2010年11月15日月曜日

連載コラム274 from北海道●今の政府に思うこと

尖閣映像は、機密事項に値するか、いなかで、論議を呼んでいる。
初め、映像は石垣海上保安部で「厳重に保管している」とのこと
だったが、現職の海上保安官が、みずから名乗り出て、警察に出頭
してからは、映像は、海上保安大学を経由して、保安官が常務して
いた巡視船でもみることができたことが明らかになった。
YouTubeの尖閣映像では、事件のようすがはっきりと伝わってくる。
中国漁船が、巡視船にぶつかってきたのは、明らかだった。
船の衝突は、危険きわまりない。
命を落とすことだってある。
だからこそ、彼らが、あの映像を自分たちで、対策資料として共有
したとしても、なんら不思議ではないと思った。
むしろ、そうするのが、普通だろう。
尖閣事件は、映像の流出より、もっとその前の対応にこそ問題があ
るわけで、先の国会でも既に事件への対応が問題視されているが、
政府側は同じような答弁を繰り返してばかりだ。
YouTubeの映像を見て、なぜこれを隠ぺいしようとしたのか、はなは
だ疑問に思う。
もし、中国との外交カードに利用するとしたら、あの事件直後、中
国人船長を逮捕した時点で、あの映像を中国側に突きつけて、相手
の反応をうかがうことだって出来たはずだが、それは出来かねぬと
言うならば、逮捕した後に、即刻強制送還という方法しかない。
だが、ぶつかってきた相手を、そくざに帰すなど、今回のような悪
質な事件では、あまりしてほしくはない。
いずれにしても、対応を明確にせぬまま、「フジタ」の社員が中国
で拘束され、レアアースがストップする事態になってから、船長を
あわてて釈放したのだから、交渉も駆け引きもあったものではない。
では、なんのために、あの映像を隠したのか?
私が、もっとも愕然としたのは、管総理が尖閣の映像を見たのが、
ずっと後になってからだと言うこと。
国会の質疑応答の中で、見たかという質問に、菅さんは、平然と
「見ていない」と答えたのだ。
信じられないと思った。
この人の中では、尖閣事件など、それほど重要ではないのだろう。
だからこそ、この案件は、仙谷さんや外務大臣らに任せればいいと
でも思ったのかもしれない。
事件をなめた結果が、今回の映像の流出に繋がったのだ。
海上保安官は、日夜、命がけで働いている。
事実を闇に葬られたまま、また同じような危険と遭遇するのかと思
うと、憤りや葛藤を抱えて当然である。
尖閣事件の映像が、国家機密であると主張するならば、あの映像を
政府は厳重に管理する必要があったのではなかろうか?
そういうやりとりが、石垣海上保安部と政府の間で、なされなかっ
たことも、想像できる話である。
現場にだけ責任を押し付ける姿勢は、政府として見苦しいだけだ。

ソウルで行われたG20サミットに続き、横浜で開催された
APEC首脳会議でも、日本の影はとても薄い。
菅さんが、首脳会議に向けてギリギリまで勉強していた姿勢は、脇
に抱えたファイルからもうかがいしれるが、果たして日本は会議に
向けての戦略があったのかどうかも、あやしい限りだ。
あるのは、TPPへの参加を希望しているという姿勢だけ。
それも、中身については、国会でも詰めた話し合いなどまだされて
いないから、いたって不健全だ。
私は、TPPへの参加も意義はないけれど、この参加は戦略を
もってのぞまなければ、たちどころにこの国の第一次産業が危険に
さらされる不安もぬぐえなくはない。
TPPに参加することで、海外の輸入品を我々日本人は、もっと安い価
格で買うことができるけれど、もともと国土が狭い日本である。
日本の農家さんが作った作物は、必然的に輸出にまわされ、私たち
の口に入ることも少なくなっていくことを想像すると、この自由貿
易は、いったい誰のためのものだろうなんて、少し悩ましくなる
が、せめて最低限の保証くらいは、国が農家にすべきだ。
その保証も、以前のように公共事業などに流れたりしない、しっか
りとしたルートで保証するべきだし、日本の農家の存続や、後継者
の確保に繋がるような手をうってからでも、この参加は遅くないの
ではなかろうか。
なにか、政府の焦りのようなものが、漠然と感じられる。
世界の流れに出遅れることだけは、どうしてもさけたいと、そんな
焦りばかりが伝わってくるのだ。
オバマさんは、ちゃっかりとアメリカを売り込む作戦で、腹案を
持って、この会議に臨んだという。
できることならば、日本にも、しっかりしてほしい、そんな気持ちです。
日本の外交がしたたかで、強かった遠い時代が、少し懐かしくなります。


コラムニスト●プロフィール
……………………………………
赤松亜美(あかまつあみ)
北海道在住

0 件のコメント:

コメントを投稿