に傾いていくのは目に見え
る話なのだ。

加速するグローバルの波を押しとどめられず、日本もいつかはこの
波に巻き込まていくのだとしても、ただ押し流されるだけではな
く、日本にはもう少し時間が必要だ。
ホノルルでのAPEC(アジア太平洋経済協力会議)では、日本
が、TPP交渉参加に向けて、関係国と協議に入ることを表明し
た野田首相だったが、懸念材料を多く抱える日本にとっては、手の
内をみせず、あいまいな表現で濁してくれたことを私はそれなりに
評価したい。
TPP首脳会議に日本が出席できなかったことを悲観するメディアの声
もあるけれど、それはそれでアメリカ側の計算なのだろうと思うからだ。
野田首相には、帰国後もすぐにも国会が待ち受けている。
まずは今後の動向を見守りたい。



コラムニスト●プロフィール
……………………………………
赤松亜美(あかまつあみ)
北海道在住

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